井上純弌『中国嫁日記(1)』エンターブレイン 2011/8(番外編)親族訪問でアルバイトは出来るのか

ところで、井上純弌さんの『中国嫁日記(1)』の増刷が決まったそうだ。おめでとうございます。

この『中国嫁日記(1)』に
　月さんが親族訪問ビザで日本に来たとき、アルバイトをした
という話が出てくる。で、
　親族訪問でアルバイトって出来るの?
と疑問に思った人もいるだろう。漫画では、詳しく描かれてないけれども
　親族訪問ビザで来日した場合は、アルバイトを始める前に入国管理局に「資格外活動許可申請」を提出して、許可され、「資格外活動許可書」を受けた後であれば、アルバイトが出来る
仕組みになっている。

留学生のアルバイトについても同じだ。日本でアルバイトをするためには、「資格外活動許可書」が必要だ。
以前、留学生に関わっていたときの経験では、関西では
　資格外活動の許可が下りるまでに、来日後、だいたい2週間前後掛かっていた
ように思う。
　この辺りが理解出来ず、来日して、すぐアルバイトを始めたがる留学生にまず「まだアルバイトをしてはいけない」と注意する
のが、各大学の留学生担当の仕事の一つだ。
　資格外活動許可書のない内にアルバイトをすると、不法就労で、入国管理法違反
となってしまい、場合によっては
　留学取り消し、強制帰国
になるからだ。法務省に依れば
　資格外活動許可書が下りるまでの標準的な期間はだいたい2週間〜2カ月
だそうだ。地域によって、速い遅いがあると思う。

この時期
　中国の学校を卒業(中国は9月が新学期)した私費留学生がアルバイトを探しています
と、掲示板やSNSなどで親切心のつもりで問い合わせている人がいるけど、まず
　資格外活動許可書を取ったかどうか確認した上で、アルバイト捜しに協力して欲しい
のだ。上に書いたように、
　資格外活動許可書がない状態でのアルバイトは不法就労で、不法滞在になり、場合によっては、国外退去もあり得る
からだ。
海外からの留学生に親切にしたつもりで、違法行為に手を貸す形となり、最終的にお互いに不幸なことにならないように、気をつけて欲しい。なお
　資格外活動許可書で認められている労働時間は週28時間以内
である。これを超過すると
　本来の目的での来日とは認められず、不法就労扱い
になるので、これまた注意。また
　風俗営業でのアルバイトは「資格外活動」として認められない
ので、これはかなり厳しい話になる。たとえば
　風俗営業の店の受付をやっていた
としても、アウトだ。こっちは結構厳しくて、強制退去になった例を知っている。
また風俗営業は、性風俗店だけでなく所謂「風俗営業」すべてが範囲になるので、パチンコ店・ゲームセンター等でのアルバイトもダメだ。
風俗営業の範囲については、警視庁の以下のサイトを参照して下さい。
風営適正化法による許可・届出の対象となる営業(PDF)

なお、平成22年に入管難民法が改正されて、外国人の強制帰国要件に

新たな退去強制事由として，次のものが加わります。また，資格外活動許可の取消しに係る規定を設けます。
・他の外国人に不正に上陸許可等を受けさせる目的での，偽変造文書等の作成等を教唆・幇助する行為をしたこと
・不法就労助長行為をしたこと
・資格外活動の罪により禁錮以上の刑に処せられたこと

が加わった。つまり
　留学生等外国人同士で不法就労を助長する行為自体が強制帰国の要件
となったわけで、
　善意であっても、外国人が、日本で就労の認められてない外国人に就労を斡旋する行為は「不法就労助長行為」と認められる恐れ
がある。この辺り
　コネがすべての中国とまったく違う
ので、留学生諸君は是非注意して下さい。簡単に言うと
　アルバイトがなくてかわいそうだから、と「資格外活動許可書」のない同郷や同窓の留学生にアルバイトを紹介してもダメ
ってことだ。友達にアルバイトを紹介して、自分も強制送還なんて割に合わないでしょ? よく考えてね。