第63回日本中国学会@九州大学 10/8-10/9 未発見の歐陽脩書簡の発掘
今回の圧巻は
未発見の歐陽脩書簡集の発掘
だった。発表要旨。
3―7 歐陽脩の書簡九十六篇の発見について
東 英寿(九州大学)今日に伝わる歐陽脩(一〇〇七~一〇七二)の作品には、『詩本義』、『五代史記』(新五代史)、『太常因革礼』、『新唐書』、『崇文総目』等があり、これ以外の彼の詩文は全集『歐陽文忠公集』百五十三巻に収録されている。清代の歐陽衡が嘉慶二十四年(一八一九)に刊行した『歐陽文忠公全集』では、それまでの全集に含まれていなかった歐陽脩の散文七篇(唐順之『荊川稗編』に収められていた「本末論」、「時世論」、「豳問」、「魯問」、「序問」の五篇、及び「與黄謂」、「與李吉州」)を見つけ出し、あわせて収録している。
南宋時代の慶元二年(一一九六)に、周必大によって歐陽脩の全集『歐陽文忠公集』百五十三巻が編纂されて以降、明・清時代から現代に至るまで全集は何度も刊行されているが、清代に歐陽衡が新たに七篇の作品を見つけたことを除けば、全集に収録されている詩文数に大きな変化はなかった。歐陽脩は千年以上前に生まれた人物であり、もはや一般には知られていない新たな作品が出てくる余地はないと思われていた。
ところが、発表者は今日の歐陽脩の全集には全く収録されていない歐陽脩の書簡九十六篇を見つけ出すことができた。この九十六篇の発見には、南宋時代における『歐陽文忠公集』の編纂とその後の流伝状況が大きく関わっている。
そこで、本発表では、南宋における『歐陽文忠公集』の編纂の経緯とその流伝状況を考察し、どのようにして九十六篇が今日に知られないままに伝わってきたのかということを明らかにしたい。その上で、これまで全く知られていなかった歐陽脩の書簡九十六篇を紹介したい。
これは
日本に伝わる、旧金澤文庫本(現・天理大学所蔵)の『歐陽文忠公集』には、周必大の編纂以後に民間等から発掘されて新たに収められた歐陽脩の書簡が補刻される形で刊行
されたのだが、南宋末期以降の中国国内の混乱で
1. 旧金澤文庫本と同刻の本は中国で失われ、それより以前に編纂された、より少ない書簡を収めた宋刻『歐陽文忠公集』が明の朝廷の図書館に遺された
2. 仁宗が皇太子の頃、少部数を翻刻=明(永楽14 1420年)内府本。明内府本は現在佚書。明内府本はさらに弘治(5年 1492)重修本に継承され、現在通行する最善本とされる『歐陽文忠公集』に。
3. 明の朝廷に遺されていた「宋時刻本」=現・(北京)国家図書館本
という経過を辿った。
このため、
日本人が中国でその当時購入することが可能だったくらい、中国では流通していた筈の旧金澤文庫本が、孤本となって日本に残ってしまった
という話。で
旧金澤文庫本に残っていた書簡部分は、当該本が国宝指定のため、なかなか調査が簡単にできず、「付加された書簡部分」が今日まで気づかれなかった
のである。
こんなことって、あるんだよね、という典型的な発見例。
東先生の発表では
南宋では、個人の書簡を集めるのが流行した
とのことで、周必大が集めきれなかった歐陽脩の書簡が、全集編纂以後に少しずつ、各地の愛好家のコレクションから集められて、少なくとも二度、周必大編纂の全集に補刻されている。最初に補刻された宋刻の増訂版は明の内府に収められたこともあって中国に残ったのだが、二度目の補刻で金澤文庫に入った分は、南宋末以降の混乱で金澤文庫本との同刻本が失われ、忘れ去られたという次第。
東先生は、文献学的な例証を挙げて
旧金澤文庫本に新たに補刻された歐陽脩の書簡が日本の偽刻でない
ことも明らかにされた。
というわけで、
中国では大騒ぎ
で、とうとう
新発見の96篇の歐陽脩書簡のみ、まず中国で発表
することになったとのお話だった。
10/5には
新華社電
が中国を駆け巡った。こちらは繁体版。
日本發現96封未入全集的歐陽修書信
2011年10月05日 10:13:24新華網大阪10月5日專電 日本九州大學研究生院教授東英壽日前發現了中國北宋著名文學家歐陽修的96封書信。這些書信收録于奈良縣天理大學附屬圖書館館藏的《歐陽文忠公文集》内,未被編入明代定本全集。
歐陽修全集編纂于其逝世後,1196年的第一版是木版印刷品。天理大學館藏的全集是13世紀鎌倉幕府所設“金澤文庫”為收藏而從中國採購的,已被指定為日本國寶級文物。
這些書信多為歐陽修寫給北宋政治家王安石等友人的境遇之談、感謝函等。東英壽認為,此次發現的書信是再版時新増的。
據共同社報道,東英壽為進行木版技術研究,對天理大學館藏全集、中國北京的國家圖書館館藏全集、日本宮内廳藏書進行了比較。三者此前被認為内容是相同的,但新發現的這些書信沒有收録在明代定本全集中。
報道援引東英壽的話説:“時隔千年在日本新發現中國偉大人物的書信,著實令人驚喜。”
普通
歐陽脩の未発見資料が今の時代に出てくる
とは思わない。
久々に、ぞくぞくするような凄い発見であり、素晴らしい学会発表を伺った。
でも、中国学会賞って若手奨励の賞だから、今回の発表はたぶん対象外になっちゃうんだよね。
おまけ。天理大学蔵の旧金澤文庫本『歐陽文忠公集』解題。
やまとの名品 欧陽文忠公集(PDF)
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