福島第一第二原発事故を予見していた共産党吉井英勝衆院議員(京大工学部原子核工学科卒)の2005-07の国会質問(その1)小泉改革が世界最大の起震台を持つ大型耐震実験施設「多度津起震台」を廃止した 1977年から5年の年月、310億円(半分は国費=わたしたちの税金)かけた施設を2億7700万円で叩き売り 買い取った業者は解体、スクラップ 当時の維持費は年間10億円
ところで、共産党が2007年に東電に申し入れをしたのだが、この前から同党の
吉井英勝衆院議員
が、
地震に対して、福島第一第二原発は大丈夫か
という質問を国会において、繰り返し行っている。吉井英勝衆院議員は
京大工学部原子核工学科出身
である。つまり
原発のプロ養成学科
を出たのだ。共産党の原発関連の質問は吉井英勝議員が主に行っているが、これは
自らの工学的知識を踏まえての専門的質問
だが、いかんせん
少数政党共産党議員の質問
なので、マスコミはほとんど黙殺してきた。だが、吉井議員の質問には
当時の政府がこの質問に誠実に対応していれば、現在招きつつある重大な事態を避けることができたのではないか
と思われる内容が含まれているのだ。
2005年、まだ
中越沖地震で柏崎刈羽原発で事故が起きる2年前
のこと、
時の小泉改革で、原発の耐震性実験を担ってきた巨大な実験施設が閉鎖
された。
地震の多い日本で原発の耐震性をテストするため、原子力発電技術機構は1982年、多度津に
世界最大の大型高性能振動台を設置した多度津工学試験所
を起き、試験機を起震台に乗せて、耐震性能実験をしていた。
ところが、この多度津起震台における耐震実証試験は2005年3月末で終了し、2005年9月末日をもって多度津工学試験所を閉鎖、すでに取り壊されている。
在りし日の
多度津の起震台での実験
のようす。
福島第一第二原発は、沸騰水型原子炉(BWR)。
1986~1987年に多度津の起震台で行われた1/32スケールモデルのBWR原子炉格納容耐震信頼性実験のようす。
1990〜1991年に行われた実物大モデルの非常用ディーゼル発電機システム耐震信頼性実験のようす。
その他詳しい情報は、
多度津工学試験所の歴史と役割(pdf)
をご覧下さい。
この
多度津の起震台
があれば、
柏崎刈羽原発の中越沖地震後に、老朽化した福島第一原発等の施設の耐震実験が可能
だったのだが、
小泉改革
は、
巨大な起震台は国費のムダ
として、無残に取り壊された。
まずは、共産党の吉井英勝衆院議員の小泉内閣への質問主意書とその回答書。
原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書右の質問主意書を提出する。
平成十七年十月三十一日
提出者 衆議院議員 吉 井 英 勝
衆議院議長 河野 洋平 殿
原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書
(略)
(四)原発の老朽化が進行する下で、巨大地震災害と重なった時、どのような事態が発生するかについて、予め検討することが原発の危険から国民の生命と安全を守る上で最も大事な課題である。
(略)
運用開始後三十年経っている老朽原発の、巨大地震発生時の安全性の検証は、多度津の起振台を使って実証試験を行うことにより、これから解明されていかなければならない問題である。
(略)
3.ところが、この多度津の施設は、「年間約十億円の維持費がもったいない」として、すでに今年(注、2005年)になってから、運転を中止している。来年度には運転してきた原子力発電機構を廃止して、世界的にも最高水準をいく起振台も解体・撤去してしまう動きが強まっている。十月十九日の内閣委員会において、鈴木原子力安全委員会委員長代理は「実際の機器に近いものを試験してみるということは大事なことだと思う」と答弁した上で、国の方が財政上の理由で廃止しようとしていることについて、「与えられた資源の中で」努力することと、試験できないならコンピュータなどによる「解析等を駆使して、安全をいろいろな角度から確認する」ようにしたいと答えた。
老朽化のすすむ原発の機器類を起振台に乗せて、実物で実証試験を行うことは、巨大地震に備える原発の安全対策にとって欠かせないことではないのか。原発の持っている危険から国民の安全を守ることは、政府の第一義的責務ではないのか。
来年度以降も引き続き多度津の起振台を運用して、老朽原発の巨大地震対策に必要な実証試験を行う考えに立つべきと思うが、政府の見解を問う。
