東博平成館で清明上河図を見る
東博平成館で新年から開かれているのが
<特別展>北京故宮博物院200選 | 東京国立博物館 平成館
だ。目玉は
1月24日まで出陳される清明上河図
である。少なくとも、中国学に足を突っ込んでいる人間で、清明上河図を知らなかったらモグリだ。上記説明にもあるけれども
中国でもあまり現物を公開してない
というところがポイント。当然
海外へ出すのは今回が初めて
である。
清明上河図を知ったのは、身体をこわして北大で1年間研究生をやっていた頃、中野美代子先生の授業で、
清明上河図を読む
という何回かがあったのだった。緻密に描かれた中国絵画のディティールを語らせたら、右に出る者がいないと思われる中野先生が授業で取り上げるわけで、今回、東博の上記サイトで拡大されているようなシーンや、あるいはそれぞれのシーンの文献的な跡付けが、毎回、ずっしりと重い大量のプリントに拡大され、示されていた。大体、中野先生は準備してこられたプリントの説明をし終えることはなくて、その内六割でも、言及されれば多い方ではなかったか。
今でも強く印象に残っているのが
城壁の門をくぐり抜ける駱駝たち
である。北宋の開封の情景がまざまざと目に浮かぶような、中野先生一流の語り口の授業を拝聴しながら
いつか、清明上河図の舞台とされる汴京=開封に行きたい
と思っていたのだった。
2005年だったか、開封に調査に出かけたとき、宿泊したホテルの売店に、比較的大判の「清明上河図」複製があったので、買った。ちょっと昂奮していたらしく、珍しく言い値で買ってしまったのだが、それでも日本などで買うよりは遙かに安かった。今考えると、それは
原寸大
の複製だった。
調査に一区切りを付けて、都立中央図書館を後にすると、広尾からそのまま日比谷線で上野へ。夕暮れ間近い上野の雑踏を、東博めがけて早足に進んだ。
入り口で尋ねると
清明上河図待ち時間は60分
という。すぐに並んだが、その後来た人たちに
五時までに並んで頂ければ、ご覧頂けます
と説明しているので、考え直して会場を駆け足で見る。黄庭堅や米芾[艸市]など、時間があればゆっくり見たい優品の前を一瞥で通り過ぎるのはもったいなさすぎるのではあるが。
20分足らずで会場を一回り。途中、専用の待ち行列を作って見せている清明上河図前では、かつての上野のパンダ並みに
歩きながら見て下さい
と声が掛かっているのが聞こえている。
さて、清明上河図の行列の最後尾に着くと
待ち時間は120分
と説明される。時刻は午後四時四十分前後。家族が風邪で寝込んでいるので、連絡のメールを入れ、観覧の許可を得る。
で。
閉館間近の清明上河図待ち行列
は
チキンレース
の様相になってきた。120分待ちというので、夕食の支度などが気になってか、行列を離れる人が何人もいる。もっとも、行列には、ゆったり構えている高齢者の方々も並んでいらっしゃるので、それほど短縮されるとは思えない。
その内
本日は五時までです。図録も五時までにお求め下さい
とか、
東博は正気か?
と思わせるような、何ともなアナウンスが入るのだが、
五時までに並べば、清明上河図を見られる
と言ってるんだから、売店は開けておくのがスジじゃないのか、と見やると、指示があったのか、五時を過ぎても、売店が閉められる気配はない。まあ、一安心。
結局、
閉館直前に行列に並んで、清明上河図を見られたのは50分後くらい
だった。どんどん、ベルトコンベア方式で観覧客を進めていくので、思ったよりは時間はかからない。もちろん
観覧できる時間も極めて短い
ので、
清明上河図の予習
をしておくのが望ましい。もったいなかったのは、
原図の上に掲げられている複製で位置関係を確認している人が少なからずいた
ことで、
是非、原図のみに集中して頂きたい
と思う。
一つ一つの描写は極めて細かく、それもかなり小さな面積に展開されている。
絵巻に凝縮された北宋の都市の空気
は、原図を見なくては感じられないだろう。
1/8にはNHK「日曜美術館」で、清明上河図を取り上げるはずなので、
更に観客が増える
と予想される。
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