中國哲學書電子化計劃
日本研究が永遠にマイナーな学問になるとしたら、こうした
善本のweb公開が遅々として進んでいない
ことが大きい。
先ほど、歐陽脩の「論刪去九經正義中讖緯劄子」をwebで検索していたら
中國哲學書電子化計劃
を見つけた。ここには歐陽脩の全集である
『歐陽文忠公文集』の『四部叢刊』初編本がPDF
で提供されている。便利な時代になったものですな。
『四庫全書』については、archive.orgに中国国内の地域図書館等から画像がPDFで上がっているので、割に見やすい。『四庫全書』データベースが使えない環境であれば、こうしたPDFは便利である。
15年くらい前までは
中国学研究者は院生になると善本が揃っているとされる『四部叢刊』を三編くらいまで揃える
というのが一つのポイントで、初編だけでも50万円近くし、大量の書物を抱えることになるので、修士辺りでは
どうやって『四部叢刊』を揃えるか
が、頭の痛い課題だった。そもそも、古書流通が中心で、夏のセールなどに一瞬だけ出るのだけど、たいていライバルがいて、古書店に電話すると、もう売り切れてたりする、という代物だった。なので、わたしは三編しか持ってない、という間抜けなことになっている。
この頃は、
オンラインでの善本提供
が進んでいて、中国や台湾、香港では、
国家・地域規模で善本のオンライン公開を進めている
わけなのだが、日本はこの点、たとえば
源氏物語や万葉集の諸本を一気に対照できるか
というと、ダメだ。中国の場合は
かならず厳密な校勘がなされている本=善本
だから、善本を見ておけば、そう困らないが、日本の所謂「古典」についての校勘は
写本文化だったので版本中心の中国と異なり絶対的「善本」がない
わけで、まず
校勘の前提となる諸写本画像のオープンなソースが少ない
のは学問上致命的である。その意味では
e国宝の半井家本『医心方』全公開
というのは、極めて画期的で、たぶん
中国・台湾・香港・韓国等、中国医学が現存もしくは影響を与えている地域の医学史研究者に大いに役立っている
と思われる。
もっとも、オンラインで公開されているにしても、必要な書籍は
書冊体でも持っておく
のも大事で、中国学で唐代までを扱うなら、学部の内に
中華書局版『二十四史』
『文選』李善注
『十三經注疏』
は、書棚に揃えておくくらいは、普通だと思っていたら、最近はオンラインで探せるからと、あまり書物を持たない方向らしい。持たないのはいいのだけど、オンラインだと字が潰れてたり、電子化されていると、文字が文字コードになくて抜けたりしてるから、一応
ハードコピーというか元になったテクストを手元に置いておく
のが早い。『二十四史』『文選』『十三經注疏』くらいで、読めない文字のために図書館に行くようじゃ、勉強がはかどらない。それに
ぱらぱらめくることの効果
も大きい。オンラインで
一発検索
ばかりしていると、全体の文脈には気が回らなくなり、
木を見て森は知らず
になってしまう恐れが大きいというかそれが現在の
文献を扱うすべての研究領域の問題点
である。
読む力
は、
オンライン検索ではつかない
のだ。
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