岡西為人『宋以前医籍考 上下』(繁体字・横組)北京・学苑出版社 2010.4 260元
中国医学に関する文献にアプローチする研究者ならば、知らないとモグリと言われるのが本書である。日本人の手になる、中国医学の文献学的巨峰と言ってもよい著作であるにもかかわらず、日本では、中国医学および漢方医学、東アジア科学史関連の研究者以外にはほとんど知られていない。
従来は、中国で出版された人民衛生出版社1958年版か、台湾で出版された進学書局1969年版を図書館でコピーするしか入手方法がなかったのだが、昨年、郭秀梅女史と岡田研吉氏の整理を経て、中国で出版された。
本書には、岡西為人次男の岡西克明氏の謝辞があり、その中で
回想家父生前、常常自嘆此書在日本読者甚鮮。如今仰仗郭先生之努力、校勘・翻訳、到使中国同仁得以参閲此書、不勝感懐。此書今日出版還郷、亦可慰藉九泉下之先人。(思えば亡き父は生前、常々本書の日本での読者が非常に少ないことを嘆いていた。いま、郭先生の努力を仰いで、校勘・翻訳され、中国の同学の士が本書を参照できるようにしていただいたことには、思いしのぶにたえない。本書が今日出版されて故郷である中国に還ることも、やはり地下に眠る先人を慰めることだろう。)
と書いておられる(たぶん原文は日本語だと思うので、もし、元の日本語の文章があったら、是非拝読したいものである)ことからも、中国医学を現在も援用している国や地域で、いかに本書の出版が望まれ、また岡西為人の故国日本では本書を遇すること薄かったかが理解出来る。
郭秀梅女史は、台湾進学書局1969年版を底本に、岡西為人が旧満州に残した稿本、岡西為人帰国後に瀋陽の中国医科大学で作られた抄本を参照し、岡田研吉氏の協力の下、本書を校勘・整理した。併せて、巻頭には、岡西為人に関わる写真図版を多数載せ、巻末には、岡西為人の『竹孫先生半生記』(私家版)および年譜・著作目録等が付され、岡西為人の業績と人生を知ることが出来る。
本書の唯一の憾みは造本で、頻繁に繙かれる間に、ほどなく見返し部分ののどが切れると思われる。その点、台湾版は丈夫に造本してあった。
日本では東方書店ほかで購入可能。とりあえず東方書店のurlを貼っておく。
宋以前醫籍考 上、下(附·紀念岡西為人) 精装 〔日〕岡西為人 著 郭秀梅 整理
東方書店の値付けは13650円。1元=52.5円換算のようだ。
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