(五)巨大地震時に津波が発生すると、発電所内へ進入する遡行してくる高波とともに、逆に潮が引いて海面が下がることによって冷却水が異常を来す場合がある。そこで、総ての原発のそれぞれの冷却水の取水口の位置(標準水面から幾らか)と波が引いた時の海水面の高さが標準水面から幾ら下にきているかの関係を明らかにして、巨大津波の発生時にも機器の冷却がうまくいくのか、国内の総ての原発について示されたい。
これに対する答弁書。
内閣衆質一六三第七二号平成十七年十一月十一日
内閣総理大臣 小 泉 純 一 郎
衆議院議長 河 野 洋 平 殿
衆議院議員吉井英勝君提出
原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。衆議院議員吉井英勝君提出 原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問に対する答弁書
(略)(四)の3について
必ずしも多度津振動台を用いた実物大の試験体による試験を行わなくても、他の研究機関の試験設備による試験及びその試験結果のコンピュータ解析によって、安全上重要な設備の地震時の挙動を把握することが十分に可能であると考えており、今後、多度津振動台を用いた御指摘のような試験を行う考えはない。(五)について
いずれの原子力発電所についても、津波により水位が低下した場合においても必要な海水を取水できるよう設計され、又は必要な海水を一時的に取水できない場合においても原子炉を冷却できる対策が講じられているものと承知している。
というわけで
多度津の起震台は閉鎖
津波対策は万全
という答が
当時の小泉内閣の見解
であった。
この多度津の実験施設がその後どうなったか。国会議事録データベースより。
第164回国会 衆議院 予算委員会第七分科会
平成十八年三月一日(水曜日)吉井分科員 大臣、お聞きいただいたように、今そこが大事なんですね。三十年、四十年と運転してきて老朽化している原発の安全性というのは最初と全然違うわけですから。中性子照射によって脆性破壊の問題とかいろいろな問題が出ていますから、だから佐々木保安院長は、かつて、重要機器の最終体力をきちんとここの多度津で確認をしておくんだということを言っておられたんです。ところが、今の御答弁では、全然確認できていないんです。
だから、まさに、管理区域にして老朽化したものを実機試験をする大事なときに、ここの施設はどうなったかといったら、実はこれを建設するときは、三百十億円の施設を国が百四十五億円、半分補助して、国民が税金を出してつくった装置なんです。ところが、昨年の秋、私はもっと早く知っておったら、これは残すように大臣のところに頼みに、前の大臣かもしれないけれども行ったんですけれども、二億七千七百万円でたたき売りですよ。
これを買い取った今治造船というのは、もともとそういうことをやるのが専門の会社じゃなくて、まあ倉庫か何かに使おうかいというところでしたから、もう完全に壊してしまったんですね。解体、スクラップにしてしまったんですよ。世界一の装置がこんなことになってしまったんですけれども、年間わずか十億円の、これを維持する技術屋さんらの給料が、節約しなきゃいけない、行革だと言って切ってしまったんですね。しかし、私、年間一千億近い原発立地地域の三法交付金からすれば、十億ぐらい安いものだと思うんですよ。
(以下略)
酷すぎて、涙が出るよ。
多度津の起震台があって、老朽化した原発の耐震実験が出来ていて、しかるべき対策が取られていたら、いま起きている
福島第一原発の深刻な事態
は、ここまで酷くはなっていなかった可能性がある。
でだ。
電力会社の原発対策費
は
民放・新聞社・出版社への「電力会社の原発推進広告」
にも、使われてる。だから
民放は、あんまり福島第一原発事故の説明をやりたくない
んだぜ。
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コメント
素晴らしい先見性です。まさにこの質問書に誠実に政府が対応していれば少なくとも今のように放っていないと思います。
この事実をもっと多くの人に知らせることは自然災害でなく政府と東電の怠慢から起きた事故であることがはっきりします。
貴重な資料の提供に感謝します。
投稿: 小池潔 | 2011-03-22 09:47
5年前に共産党の議員が国会で質問していたことが何故マスコミでテレビで報道されなかったのか?
