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2011-09-18

高学歴女性は晩婚かつ高齢初産化しつつある

その昔。
大学院カップルには
 D1妊娠コース
と呼ばれる人生設計があった。女性の方がDに上がってすぐ妊娠して出産、Dをしばらく休学して、子どもが1歳〜3歳くらいになったら復帰。その間に男性の方は、自分のD論を仕上げる。
これだとカップル共にまだ20代後半という組み合わせがほとんどだ。
カップルの両親が、手が空いているなら、子育ても応援してくれたりした。
大学院まで行くような自慢の息子や娘のために、50代くらいなら、両親は、手助けが出来た。

ところが今は、Dでも忙しいから、
 結婚・妊娠はD論通ってから
そして、更に
 D持ってるだけじゃ就職できないから、就職してから結婚・妊娠
に移行しつつある。
学位取得直後に就職というのは、まずない。
大抵は、PDが何年かあって、それから就職となる。最近はどうかわからないけど、かつては
 既婚女性となると就職しにくい
という障壁があった。
 研究者として食えないと困るわけじゃなかろう、ダンナに食わせて貰えばいいだろう
というのが、後回しにされるときの理屈である。
そうなると、就職での条件を少しでも有利にするために、結婚は後回しになる。就職できるのは早くても30前後だから、
 35歳以上で妊娠・出産する高学歴女性
は少なくないってことに。
事実、周囲は、
 高齢初産頻発
で、もちろん
 おめでとう!
と言葉を掛けるが、まず妊娠を知った時点で、
 無理しない(させない)でね
と付け加えることになる。
人間は生物だから、生まれてから30年も経つと、女性の場合、生殖能力は確実に衰えるし、体力も落ちてくる。卵子が老化して妊娠しにくくなる上に、産道の組織も経年劣化で固くなってくるし、子宮筋腫も出来やすくなるから、出産も20代の頃とは違ってくる。
妊娠しにくく、お腹の中で育てるのも難しくなり、出産時の危険も増える。35歳以上では、赤ちゃんの染色体異常についても、考えなければならない。
妊娠適齢期は、ほぼ一定していて25歳前後が適切であり、
 どんどん遅くなるばかりの就職適齢期と並行して遅くなることはない
のだ。今の30代は見た目は若くても、生殖能力は以前の30代と変わらず、確実に老化している。
そんなわけで、
 30代で妊娠したら、次の妊娠はないかもしれない
と常に覚悟しておかないといけない。もし、いまお腹にいる赤ちゃんを諦めたら、
 次の子どもを妊娠できるかどうかはわからない
のだ。

母親が
 高齢初産
となると、これまた当然ながら
 母親・父親になる人たちの両親もかなりイイ年齢
だ。両親が健康でいてくれれば
 祖父母に孫を預ける
こともできるのだが、場合によっては
 出産と親の介護がいっぺんにやってくる
ことだってある。

いまのアカデミックキャリアは
 業績第一
で、予想のつかないトラブルが起きても、周囲に手助けしてくれる人がいない場合の子育ては、きわめてしんどい。
 子どもを取るか、自分のキャリアを取るか
となってしまえば、生まれてきた子どもに罪はなく、多くは子育ての負担を重く負ってる側が、キャリアを諦めるようなことにもなる。文系は、個人商店みたいなものだからまだしも、チームで研究する理系だと
 戦力にならない
という評価はダメージになる。

高学歴カップルがもし、子育てで陥る落とし穴があるとすれば
 子育ては、努力に比例しない点
だろう。自分たちは努力しているはずなのに、子どもは何かと言えば熱を出したり、ケガをしたり、場合によっては入院することさえある。
 何が悪いんだろう
と思っちゃうのが、受験エリートの悲しいところで
 何も悪くない
のだ。誰のせいでもない。ただ
 自分だけで裁量できていた世界は、子どもを持つことで終わりを告げている
ということなのだ。

子育ては
 痛いことの連続
である。母親であれば、まず、出産までにいろいろ痛い思いをし、生まれれば生まれたで、子どもの命を守るために、さらに痛い思いをする。
 痛くても、子どものために笑ってあげられるかどうか
は、その人の置かれた環境によって変わるだろう。

点数や業績がモノを言っていた環境と、子育ては異なる。
 考えすぎないこと
が、かつての受験エリートで、30過ぎてから子どもをもった人たちへのささやかなアドバイスだ。

そうそう、元気な産科医LUPO先生、まさに○高で赤ちゃんがおできになったそうで、おめでとうございます。
こっそり始めた妊娠経過日記は、アクセスが増えすぎたとのことなので、リンクは貼らずにおきますが、密かに応援しています。

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コメント

子供ができないというならまだしも、○高等の事情で、出産をあきらめる人が増えてきているのではないかと、思ってとても残念です。

高学歴な女性は、それだけの遺伝子を持っていると思うので、そういう人たちが子供を生まないという選択肢を取るのは、人類にとって優秀な遺伝子を捨てることになるのだから、非常にもったいないと思ってしまうのですが。

投稿: ゆぶたん | 2011-09-18 18:52

うわ、ありがとうございます〜。
こわごわかつ大胆に日々を送っております。
マル高妊娠出産頑張ります。

投稿: LUPOです | 2011-09-19 01:11

ゆぶたんさん、LUPO先生、コメントありがとうございます。

ゆぶたんさん、まさに高学歴で有職の女性ほど出産しにくくなってるので、これは国家的戦略として、どうするのがいいか、ちゃんと考えないといけないんですが
 女はバカで家に居るのがいい
と官僚と政治家の皆様は考えているのではないかと思われるくらい、冷遇されていますね。

LUPO先生、blogを拝読しますと、大事な時期ですのに、お腹の大きい状態の先生が酷使されそうなのではないかと憂慮しております。
どうかご自愛下さい。

投稿: iori3 | 2011-09-20 07:44

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