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2012-02-17

NHK クロ現「産みたいのに産めない ~卵子老化の衝撃~」@2/14放映 卵子老化も問題だけど、本当に問題なのは「育てる側の体力が落ちること」

まだ韓国にいるとき、NHKの国際放送でクロ現が始まった。それがこの
 「産みたいのに産めない ~卵子老化の衝撃~」
だった。番組内容。


「卵子は老化する。35歳を超えると妊娠が難しくなる」。医師の言葉に、不妊クリニックのセミナーに集まった夫婦たちに動揺が走る。今や、不妊治療・検査を行ったことのある夫婦は、6組に1組。女性の社会進出につれ晩婚化が進み、35歳を過ぎて不妊治療を始め、初めて「卵子の老化」を知る人が増えている。平均寿命が80歳を超え、40代の“モテ期”や“美魔女”など、老いすらもコントロールできるようになったかに見える現代。しかし、今も老いを克服できないのが、ヒトの卵子だ。こうした中、若いうちに卵子を凍結し、いつか出産をという未婚女性も現れ、医療現場では、卵子の老化を「止める」研究が進む。しかし、卵子の時を止めれば、問題は解決されるのか?これまで知られてこなかった卵子の老化と、女性達を取り巻く現実を通して、「適齢期に産める社会」に必要なものは何か考える。

出演者
杉浦 真弓さん(名古屋市立大学大学院医学研究科教授)


てか
 卵子老化の衝撃
って何だよ、1976年頃に朝日新聞科学欄で生殖医療についての連載をやっていて、それで
 卵子老化と不妊について
は、読んだぞ。今から36年前から
 知ろうと思えば、いつでも知ることが出来た情報
であり、たぶん、この
 卵子老化の衝撃
は、
 NHKに多数存在している「高齢独身女性」もしくは「高齢未出産女性」の「受けた衝撃」
というのが本当のところだろうと思う。てか
 NHKの職員は「男女とも自分は年を取らない」と勘違いしている手合いが多い
というのが偽らざる印象だ。
 地位や金さえあれば「生物学的な時計は無視できる」と信じていた
んじゃないのか。
NHKは
 女性に優しい職場
である。大学時代の同級生がNHKで働いているのだが、40代半ばで二人目の子どもを妊娠、切迫早産となり、長期休職して出産、復職しようとしたら、赤ちゃんが重い病気であることが判明して、それからは闘病を支える日々が続いた。残念ながら、手を尽くしたけれども、赤ちゃんは助からなかった。
その後同級生は復職している。かなり責任のある地位でも、職員が出産・育児するためには休業して、出産・育児に専念できるようできるよう、取りはからってくれるのがNHKである。

NHKは、もともと女性保護の手厚い職場である上、職業柄、中には
 いつまでも若い、自分は不可能を可能にする特権的な女、まだ子どもはいないけど、閉経するまではいつでも出産OK
と勘違いする人間がいてもおかしくない。

当然、番組の取材対象は、
 35歳以降、卵子の老化で妊娠しにくくなることを「知らなかった女性」に焦点が当たる
んだけど、それって
 本当に「そういう、今時情報に疎い人ばかり選んだ」
んじゃないかと疑っている。
 人間は生物
だというのは、厳然たる事実だ。
 人間の死亡率が100%
というのもそうだ。誰しもいつかは死ぬ。

この世にひとたび生まれ出たものは、否応なしに、その最期、つまり死に向かって進まざるを得ない。
死ぬまでに、
 生物学的な成果、すなわち子どもをこの世に残すことが出来るかどうか
というのは、あらゆる生物の課題であり、
 すべての同種の動物が子孫を残せるわけではない
ことも、これまた生物学的事実だ。人間だけが例外というわけにはいかない。秋になると、鮭が群れをなして生まれた川を遡り、多数のオス達が血みどろになって一匹のメスを争うのも、この
 自分の遺伝子を残せるかという課題をいかに解決するか
という物語の一コマに過ぎない。産卵を終えると、彼らの一生は終わる。川は死んだ鮭で溢れる。

進化した生物である人間は、その進化の過程で、いろいろなものを犠牲にしてきている。直立歩行が、
 難産
を生じやすくしているのもその一つである。
一方で、現代日本が
 女性が子どもを産みやすい社会でない
ことも現実である。いくらキャリアを積もうとしても、社会人であれば、20代半ばの、
 生物としての人間がもっとも妊娠出産に適している時期をみすみす妊娠・出産・育児で棒に振る
ことは、キャリア人生が早期に終了してしまうことを意味する。これが、大学院生で、親が元気であれば、まだ25歳前後に配偶者を得て、子どもを産み育てるために、1-3年の「休学期間」を作ることも可能かも知れないのだが、残念ながら、昨今のアカデミック市場の冷え込み振りは
 女子院生が出産するような余裕
を与えない。むしろ
 それなら、学問を続けなくてもいいでしょう
と引導を渡される嫌いすらある。そもそも
 配偶者がすでにいる女性研究者が、常勤職に就くのは、独身の女性研究者よりは難しい
傾向があると常々感じている。
 ダンナがいるなら、常勤じゃなくてもいいじゃん
というのが、世の傾向だ。男性社会であるアカデミックの世界では、
 妻を働かせて、食わせてもらった男性研究者の話題
には事欠かないのだが、
 夫がいる女性研究者の就職
については、冷たい。

