抗日戦争ドラマ
中国に来ると、かならずどこかの局で放映してるのが
抗日戦争ドラマ
である。ここには
残虐な日本軍
が日本軍の装備で登場し、中国人民を苦しめる。
先ほどまでは
中国中央電視台1chで「抗日名将左権」
を連続放映していた。2005年制作のドラマだ。
抗日名将左権
CCTVの1chといえば、日本ではNHK総合に当たるが、国営放送だし、NHKよりさらに巨大な影響力を持っている。
で、
小鬼子
とか
日本鬼子
とかと日本人が罵倒されまくっていたのはいつもの通りだ。日本のドラマでは、例え戦時中のものでも
毛唐
なんてセリフが常時出てくることはまずない。
しかも、上記サイトでは、すくなくとも、中国国内では
すでに放映した「抗日名将左権」をwebで繰り返しタダで視聴できるシステム
になっている。
日本では過去であり、ほとんどの国民が存在もよく知らないか忘れている八路軍の戦いのドラマ
を、
反復学習するシステムが国営放送のサイトで行われている
わけなのだ。
もう一つ、
記号としての日本軍
という問題がある。日本では
軍人の姿
がドラマに集団で描かれるのはそれほどないわけなんだが、中国では
中国共産党の歴史の上でも「八路軍」の歴史は重要
であり、そうなると
敵である日本軍の姿は常にドラマで再現される
のだ。
NHKよりも強力な宣伝機関であるCCTVがこうした「抗日戦争ドラマ」による記憶の再生産を積極的に行う
わけだから、教育宣伝効果は高いだろう。
先ほどのドラマでも
敵をやっつけろ
と何度も叫んでいた。当然のことながら
敵とは抽象的な敵ではなく日本軍
であり、こういうドラマは、中国人民に対し
け、日本人(当然、脳内では日本鬼子と再生されているだろう)、なにしやがるんだよ
という反発を大規模に引き起こすトリガーになるだろう。
八路軍が守る人民の敵=日本人
は、刷り込みみたいな教育になっているから、いったんなにか事があればそれは記憶を引き出し
過去の話で済まない
ことになる。
日中関係がぎくしゃくするとき、
中国人の記憶にはこうして伝承され積み上げられた「抗日戦争史」がある
ということを日本人はもう一度頭に置いておいた方がいいだろう。
多分、日本人よりも、中国人の方が、関東軍や中国派遣軍等日本軍の装備については熟知していると思われる。てか日本ではほんの一部の人しか
関東軍とか中国派遣軍
といわれても、具体的な人間の姿を想起にしにくいだろうけど、中国ではこうやって毎日どこかのテレビ局で
日本軍の横暴を視覚で刺激する形
で流しているし、webで反復再生できるシステムになっている。日本では、日中戦争時の再現ドラマはそれほど多くないけど、中国にはそれこそ山のようにある。だから
日中間の問題
が起こると、当然、
日本軍の姿も頭の中で再生されている
のだ。そうした視点で日本を見ているのはほぼ間違いない。現代日本で
ロシア
といわれて、いまのロシア人を見て、第二次大戦末期のソ連軍を思い出す人はもう少なくなっただろうけれども、中国では、なにかきっかけがあれば、現代日本人に対しても
在中国の日本軍の姿が、重ね合わされて、見られている
わけである。
記憶再生の装置としてのメディアの役割は、相変わらず中国では有効だ。とりわけインターネットはそれをさらに強化する強力なツールなのだ、と改めて思う。そして、
抗日戦争の記憶
は、これからも強力なツールによって、より一層効率的に再生産されていくだろう。なんせ
インターネットで「抗日戦争ドラマ」を世界に流す
ことだって可能なのである。当然
語学学習の教材
としても、中国制作のドラマは使われるだろうから、
中国語学習者の学習ツールに抗日戦争ドラマが含まれる
ことだってあるだろう。
日本が海外で日本語教育をする場合には
出来るだけ中立の立場の教材
を使うだろうけどね。
語学教育は強力な情宣の場でもある、とは日本政府はちゃんと考えてないだろうなあ。
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コメント
中国国歌「義勇軍行進曲」は抗日戦争映画の主題歌ですね.
国歌を歌うこともトリガーになります.
投稿: とおりすがり | 2010-09-27 11:47