医療崩壊 医学の進歩が生んだ怪物「多剤耐性菌」 帝京大学病院院内感染の「犯人捜し」は更なる医療崩壊を招く (その4)厚労省と報道の魔女狩りが都内の「入院制限」「救急受け入れ制限」を巻き起こす 帝京大学病院が新規患者受け入れ自粛開始 個室管理徹底といえば、勝手に病院のベッドが増えると毎日新聞石川隆宣・田村彰子記者と信じているらしい
多剤耐性菌による院内感染の集団発生が明らかになった帝京大学病院は、昨日、記者会見を開き、感染した患者さんの数を集計間違いで少なく発表していたとして訂正、謝罪の上、
昨日からすべての新規患者の受け入れを自粛
している。朝日より。
帝京大病院の多剤耐性菌感染者、実は7人多い53人2010年9月8日11時43分
帝京大病院(東京都板橋区)は8日、大半の抗生剤が効かない多剤耐性の細菌アシネトバクターへの感染者が、これまで発表していた46人ではなく53人だったことを明らかにした。追加された7人のうち4人は死亡していたが、感染との因果関係はまだわかっていない。
帝京大病院では、感染者の増加を受け、原則としてすべての救急車の受け入れと、すべての新規の入院患者の受け入れの自粛を同日から始めた。入院中の患者全員についても感染していないか細菌の有無を検査する。1週間をめどに結論を出したいという。
カルテを再確認したところ感染者の集計漏れが見つかり、昨年1月にさかのぼって調べ直したところ、新たな感染者が合計7人見つかった。
これまで因果関係が否定できない死者は9人だった。新たにわかった死亡者4人は62~81歳の男女。感染との因果関係は不明。
今後、全入院患者の細菌検査をする。重症患者についてはすでに検査を実施しており、今後の検査対象は約800人。新たな検査によりさらに感染者が増える可能性がある。
病院は、緊急に診なければならない場合には救急車や入院患者を受け入れるとしているものの、原則として救急車や新規入院患者の受け入れの自粛を始めたことにより、地域の医療への影響が懸念される。病院のベッド数は1154床にのぼる。
同病院は救急医療に力を入れてきた。命にかかわるような最も重症な患者の治療を担うため「最後のとりで」ともいわれる3次救急の指定も受けている。重症の救急患者を診る救命救急センターに加え、中等度から軽症の患者も受け入れてきた。救命救急センターでは年1200人の重症患者、中等度から軽症の患者は年のべ9千台の救急車による搬送を受け入れてきた。
新病棟に移った昨年5月からは、軽症者を含めて救急患者を一元的に受け入れるER(救急室)を開設した。
同病院では今年6月から8月にかけ、別の多剤耐性の細菌、緑膿菌(りょくのうきん)の感染者も4人出て、うち1人が死亡している。
都や帝京大病院によると、都健康長寿医療センターで亡くなった患者は今年2月23日に帝京大病院から転院した。
都は、この患者から、同医療センターに転院してきた初日の検査で多剤耐性アシネトバクターが検出されていることから、帝京大病院に入院中に感染した可能性が高いとみている。
(以下略)
というわけで、日大板橋病院などは戦々恐々としている。
同じく朝日より。
救急受け入れ、身構える周辺病院 帝京大院内感染2010年9月8日17時41分
地域の救急医療の最後のとりでとされる3次救急の指定を受けている帝京大学病院(東京都板橋区)が8日、救急患者の受け入れをしないと発表した。命にかかわる重症患者を診る態勢が手薄になることに、周辺の病院でも動揺が広がった。
帝京大学病院には、1日に重症者を含めて15~20人ほどが救急車で運ばれてくる。救急搬送を受け持つ東京消防庁の担当者は「近い病院に分散して受け入れてもらうしかない」と言う。
同じく板橋区にあって3次救急指定を受けている日本大学板橋病院の澤充院長は「困った。帝京大病院と対になって地域の高度な医療を担ってきた。帝京が重症者を受けるからこそ、うちは都の要請でこども救命センターなどを引き受けることができる。手いっぱいなので、周囲の病院に助けてもらわないと」と話す。
3次救急以外の区内の救急病院にも影響が予想される。都保健医療公社豊島病院は「うちへの救急搬送は増えるだろう。できる範囲で受け入れていくしかないが、限界がある」。都健康長寿医療センターは「どれくらい増えるか予測がつかない。本来3次救急が受ける重症患者の行き先選びに困るのでは」と話した。
(以下略)
予想されていることとはいえ、
1154床の帝京大学病院が重症者の救急を受け入れ自粛
となると、いまでも一杯一杯の東京都の救急搬送体制に綻びが出る。
昨日は台風の影響で大雨だったが、気温は下がった。こうした救急が手薄な体制になった初日が猛暑日でなかったことは不幸中の幸いだったと言えるかも知れない。ただ、これからも
週末にかけて猛暑日が再び続く
という天気予報が出ている。そうなると、
夕方から早朝にかけてや土日の、そうでなくても手薄な時間帯の救急搬送
という
救急医療体制のアキレス腱が直撃される恐れ
がある。当然
入院制限
