井上純弌『中国嫁日記(1)』エンターブレイン 2011/8
(時限告知)
明日のコミケ80の3日目 A-80ab 希有馬屋/井上屋で、井上純弌さんが出店。
中国嫁関係は
●中国嫁Bセット(キメ顔型) 3000円
●中国嫁日記日記(ピンズ付き) 1200円 (在庫若干数!)
だそうです。
「中国嫁Bセット」は王先生と月さんのフィギュアで
薄い本
がついているそうです。
(告知終わり)
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中国嫁日記
が、一般書籍版
井上純弌『中国嫁日記(1)』エンターブレイン
として発売された。
面白いし、井上さんと月さんのこの愉快なカップルに幸あれ、とは思うのだが、実際に
中国人との国際結婚カップルのあれこれ
を見てきた立場からいうと、このお二人の現在の幸せは
奇蹟
だと感じる。それと同時に、著書の井上さんが危惧するように
この「現代のお伽噺」のような微笑ましい話が、経済格差のある中国人女性と日本人男性の国際結婚推進に「悪用」されないよう
祈りたい。
先日、twitterで、井上さんが自称フェミニストに
身に覚えのない、酷い攻撃
をされてたのだが、なぜそういう身も蓋もないことが起こるかは簡単で
月さんが「母語ではない日本語」で夫に「歩み寄っている」から
なのだ。井上さんの中国語は、どうも
あまり大したことがない
そうで、猶且、月さんが日本語能力検定二級に合格した程度の日本語能力というと
日本語のコミュニケーション能力として限界がある
ことになる。実際
月さんが、日本語で怒りを表現できないというネタ
が出てくる。
いまは幸せだからイイ。
でも人生には、いろんな局面がある。その時
絶望的な語学的障壁がどういうことをもたらすか
は、さまざまな例が示している。
異言語間カップルでは、
同程度に歩み寄れる言語が存在するか否か
が、関係を維持するための鍵だけど、このカップルにはそれがない。
月さんの
おかしな日本語
が、ネタになっているのは、本人は自覚してないとは言え、
日本語中華主義(日本語を「日本人らしく話せる」人間だけが「まともな人間」扱いされる状況)
の反映と見えなくもないのだ。
月さんだけに母語と異なる言語習得を強いているように見えるのが、残念だ。
心配が杞憂となることを祈る。
おまけ。
配偶者間の言語障壁
は実は
日本人同士
でもある。たとえば
関西人と関東以北出身者のカップル
だと、住む場所にもよるけど、
盆や正月の帰省
で
女性の方言が地元と異なる点
が、問題になる。というか、地域によっては
マジで配偶者の家族や親戚が何言ってるか判らない
ことになる。常に、配偶者がそばにいて通訳してくれるなら話は別かもしれないけど、そんな結構なことはあまりないだろう。
通常は、
日本人同士なのだから
と、
女性が学習を強いられる
のが大半ではないかと思う。その地域の言語が好きならいいが、中には苦痛な人もいるかも知れない。
子育てに母親が用いる言語は
自分が育ってきた言語
になる場合が多いだろう。もし、
里帰り出産ではない
あるいは
実母がそばについて出産しない
のであれば、周囲の言語は自分の獲得した方言とは違うことになる。
言語の違いは、本人以外は気がついてないので、出産前後の心理的な圧迫の一つの要因になることもあるんだけど、ほとんど理解されない。
記紀神話の
トヨタマヒメが、お産する姿を見ないよう、夫であるホヲリ(山幸彦)に告げるのだが、覗かれて、ワニの姿に戻ったのを見られてしまう。それを恥じたトヨタマヒメは、生まれた子どもを置いて、海に戻っていく
という話は、
お産の時に、人間は自分の生まれた時に近い環境に戻りたい
って話にも読み替えられるだろう。
実際にワニになるかどうかは別として
自分が生まれ育った時の言語を使えない環境での出産・育児
というのは、結構なストレスになる。
これが
外国で生まれ育って、日本語があまり得意でない母親が、日本で子どもを産み育てる
ということになると、また別な深刻な問題が起きる。
名前も見た目も日本人で、日本で生まれ育ったのだけど、日本語がそれほど得意でない学生が、そうした背景のある母を持つと知ったときは、初めてだったこともあって、衝撃を受けた。
日本では、育てる親が日本語を母語としない場合に、親子を十分にサポートできる環境がない。いまもたぶん著しくは改善してはいないだろう。
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コメント
ウチはまさに
>関西人と関東以北のカップル
なのですが、意思疎通が旨く言って無い感じがしたら、即
英語(英単語)で会話するようにしてます。
お互い「標準語」を話しているつもりでも、同じ単語で意味が異なったり、
翻訳できない場合も多いですから。
>マジで配偶者の家族や親戚が何言ってるか判らない
母音の種類が異なるようで、当初はマジでヒアリングできなかったようです。
投稿: ADAM | 2011-08-13 16:47
ずっと関東式の葬式しかみたことがなかったのですが、結婚後、配偶者の田舎の葬式にでたら、座る席順から、式の進行から、お香典からお骨の拾い方から全然違うのでびっくりしました。仏壇の巨大さにもびっくりです。
黄色の水引の袋もみたことありませんでした。
投稿: 麻酔科医 | 2011-08-14 03:34