産科医療崩壊 新生児破傷風を引き起こす破傷風菌の芽胞は煮沸消毒では除去できない 一部「自然なお産派」助産師はどうやって看護師国家試験に合格したのか
助産師資格は
看護師免許を得た後でないと手に入らない資格
だ。たとえば、一昨年3月に実施された看護師の第98回国家試験の午前の問題で、
98回 午前問題14 オートクレーブを使用するのはどれか。
1.乾熱滅菌
2.ろ過滅菌
3.ガス滅菌
4.高圧蒸気滅菌
という設問がある。当然ながら答は
4
なんだけど、この設問の前提は
滅菌についての正しい知識があるかどうか
を問うているわけだ。そして
破傷風菌や炭疽菌が作る芽胞は煮沸では死なない
ことは、看護学校や大学の看護学部等で基礎知識として教えられている筈なのである。
出産時に
新生児破傷風が重大な結果をもたらす
ことは、WHOやUNICEFの取り組みを見ても明らかである。しかし、2008年かその1、2年前以内に
日本で臍帯を切るときに、使用した剪刀(外科用のはさみ)が不潔で破傷風菌に汚染されていたと思われる例
があり、
21世紀の日本で新生児破傷風が発生した
ことがある。これは以前に取り上げた。
2009-01-14 産科崩壊 兵庫県内の助産院でここ1-2年以内になんと先進国では考えにくい「新生児破傷風」が発生していた 原因は不潔な器具で臍の緒を切ったため
で、この記事を書いたとき、TBを頂いて、知ったのが以下のとんでもない話だった。
2009-01-28 産科崩壊 「自然なお産」を標榜する40代の助産師による指導で自宅で思いがけなく水中出産してしまった末に産褥熱に しかも臍の緒を切る鋏などの器具を陣痛の始まった産婦に煮沸消毒させる 消毒薬は「アルコール」と「松の油」のみ持参
問題の部分を再掲する。
助産師からは、陣痛がきて時間があったら、お産のときに使う器具の入った金属製の容器に、水を入れて、ガスにかけて10分程度煮沸消毒するよう指示されました。容器には臍帯切断のためのはさみや会陰裂傷したときに使ったクリップ、せっし等が入っていました。
(略)
破傷風菌も芽胞を作ります。煮沸消毒では効果がないようです。
助産院や自宅だからといって、感染管理を怠ってはいけないはずです。私の関わった助産師さんは「助産院は化学的なものは使わないで、なるべく自然のものでという方針」だと言っていました。それから、「自宅は妊婦が住んでいるところなので常在菌がいるから安全とか言ってました。だから、消毒類も一切持ってきてなかったです。助産行為するのに。私は産褥熱でひどい思いをしました。
自然にこだわらないで、母子の安全を一番に考えて欲しいです。助産師さんがその責任をおっているのですから。
ひょっとして
この助産師さんの頃の国家試験では、「滅菌」の概念が今とは違い、「シンメルブッシュ」(煮沸消毒器)で滅菌すればOK
というのが
医療従事者の一般常識
だったんだろうか。40代で看護師資格を持っているとすれば、一番古くて20年以上前?
滅菌のやり方も日々進歩してるのに、
シンメルブッシュでOK
だと思っているとしか考えられないんだけどね。その後この助産師さんがどうしてるか知らないが、
この手の「現代の看護師国家試験」では「不合格」になる「滅菌の知識」で助産行為を行っている
とするならば、その内、
再び、新生児破傷風が起きても不思議はない
でしょうね。いまは
高齢出産が珍しくない
し、30過ぎていれば、たとえ子どもの頃に破傷風ワクチン接種済みであっても
破傷風の抗体価も、赤ちゃんを守れないくらいに低下している
だろう。破傷風のワクチンは、成人後は
10年に一度打って、抗体価を高めておくのが望ましい
のにもかかわらず、こうした
自然派の助産師さんたちは「ワクチンを敵視」してたりする
から、
「自然なお産」で「新生児破傷風」がいつ起きてもおかしくはない
ということなのだ。
しかし、
近代医学の介入を「阻止」するのが「自然なお産」
なのだとすれば、何のための
看護師・助産師国家試験
だったのだろうか。
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