福島第一第二原発事故を予見していた共産党吉井英勝衆院議員(京大工学部原子核工学科卒)の2005-07の国会質問(その2)多度津の起震台では「老朽化した施設の実験をせず」不作為による事実の隠蔽か?→コンピュータのシミュレーションで大丈夫という政府判断は2007年中越沖地震の柏崎刈羽原発事故で崩壊
さて、
多度津の起震台で老朽化した原発施設の耐震実験をしたことがあるか
というと
実は「新しい施設の耐震実験」しかやってない
のであった。同じく、吉井英勝衆院議員の国会質問より。
第164回国会 衆議院 予算委員会第七分科会
平成十八年三月一日(水曜日)吉井分科員 日本の原発は安全だという政策推進の根底には、やはりこの多度津の試験装置などで、これは世界一の装置だったんですね、これを実証してきたんです。だけれども、これは、まだ使っていない原発の機器類を置いての話なんです。
現実の原発の設備というのは、腐食も進めば、熱や、あるいは圧力の繰り返し加重の問題とか疲労によって随分老朽化というものが進んできているんです。ですから、実際には、ECCSのバルブの弁棒破損だとか、余熱除去系の配管が爆発して壊れてしまったりとか、制御棒そのものに亀裂が入ったり、制御棒のガイドローラーが壊れたりとか、それから制御棒を駆動する水圧系配管に穴があいてしまうとか、いろいろな問題が出てきているんです。だから私は、老朽化したもののきちんとした、事故になる前に、直前に実機試験をやっておくというのが非常に大事な意味を持っていると思うんです。
兵庫県にできたE―ディフェンスというのは、新しいものは、それをやったとしても、原子炉の中で使ったものは放射化されていますから、管理区域を設けてしか次々と実験することができないんですね。そういう点では、せっかくE―ディフェンスをつくって新しい装置のデータをとるんだったら、現に老朽化したものについて、幾つかサンプル的にしろ何にしろ、そこへ持っていって、本来はきちんと実機試験をやると。原子力安全委員長代理は、昨年の秋の内閣委員会では、やはり実証は大事だというお話をしておられましたが、私は、今そういうことが必要だと思うんです。
一言でいいですから、政府参考人に伺っておきますけれども、腐食や亀裂や破断の発生を、直前に近い状態、つまり、老朽化したものの実証試験を行ったということはどれぐらいありますか。○広瀬政府参考人 多度津を使いました試験は、合計二十一件になっております。(吉井委員「老朽化ですよ、老朽化したもの」と呼ぶ)
老朽化をしたもの、そのものについての実証試験は行われておりません。
というわけで
せっかくの宝の起震台に老朽化した施設の耐震実験をやらせなかった
んだってさ。
この質問から5年後、
老朽化した福島第一原発で事故
が起きた。経年劣化した施設の耐震実験が行える機会があったのに、小泉内閣は、その施設そのものを潰してしまったのだもの。
ちなみに
E―ディフェンス
は、汎用耐震実験施設であって、
原発の耐震実験に特化した多度津の起震台
とは性格が異なる。そのため、老朽化した日本の原発の耐震実験のためには、多度津の起震台は是非とも残しておかないといけなかったのである。事実、現在残っている多度津工学試験所の遺産である説明サイトには、
原子力発電機器やシステムの耐震設計は、計算モデルによるシュミレイションを活用して実施するのが通例ですが、耐震計算コード及びモデルの信頼性を確認するには、実際の振動で得られたデータにより検証することが必要です。また、原子力発電施設の主要機器の自身応答解析や応力・強度解析等を行うには、実際の振動で得られた試験データの適用が有効です。このような観点から、多度津振動台試験データは、今後、次のような業務に活用されるものと考えられます。
(1)新耐震設計審査指針に照らした耐震安全性評価
(2)新規建設用施設・機器の耐震設計
(3)高経年化対策としての技術評価(運転開始後30年経過前)
(4)免震装置設計
とあり
多度津の起震台で老朽化した原発施設の耐震実験を行う業務
を考慮していた。
たぶん、頭の切れる官僚が
もし、多度津で老朽化した原発の耐震実験をやって「耐震性の問題」が明らかになったら、「廃炉」になる
と思って、
多度津の起震台の「自然死」
に手を貸したんじゃないのか。もし、追試されていたら、すぐに廃炉になりかねない脆弱性が指摘されていた可能性は小さくないだろう。
そして、
2007年の中越沖地震による柏崎刈羽原発事故
が起きる。この時のことについて、一昨年、吉井議員は次のような質問を行っている。当時は麻生太郎内閣。
第171回国会 内閣委員会 第7号
平成二十一年四月三日(金曜日)
(略)
吉井委員 要するに、これまでから想定してきたものというのは、別段確定したものじゃないわけなんですよ。
それで、今度、新耐震指針に基づく地震動の新たな想定値というのが各原発で出ておりますが、震源を想定せず想定する地震というのがありますね。これは泊、東通、玄海、川内などですが、要するに、もう最初から震源も何も想定できない、しかし一応想定する、だから何も確定できない、これが実態だというふうになっています。
東電の方は、柏崎刈羽原発の機器の内部損傷はないというふうにしておりますが、どのような振動実験によって確認したのか。とりわけ、原子力安全委員会にしても保安院にしても、コンピューター解析で大丈夫として、中越沖地震で大規模損傷を招いたわけですよ。多度津にかつてあったような大型起振台のような装置を使って、内部損傷をした機器、超音波診断等ではまだ大丈夫そうに見えても、実際には内部損傷というのはそんな簡単なものじゃありませんから、実際にそれを振動実験をやって、コンピューター解析した解析値と実際の振動実験によって得られたデータとを突き合わせるなど、きちんとした安全性の確認というものが必要だと思うんです。
