« 第63回日本中国学会@九州大学 10/8-10/9 未発見の歐陽脩書簡の発掘 | トップページ | 博多駅筑紫口のエキサイド1階 »

2011-10-10

第63回日本中国学会@九州大学 10/8-10/9(その2) 韓国に遺されていた元『至正條格』に記された元代の禁書目録

もう一つ、大変面白かったのが、二日目の特別講演。金文京先生の
  韓国の中国学研究の現状紹介
だが、
 韓国に眠っていた漢文資料
についての部分が実に興味深い。
これまで
 元は、比較的寛容な文化政策を行っていた
というのが通説で、
 禁書もそれほどなかった
と思われてきた。ところが
 実際には、占いの書物を中心に、明でも禁書にならなかったような書目が禁書となっている
ことが、韓国に残っていた
 至正條格
から、分かったのである。
金先生のレジュメによると、
 『至正條格』は、元代最後の法令集
で、韓国の個人蔵だったものが、韓国学中央研究院に寄託されていた。2002年に、同研究院の安承春研究員が発見し、2007年に金文京先生と金浩東氏・李介奭氏によって
 校注『至正條格』(影印篇・校注論文篇 韓国学中央研究院)
として出版された。『至正條格』の特色は、実際の法律運用例である
 断例の部分が残っている
ことで、その点だけを取っても貴重な資料である。
その断例の一つに、
 卷二 職制 二十一 隱藏玄象圖讚
として
 禁書五十種
が挙げられている。この中には
 開元占經
など、所謂「占いの書物」が大量に含まれていて、実際に講演の後に、金先生が見せて下さったのだけれども
 乙巳占等、見慣れた書目
が列挙されていた。これら占いの書目は
 明代には禁書に含まれてないものがある
ので、
 元は「禁書」が緩かったというこれまでの通説は誤り
であるとのことだ。

これは意外でしたね。

なお、金先生が手がけられた
 校注『至正條格』
は韓国では買えるみたいだけど、日本だとどうかな?

|

« 第63回日本中国学会@九州大学 10/8-10/9 未発見の歐陽脩書簡の発掘 | トップページ | 博多駅筑紫口のエキサイド1階 »

コメント

現代の感覚では、占い本は非実用書でしょうが、近代科学を含む西洋文明が世界を席巻していくまでは、日本も中国も西洋も、高度な占術書は高度な軍事機密扱いで、しばしば弾圧されて来た歴史があります。

反元的な漢民族が征服民族支配に対して占術を使って対抗するは当然であり、それを高度な占術を自分の文化として持たない元が恐怖し弾圧するのは実務的に当然のことで、『比較的寛容な文化政策』と占術書の弾圧は矛盾しないのではないでしょうか。

投稿: Iwata Kazuo | 2011-10-11 11:43

ちょっとすみません。横やりで失礼します。

「『比較的寛容な文化政策』と占術書の弾圧は矛盾しない」かどうかはさておき、「高度な占術を自分の文化として持たない元」という理解はいささか問題があるかと思います。占術と天文・暦法学を含めた元代の術数学の水準については、山田慶児「授時暦への道」(同氏編『中国の科学と科学者』同朋舎、1978年)が詳細かつまとまっております。ご一考くだされば幸いです。

ここでご紹介されている金先生のご指摘、当方にとっても大変ありがたい情報でした。目下禁書政策と占卜書の関係を改めて洗い直しているところだったので、でしゃばってしまいました。お目汚しお詫び申し上げます。

投稿: 佐々木聡 | 2011-10-15 13:44

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第63回日本中国学会@九州大学 10/8-10/9(その2) 韓国に遺されていた元『至正條格』に記された元代の禁書目録:

« 第63回日本中国学会@九州大学 10/8-10/9 未発見の歐陽脩書簡の発掘 | トップページ | 博多駅筑紫口のエキサイド1階 »