指示語と日本語
この間友人と話をしていて
日本語と指示語の関係
になった。
友人は配偶者と日常的に英語で会話をしている。
で、たまたま文章をチェックすることになったのだけど、指示語が多かったので
英文脈なので、自然な日本語にするために指示語を削った
とコメントを入れた。普段、英語とか中国語とかで生活していると、
日本語で書くとき、つい指示語を多めに入れてしまう
というのは、経験したことのある人なら、思い当たるだろう。
友人は、
フランス語を読んだ後に、英語を書くと、これまた指示語が増える
と話してくれた。これもよくわかる。
英語というのは、シンプルなのだが、
性と格をほぼ捨てた言語
で、その分、とっつきやすいかわりに
指示語だけだと、どれをうけてるかさっぱりわからん言語
になる。英語だけで暮らしていると分かりにくいけど、フランス語やドイツ語など、性と数、格変化を伴う文法をもつ言語のテクストを読み始めたり、会話したりすると、とたんに気がつき始める。フランス語なんかだと
指示語が何を受けているか、性と数で明示
してくれるので、悩まない。英語だと、しばらく悩んだりする。この
雑さ
こそが、英語が世界言語になっている原動力の一つだけど、逆に、性・数・格変化がきっちりしている言語から英語に戻ってくると、
不安
になって、
つい指示語が増えてしまう
というわけだ。
ちなみに友人によると、これは、大学教育以上の話だけど、
英語を書く能力でいえば、アメリカ人はイギリス人に敵わない
そうで、
難しいことを、易しい単語を組み合わせて理解しやすい文章を書く能力はイギリス人の方が上
だという。多民族から成る移民の国と、移民は受け入れているとはいえ、揺るぎない国語としての英語教育の伝統がある国との違い、ってことなのかな。
同じ内容でも、イギリス人の方がエレガントに書く
というのが、友人の見るところである。
| 固定リンク
コメント
これ、私の研究テーマです(笑)。同じ「英語」でも、例えば、テクニカルマニュアルのように、(1)最初から日本語などのメジャー言語に翻訳することがわかっている、もしくは(2)マイナー言語話者はオリジナルを読むことになる、ということがわかっているものは、指示代名詞が過少使用されているんですよ。そういうのを ELF (English as a lingua franca)という人もいます。
投稿: すずむし | 2010-12-03 17:32
モノを指示するのとは少し違いますが、日本語は一人称と二人称のバリエーションが多いように思います。小説などを見ると「誰の一人称か」が分かったり、「誰が誰に呼びかけたのか」が分かることが多いです。同じ音でも漢字ひらがなカタカナで印象が変わります。このエントリーを見てると、英語に訳すとどうなるのだろうと感じましたので、リストアップします。
・一人称
俺(おれ、オレ)、僕(ぼく、ボク)、私(わたし、ワタシ)、わたくし、あたし、あたい、うち、オラ、わい、わし、拙者、吾輩、余、わっち、妾(わらわ)、おいら、自分
・二人称
あなた(貴方、貴女、貴男)、あんた、きみ(キミ)、うぬ、お前、お前さん、貴公、てめえ、汝
投稿: ナナト | 2010-12-04 13:53
>ナナトさん、
関西弁では、2人称単数として「自分」を使いますよ。
(例:「自分、最近調子乗ってるんちゃう?」)
投稿: すずむし | 2010-12-05 00:51