原子力安全・保安院の方に伺いますけれども、そういうきちんとした解明というものはやっているのかどうか、伺います。薦田政府参考人 お答えいたします。
私どもの方では、この地震があって以来、各設備につきまして詳細な点検を行い、かつ、安全上重要な機器につきまして、まさに安全サイドにコンピューターで計算をし、塑性変形が生じているかどうかということを確認しているということでございまして、必ずしも今先生がおっしゃいましたようなものがなくても、ここのところにつきましては十分な安全性確認ができるというふうに考えております。
また、一部の機器につきましては、分解点検、あるいは実際に組み込んだ後、漏えい試験であるとか、あるいは回転したときの音であるとか、そういうもののチェックを行っておりまして、いずれにしましても、この地震によって七号機につきましては大きな損傷がなかったというふうに考えているところでございます。
吉井委員 循環ポンプにしても、クリアランスが、本当にぎりぎりのところで一応オーケーを出してしまっているということもありますし、それからタービンの場合、高速回転体というのは、これは原子力安全委員長は御専門でよく、お詳しいと思いますけれども、高速回転するときというのは、クリティカルスピードを超えるかどうかということで、非常に破損しやすい状況のところもくぐり抜けなきゃいけないし、そして高速回転するものについて、もし地震等で、これはセンターが本当にきっちりしていなきゃいけないわけですから、これがぶれるとタービンミサイルのようなことも起こってしまう。
ですから、ここで大臣に伺っておきたいんですけれども、やはり原子力安全ということをあなたは担当していただいているわけですけれども、本来だったら、多度津の起振台を残しておれば、柏崎なんかの壊れたものをそこへ持っていって実際に振動実験することができたんですよ。しかし、その振動もできない。コンピューター解析を万能とする発想に立ってしまっているんですね。こういうことでは、本当に国民の安全を守れるのかという深刻な問題を今問われていると思うんです。大臣のお考えを伺います。佐藤国務大臣 先生の御指摘を踏まえまして、原子力の研究開発及び利用を進めるに当たりましては、安全の確保というのが大前提であるというふうに思います。原子力施設の安全対策に万全を期してまいりたいと思いますし、原子力安全委員会には専門的、中立的機関としての機能を十分に果たしてもらいたいと考えておりまして、私も、それを後押ししていきたいというふうに思います。
また、実験等々の話の御指摘も踏まえ、検討してまいりたいというふうに思っております。吉井委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、本当に、安全の問題というのは極めて今深刻な事態にありますから、七号機の再開を簡単に進めるのではなくて、万全の安全確認というものを引き続きやってもらいたい、このことを申し上げて、終わります。
実機とシミュレーションじゃ違うからね。
ところで、麻生元首相は、福島第一原発三号機が使用しているプルサーマル燃料の元であるMOX燃料に関する吉井議員の質問に、2006年の外務相時代、次のように答えている。
第164回国会 衆議院外務委員会 第19号 平成18年6月2日(金曜日)平成十八年六月二日(金曜日)
○吉井委員 そこで、大臣に伺います。
再処理したプルトニウムを輸送中に核ジャックされ、軍事転用されてはならないということからMOX燃料に加工して運ぶために、それも事故やデータ改ざんをやった英国工場ではまずいということなどもあって、ベルギーやオランダの工場で加工することになって、ですから、日仏、日英の協定だけじゃ間尺に合わないので、うまくいかないので、今度は日本、欧州間の協定になったのじゃないか、これが本筋じゃないかと思います。
出発はプルトニウムの利用にあって、それが行き詰まって、このまま進めば、今紹介したとおり、矛盾は拡大するばかりになっていますから、政府として、やはりこのプルトニウム利用政策を転換するということを真剣に考えていかなきゃいけないときじゃないかと思いますが、政府としての考えというものをあわせて大臣に伺います。麻生国務大臣 京大の技術屋に学習院の政治学部が答えるのにそもそも無理があるなと今の話を聞きながら思って聞いていたんですが、少なくとも、このMOXの話やら何やら、プルトニウムとウランとまぜてMOXというものにして、プルトニウムだけ抽出されて盗まれるようなことができないようにするためにMOXというのをつくった程度が私の知っている技術用語の、ついていけるレベルの最高限度でして、それから先のところまでは、吉井先生、正直なところ、今全体としてこの話は考えないかぬところなんで、プルサーマルの話やら何やらがちょっと途中で頓挫しているところがありますので、このもの全体として、原子力政策というものにつきましては、これは科技庁とか通産省、エネ庁等々がいろいろやらないかぬところなんだと思いますが、こういった話は今全体として考えていかねばならぬ大事な点に来つつあるという認識だけはいたしております。
吉井委員 この機会に、政府として、プルトニウム利用政策そのものを根本的に改めるということに踏み切らないと解決にならないということだけ申し上げて、質問を終わります。
太郎ちゃんだけでなく、たぶん、殆どの閣僚は、昔も今もこの程度の認識じゃないのか。
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