第14回チャイコフスキー国際コンクール Galaコンサート@モスクワ & サンクトペテルブルグでまた進歩を見せたTrifonov グランプリはTrifonov
ゲルギエフの指揮の下、
改革第一回
となった第14回チャイコフスキー国際コンクールは二夜連続のGalaコンサートの夜を迎えた。Galaコンサートの終わりには
ゲルギエフがグランプリを決定する
ことになっている。このグランプリについて、長く『月刊ショパン』で海外取材を続け、現地入りしているフリーの高坂さんが、twitterで
http://twitter.com/#!/classic_indobu/status/87118162377715712で、今夜発表されるグランプリは、やはりゲルギエフ様が共演したりして本当にすばらしいと思うアーティストが存在すれば、出す、とのこと。つまり、特別と感じるアーティストがいなければ出さないっていうことらしいです。
と呟いていた。
第一夜、モスクワ音楽院大ホール。
これまでコンクールを行ってきたのと同じ会場だが、galaコンサートではオケは
ゲルギエフ指揮のマリインスキー歌劇場管弦楽団
に変わった。
オケが変わると、こんなに音楽が変わるんだ!
という驚きの音の響き。前夜までのAlexander Dmitriev指揮のRNOとは
音の厚みがまるで違う
のだ。そして、独奏者との寄り添い方も雲泥の差。
コンチェルトではない時は、オケが座ったまま、演奏が行われる。
浅田真央のコーチだった、タチアナ・タラソワの夫、ピアニストのウラジミール・クライノフが亡くなり、記念の賞を授与されたRomanovskyは、落ち着いたタッチで沁み入るように
Chopin, Nocturne No. 20 in C-sharp minor, Op. Posth(遺作)
を弾く。まさに名ピアニストの追悼にふさわしい選曲。
プログラムの最後に登場したのがTrifonov。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番の第二・第三楽章を弾くのだが、
オケが昨日までと全く違う
のだ。何が違うって、
ゲルギエフがTrifonovのピアノのために、指揮をしてくれる
のである。
この若者の音をいかに生かすか
それが、ゲルギエフの方針だ。
演奏中、会場に来ていた
Alexander Dmitrievの抜きのショット
が何回か流れた。やっぱり、ソリストを生かさない指揮に現地でも批判があったのだろうな。
アンコールは、カンパネラ。
優勝にほっとしたのか、好き放題に鍵盤を駆け回る、Trifonovの音楽。
Galaコンサートは
長いコンクールの後、疲労がピークに達している時点
に行われるので、本選より、出来が今一なことが多い。昨年のショパンコンクールのGalaコンサートでは、疲れの見える他の演奏者とは一線を画し、幸せそうに自分のショパンを弾いて見せ、目を奪ったTrifonovだったのだが、今回は、疲れもあるのだろうか、
オケに負けていた
のだった。Trifonovの音が、オケに沈んでいた。
まあ、Galaコンサートだし、仕方ないか。
そう思った。しかし、一方で
Trifonovは必ず「進化してくる」ピアニストだ
という期待もある。二夜目はどんな演奏をしてくるだろう。
Galaコンサートの日程は厳しい。
モスクワでの演奏終了後、あまり眠る時間も取れず、朝7時に今夜の会場、サンクトペテルブルグに向けて、入賞者達が出発した。
そして、日本時間7/3の午前1時過ぎからGalaコンサートが始まった。
本日の会場は、ゲルギエフとマリインスキー歌劇場管弦楽団のホーム
マリインスキー劇場コンサートホール
だ。ピアノは、aorangi_aoさんによると、
http://twitter.com/#!/aorangi_ao/status/87269893438836736ガラコン巻き戻し中。昨日はNYスタインウェイだったのね〜
と、昨日までの
Hamburg スタンウェイ
とは違う。さらに

ピアノを一々出し入れするので、進行が遅れに遅れた。
Trifonovがステージに現れた頃、日本では朝日が差し始めていた。日本時間で5時を回っていた。
NYスタンウェイは響くピアノだ。楽器の特性もあり、今夜のTrifonovのピアノは、オケと対等に渡り合った。昨日と同じくチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番の第二・第三楽章を弾いたのだが、Trifonovのピアノとオケが途切れることなく、旋律を受け渡していった。
第二楽章冒頭の弱音によるピチカートに続き、Fluteが主旋律を奏でる。
マリインスキー歌劇場管弦楽団はRNOと比較して
格段に管楽器の音が美しい
のだった。特に木管の音はすばらしい。第二楽章頭のFluteも、Trifonovのピアノの音に合う
太く丸い音
だった。(音は昨晩の方がよかったけど)RNOでは
ffで金管が音を割る
こともあったのだが、そうした乱暴な演奏はマリインスキー歌劇場管弦楽団では耳にすることがなかった。
Trifonovの特長である、弱音の美音は緩徐楽章で発揮される。夢見る表情で第二楽章を弾くTrifonov。
Trifonovの音質からいくと、NYスタンウェイでない方が向いているのかも知れないけど、ゲルギエフ率いるロシア随一のオケ、マリインスキー歌劇場管弦楽団と一体となり、確かな
協奏曲
を作り上げていた。Trifonov畏るべし。
アンコールは、カンパネラかな、と思ったら、
Chopin, Grande Valse Brellante Es-dur Op .18(華麗なる大円舞曲)
を弾き始めた。恐らく、まだ小学生の頃に最初にこの曲を上げてから、何千回となくTrifonovは弾いている曲だろう。いままさに
コンクール人生から卒業して、プロの音楽家として旅立つ
彼にとって
アマチュア時代のさまざまな思い出が詰まったショパン
なのだ。
アンコール2曲目が、カンパネラ。この曲は
Trifonovのシグニチャー
になった感がある。今日も軽快に、Trifonovの指は鍵盤の上を自在に舞っていた。きらきらした音がホールに響く。
さて、ゲルギエフが出てきて、Trifonovと並ぶと、ロシア語で
グランプリはDaniil Trifonov
と発表した。
ゲルギエフからチャイコフスキーの小さな胸像が贈られる。
で。
その後がTrifonovらしい。
子猫か赤ん坊でも抱くような手つきで、チャイコフスキーの胸像を抱えるTrifonov。
こういう
ヘン
なところが、Trifonovの魅力でもある。
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