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2011-08-28

NY TimesのJobs回顧特集に見るアメリカのニュースアーカイブの「本気」

JobsのCEO辞任を受けて、NY TimesがこれまでのJobsの歩みを、大量の自社記事、音声もしくは映像とのリンクを貼って、簡潔かつ網羅的に紹介している。
 August 24, 2011 While You Were Out: Apple’s Years With and Without Steve Jobs
元々は2009年1月にJobsが病気療養のために現場を離れると声明を出した時の特集記事に、最近の動きを補足したもののようだ。

日本の新聞だと、せいぜい、ごく最近の記事にしかリンクを張れないだろうけど、NY Timesはすごい。
html版のなかった1984年の記事は、なんと、
 マイクロフィルムをPDF化してリンクしている
のだ。
 伝説のApple Iのカラー写真
も掲載されている。

このNY Timesの特集は
 日本のマスメディアに何が欠けているか
を、如実に示す。すぐに気がついた点だけでも
 1. 自国で開発されたテクノロジーについて、専門的な視点から分析し、読者に分かりやすくかつ概括的な記事を書く訓練をしている記者がいない
 2. アーカイブは「歴史資料」であり、ある時期を過ぎれば、公共の資源として広くアクセスさせるべきという意識を欠いている
 3. ある時期以降のすべての記事は、すぐに探し出せる体制を作っていない
という3つが挙げられる。

1は
 警察回りが「記者のイニシエーション」
という旧来からのやり方以外に何もないマスメディアの人材育成方式に問題がある。
 餅は餅屋という発想がない
わけだ。
 ある専門分野のプロの物書きを社内に置く
ということは考えず
 ブンヤは「サツ回り」さえやっていれば「一人前の記者になれる」という幻想の下
で、
 若い記者の特性を潰していく人材育成
をしているわけだ。
2は
 古い記事は縮刷版やDVDにして「儲ける」
という
 記事は「公共財」でなく「金儲けの材料」
としてしか見てない、経営側の問題だ。
3は、アーカイブの設計とも関連するけど
 電子テクストであれ、それ以前のマイクロフィルムであれ、すべての記事に適切なタグ付ができてない
ことに起因する。

アメリカは歴史の浅い国だ。だからこそ、彼らは
 自分たちが歴史の中にいる
ことに敏感だ。
 現在の営みは、時を経れば「歴史の一部」になる
ということを意識しつつ、常日頃から
 アーカイブの充実を図っている
のである。

たとえば朝日が同じ特集をすぐにできるか? まあ、あっという間にリンク切れにする朝日にそんな度量も、技術も、また
 自分たちが歴史の中にいるという意識
もないだろう。もし、日本の新聞社に何かあるとすれば、一番大事なのは
 目の前の売り上げ、目先の利益
だ。

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コメント

これは、日本のマスメディアに何が欠けているかの問題ではなく、ジャーナリズムの有無の問題だと思います。
 ジャーナリズムとは、「過去」の上に立って、「将来」を見通し、その上で「現在」を記録するわけで、歴史観は必須であります。
 であれば、日本には、ジャーナリズムは存在しないし、ジャーナリストも存在しません。あるのはマスメディアだけで、いるのはブンヤだけです。
したがって、アメリカと比べること自体がアメリカに失礼なんじゃないかとも思います。

投稿: 通りすがり | 2011-08-29 20:56

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