また、政府や東京電力はもとより、大学の教授や科学者といわれる人たちは何故無視したのでしょうか?
最近読んだ「消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし ケンジ・ステファン・スズキ」(2010年11月25日第1刷発行)の著者あとがきに「・・・・・・デンマークでは中東戦争などの影響で1970年にエネルギー自給率がわずか2%に落ち込んだため、石油の国外依存を見直し、2009年にはエネルギー自給率124%に達しました。この数字は、85年に原子力発電からの撤退を表明し風力発電やバイオガス(家畜糞尿や有機廃棄物を原料とする燃料)などの自然エネルギーの生産と北海油田の開発に取り組んで実現したものです。風力発電でのエネルギー自給率は現在21%。議会はこれを2020年までに50%に引き上げる決議をしています。 日本はというと・・・・・・」とあります。
食料自給率もエネルギー自給率も自給自足の国を目指すべきでしょう。安全、安心のためにも!!!
投稿: 那須の町民 | 2011-03-22 19:27
全く驚いた・コンナに先見性のある質問を何故生かせなかったのか。残念この上ない。政府の傲慢が招いた事故といってもいい。
投稿: 宇田正明 | 2011-03-26 11:34
こんなにも先見性のある国会質問があったことに大変驚いた。
こういう質問をまったくとりあげないマスコミも、東京電力や政府と同罪である。猛省を促したい。
なぜ、こういう先を予見した鋭い質問ができるのか、やはり、国民の命と暮らしを真っ先に優先して考える視点があるのであろう。
国会議員が多いのではない、勉強して国民の立場で働く議員が少なすぎるのである。
この際、憲法違反の政党助成金は廃止して、被災者支援に回すべきである。
投稿: 蜷川正人 | 2011-03-27 10:08
マスコミも、東京電力や政府と同罪
→国民もね。一人一人が政治に興味をもち、疑問に思い行動に移せること。
はっきり言って、原子力発電になんか何の興味もなかった。
海外では、日本の事故を受けすぐに、数万人規模のデモが起きた。日本人は、甘えや依存が強いのでなかなかうまくいかない。
選挙民が興味があればマスコミが取り上げます。選挙民が動けば議員が動きます。
国や行政、マスコミの責任=自分たち国民、住民の責任です。
投稿: 植田 忠志 | 2011-04-07 09:35
吉井先生の原発に関する国会質問が活かされなかったのは残念です。福島原発の災害は人災そのものです。防げた災害です。
原発の構造が複雑で耐震性に問題を抱えているとみられる。その上、津波対策も稚拙でした。
地震国日本は4つのプレート上にあり、地震、津波は世界規模で起きることを推察、予測し、対策を考えるべきものです。
自民党政治の原発を甘く見た、無責任政治の象徴でもあります。
従って、原発事故に対する備えは全くありませんでした。事故後の対応も泥縄式で見ておれません。菅政権には気の毒だが自民党政権の負の遺産まで担ぎ、責任を取らされ、自民党に退陣を求められる始末、居直り強盗にあて気の毒な面もありますが。
ただし、共産党は吉井先生は国会で質問しただけで引き下がったのは無責任、いただけません。
吉井先生はあらゆる努力をして原発の問題を取り上げて戦うべきでした。
投稿: 伊藤 秀文 | 2011-04-11 18:19
マルクス主義を元にしている共産党が提起しているのが、問題を複雑にしている気がします。
政権交代したんだし、民主党に頑張ってもらいたいと思ってます。
自民党が退陣を求めるのは、筋違いでしょう。
自民党は、経費を優先して国民の安全を切り捨てたんですから。
仮にまた政権交代したとして、その当時の責任を追求されても何も言えないのではないかと思います。
私は、このまま管政権に是非頑張って欲しいと思います。
投稿: ひろた | 2011-04-16 17:04
吉井議員の質問にビックリしました。
なぜ、マスコミは大きく報道しないのか? 共産党の議員だからなのか?
前回は民主党だったけど、今度の選挙は、絶対共産党に入れます。
投稿: KAZU | 2011-05-01 19:12