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2011-06-19

第14回チャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門@6/18 Trifonovを聞く幸せな夜

さて、期待のTrifonovの登場を深夜に控え、日本時間夜18:00から始まった午後の部を聞いていると、凄い弾き手が現れた。30歳のロシア人Georgy GROMOVだ。
Gro1
曲目は
 Bartók―Suite, Op. 14
 Haydn―Piano Sonata in G major, Hob. XVI\40
 Tchaikovsky―The Seasons, Op. 37 bis: March: Song of the Lark, April: Snowdrop, May: Starlit Nights
 Prokofiev―Piano Sonata No. 7 in B-flat major, Op. 83
だったが、最初のバルトークから素晴らしい。いや〜、ロシア畏るべし。そして、第二次世界大戦中に作曲されたので、
 戦争ソナタ
と称されるプロコフィエフのピアノソナタ7番は、端正でありながら、最後は激情で締めくくった。でも、破綻しない。
どれだけ上位層が厚いんだ、ロシア。

そして、日本では日付が変わった6/18 0:00、待ちに待ったDaniil Trifonov登場。公式サイトのライブ配信では、出場者が出る前に
 自己紹介ビデオ
を流すのだが、トリフォノフはアメリカでも勉強しているので、英語がうまい。
これは、シンセサイザーを弾く5歳のトリフォノフ。
Trit1
彼は、演奏者であるとともに、作曲の勉強もしている。

公式サイトのライブでは、ルービンシュタイン国際ピアノコンクールの審査員だった息子だか孫だかというおじさんが出てきて、英語でいろいろ解説するんだけど、トリフォノフが優勝したときのことを
 彼の演奏を聴いて、優勝は彼だと確信した
と絶賛していた。てか、このおじさん、どうもトリフォノフの魅力に
 すっかりやられている
ようだ。それほど、トリフォノフの音楽は、人を引きつける力がある。何より
 聴く人を幸せにする音楽
なのだ。

今日も演奏が始まるともう別格。コンテスタントの演奏というよりも、彼のリサイタルを聴いている感じだ。
これまで、携帯の着信音を鳴らすなど
 あまりマナーが良いとは思えなかったモスクワの聴衆
が、水を打ったように静まりかえり、トリフォノフのピアノに耳を傾けている。
本日のピアノはスタンウェイ。
Trit4

最初は
 Scarlatti, Sonata in D minor, L.108
から。
たった一音を弾き出すだけで、あっという間に
 トリフォノフの音楽の世界
に引き込まれてしまう。

端正な音作りが要求されるスカルラッティのソナタでは
Tirt3
一音一音を着実に積み上げる。いつもは
 幸せそうな表情
でピアノを弾くトリフォノフが、こんな真剣な顔で美しいメロディを奏でていた。
続いて
 Haydn, Piano Sonata in D major, Hob. XVI\42
も、きっちりと弾きこなす。
さて、ここからは
 ロシアンタイム
だ。一転して
 Prokofiev, Sonata No. 3 in A minor, Op. 28
は、荒々しく入る。 若干のミスタッチがあっても
 それもトリフォノフの音楽の一部だ
と感じさせる、圧倒的な説得力がある。この辺りが、他の出場者とはレベルが違う所以だ。
そして、またも曲調がまるで違うものへ。
 Tchaikovsky, Valse sentimentale, Op. 51: Echo rustique, Op. 72, Tendres reproches, Op. 72, Un poco di Chopin, Op. 72
とチャイコフスキーが続く。あのプロコフィエフの爆発から、今度は最初の一音から
 魅惑的な美音で弱音を響かせる
のだ。この
 切り替えの素晴らしさ
がトリフォノフの特長だ。そして憑かれたように演奏を続ける。
Trit5
このチャイコフスキーも素晴らしい。

自己紹介ビデオで
 ショパンとスクリャービンが好き
と言っていたトリフォノフが、ショパンコンクール、ルービンシュタインコンクールと弾いていた
 Chopin、Barcarolle in F-sharp major, Op. 60 (舟歌)
の演奏に移る直前の表情。
Trit7_2
あたかも
 ショパンを憑依させるように、上半身を揺らして
から、演奏に入った。この舟歌がまた、これまでの演奏とは違っていて、素晴らしかった。
更に音が豊かになり、曲想の広がりを感じる。
演奏している時の表情、なめるように鍵盤を撫でる指、猫背になる姿勢が、相変わらず
 ヘンタイ(褒め言葉です)
なんだが、そのヘンタイ振りを差し引いて余りある演奏だ。

トリフォノフは進化している。常に
 型にはまらず、成長していく若手ピアニスト
なのだ。
最後は難曲
 Liszt, Mephisto Waltz No. 1 in A major
だ。悪魔が鍵盤上を踊り狂い、トリフォノフの音楽がホールに満ちた。
 終わらないでくれ!
コンクールの演奏なのに、そう願った。

聴衆は、演奏の切れ目ごとに熱狂。
最後は審査員も惜しみない拍手を送った。
Trit9
画像、真ん中辺一列にいるのが審査員だ。

トリフォノフの後、というのは難しいが、韓国の女性ピアニスト
 SON Yeol Eum
が続いた。実は彼女は
 「のだめカンタービレ」の孫ルイに感じがよく似ている
のである。今日のこのドレスと髪型は特に似た印象を与える。
Son_2
トリフォノフの後でなければ、彼女の演奏の聞こえ方もまた違ったかも、とは思うが、果敢に
 悲愴交響曲からピアノ用に編曲されたスケルツォ
を選んで弾いた。もっとも、これも、「のだめ」の孫ルイがスランプに陥った時の如く
 うまいんだけど、心に響かない出来
で、ちょっと残念。やっぱり
 チャイコフスキーはねっとり弾いてくれないと
ね。

夜の部の演奏は、以下にアクセスするとまだ聴ける。
http://pitch.paraclassics.com/#/live/piano

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コメント

トリフォノフの実況報告を文書にて有難うございます。
彼の演奏は聴く人を幸せにしてくれる。って本当ですね。
私も彼の大ファンです。去年念願のショパンのピアノコンクールを初めて見に行って(Finalの一つ前のラウンドでしたが)
運良くその時は左側の前から5,6列目だったので、演奏者の後ろ斜めから顔以外は全て
近くにて見ることが出来ました。1,2番に弾いた人達はまだコンクールを見始めたばかりだったので、ただただ興奮の連続。
3番目に弾いたのトリフォノフでした。興奮というよりは何か幻かエンジェルを見ているような気がして、これが天才だ!!
という感じでした。数日後、結果発表の会場に一人で結果を見に来ていたトリフォノフと記念撮影!
普段着のGパンにカジュアルジャケットの彼はただの“ぼくちゃん”でした。
あの普段は普通の僕ちゃんが世界の人々を幸せな気持ちにしてくれるって素敵な事ですよね。

投稿: Miya | 2011-06-29 06:18

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