は起きるだろう。
ところで、
院内感染の場合、全例個室管理
となると
個室数は限られている
から、これも
入院制限
の要因となる。ただでさえ、昨今の医療費削減で、ベッド数は減っている。そこへ
個室管理の患者さんが増える
ことになると、
重症者で、個室管理が必要な患者さんのベッドが減る
わけだ。
急にベッド数が増えるわけでも、どこかかから涌いて出でてくるわけでもない
のが実情だからね。
でも
ベッドはいつでも自由自在に増やすことができる
と考えているのが
毎日新聞の石川隆宣・田村彰子両記者
である。
剤耐性菌:感染者を相部屋で治療 板橋の病院多剤耐性菌アシネトバクターの入院患者3人への感染が発覚した地方独立行政法人・東京都健康長寿医療センター(板橋区)は8日、院内の情報共有ミスから、うち1人に感染拡大を防ぐ措置をとらないまま、相部屋で治療を続けていたと発表した。感染者と相部屋だったのに未検査のまま転・退院した患者もおり、井藤英喜センター長は「深く反省している」と謝罪した。
同センターでは、2月に帝京大病院から転院してきた76歳の男性の感染が判明し、6月に死亡。7月に86歳の女性の感染が判明したが、院内感染の恐れは低いという。だが、7月15~22日に女性と集中治療室でベッドが隣だった82歳の男性も感染し、女性から感染した疑いが濃厚という。
3人目からは8月9日に菌を検出。検査担当者や主治医は感染制御の担当医に伝えず、対策をしないまま9月6日まで大部屋で治療を続けた。2~3人目の感染者と集中治療室や病室が一緒だった患者は54人に上る。うち22人は検査で陰性だったが、32人は未検査のまま転・退院。2人は転院先が分かったが、30人は調査中だ。
同センターが3人目を把握したのは今月7日。6日に別の病院に転院し、転院先が診断書類で菌検出に気づいたためだった。井藤センター長は「認識が甘い医師が多かったかもしれない」と述べた。
一方、同センターでは昨年5月以降、多剤耐性緑膿(りょくのう)菌に20人が感染し、10人が死亡していた。うち18人(死者9人)は院内感染が疑われ、昨年6月~今年6月に死亡した72~86歳の男女4人は、感染との因果関係が否定できないという。「発症が断続的だった」として、都などに報告していなかった。【石川隆宣、田村彰子】
この記事では、
個室管理に移行することで、追い出される患者さんが出る
ってことが、ガン無視されている。
毎日新聞の石川隆宣・田村彰子両記者は
東京都健康長寿医療センター(板橋区)の受け入れている患者さんがどういう症状の患者さんなのか
を理解しているのだろうか。まさか
健康長寿医療センターの患者さん=全例療養病床の比較的管理の楽な患者さん
という認識なのではあるまいな。
ここは、
高齢者の高度医療
を目指す医療機関であり、
高齢者の急性期医療を行っている
のである。病院のサイトより。
中期目標
(略)
ア 3つの重点医療の提供
我が国の高齢者の死亡原因の1位を占めるがん、死亡原因の2位、3位を占め、要介護状態の大きな要因となる心血管疾患や脳血管疾患などのいわゆる血管病及び都内の要介護高齢者のおよそ半数が有している認知症については、我が国の高齢者医療の大きな課題であり、適切な医療の確保は喫緊の要請である。
センターは、こうした医療について重点医療として位置付け、医療と研究との一体化の利点を活かして、適切な医療を積極的に提供していく。
(ア) 血管病
高齢者のQOL低下の大きな要因となる心血管疾患や脳血管疾患、生活習慣病などについて治療や予防医療の充実を図る。
(イ) 高齢者がん
低侵襲医療の実施により、高齢者に負担の少ないがん治療を提供する。
また、在宅医療支援を積極的に進める。
(ウ) 認知症
研究による最新の知見を活かし、認知症の早期発見及び診断、外来診療を中心とした適切な医療の提供並びに認知症予防への取組を進める。イ 高齢者急性期医療の提供
一般に、高齢者は複数疾患や慢性疾患により入院期間が長期化しやすいため、急変時に適切な急性期医療を受けることで、早期治癒が図られ、日常生活動作(ADL:Activity of Daily Living)の低下も防ぐことができる。
このため、特に急性期の心血管疾患及び脳血管疾患などの疾病について、適切な医療の提供を行う。
(以下略)
こうした体制の病院で
個室管理が増える
と、当然、
本来、個室が必要な急性期の患者さんが受け入れられない
ということになる。
まあ、毎日新聞は
院内感染を起こすような病院は病院失格
と考えているようだからな。
高度医療を施す病院で、毎日新聞が理想とする病院は実在しない
ので、
毎日新聞関係者は、高度医療が必要な時には、日本の病院には絶対に掛からないでほしい
ものである。たぶん、どこかに
院内感染ゼロの理想的な病院
はあるでしょうよ、ええ。もちろん、
高度医療ができるかどうかは別
ですけどね。
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