そんなこんなで、あるいは生活のために、あるいは目標のために、
 25歳でなんて子どもを産めなかった女性達
がいるのは確かだ。いざ、生活が安定し、研究者なら常勤職を得て、配偶者を見つけて結婚すると
 高齢初産
ということになる。
ちょうど、周囲がベビーブームで、同じ研究班の3人が3人とも子どもを授かったのだけれども、いずれも、配偶者はこの高齢初産になったかなる直前くらいの年齢であり、30歳はすでに超えている。

30歳を過ぎると、何が問題かと言えば
 子育ての体力が著しく低下する
ことである。仕事をしている女性ならば、30歳前後で、がくんと体力が落ちて、無理が利かなくなる瞬間を知っている。仕事なら、自分一人で調節すればまだなんとかなる。
しかし、子育ては
 子どもが相手
である。子どもはお腹にいたとはいえ、もっとも近しい他人であり、決して親の思い通りにはならない。もちろん、中には、周囲に
 この子は親助けやなあ
と感心されるような、手のかからない子どももいるとはいえ、それは例外。生まれて2ヶ月は2時間、3時間おきに起きて授乳しなければならない。育ち具合によっては、夜泣きが酷かったり、夜の授乳間隔がなかなか短くならなかったりもする。保育園に預けると、感染症をもらってきて熱を出し、家で看病をしなくてはならなくなる。
 自分の都合さえつけばなんとかなった「オトナだけの生活」
とは違った向き合い方を迫られるのだ。

子どもの誕生は決してゴールではない。
遅くに子どもを授かると、そこをうっかり忘れがちになるが
 誕生からが子どもの人生の始まり
なのである。子どもが独り立ちできるまで、責任をもって育てられるか。親の「理想」と子どもの現実が齟齬したとき、親が、子どもに譲ることができるのか。それとも
 世間体
を気にして、できもしないことを子どもに押しつけるのか。
高齢の親たちは、それまで
 自分たちが割に思い通りに過ごしてきた過去が長かった
ので、つい、そのことを考えないのだけれども、実は
 高齢の親の問題
はそこにある。比較的若く子どもをもった夫婦の方が、まだ
 子どもに譲ることできる
ことがあるのは、長年の習慣ができあがってしまってからだと、それを変えていくのには相当な努力が必要だからだ。それに
 若い内は体力がある
から、多少の無理は利く。30歳を過ぎ、だんだんに無理の利かなくなっているところへ
 すべての時間に闖入してくる「子ども」に適合できない
場合、さまざまな悲劇が起こることもあるのだ。

高齢出産の問題は実は
 その後の子育てのフォロー
にある。もう、実の親は年老いすぎて、孫の世話は出来ない。場合によっては、親の介護と、子どもの世話と、両方をしなくてはならないのだ。

できるならば、
 子どもの両親以外に子どものケアが出来る大人が何人かいる状態
でないと、年齢が上になればなるほど、高齢初産の子育てはかなり辛くなるだろう。
もちろん、ここまでの話は
 子どもが健康
であったときの話で、子どもが先天的・後天的に障碍をもったり、重い病気になったりすれば、さらにしんどい話になっていく。

不妊治療でありがちなのは、
 努力したし、お金もかけたんだから、「それに見合う立派な子どもが生まれる」
という間違った考え方をする人達が出てくることだ。
 子どもは、生まれるまでにかけたお金の多寡とはまったく関係なく生まれる
のであり、どんな子どもであっても引き受ける覚悟がなければ、これまた辛い話になっていく。

そうした「辛い話」はクロ現ではスルーしていたけれども
 生まれた後、どう育てていくのか
が一番問題なのだ。

まあ、たぶん
 NHK職員の俸給だと、高価な不妊治療を何度も受けられ、生まれてからは、ベビーシッターを個人的に雇える程度の余裕
はあるから、そこまで気が回らないんだろうね。

取材PDが誰だか知りたいよ。

あと、どういう事情だったかはわからないけれど結果的に子供を持たなかった国谷さんに、この話題をやらせたのは、ちょっとね〜。国谷さんには、しんどい番組だったんじゃないのかな。

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コメント

卵子の老化とか以前から分かっていた事項でも、先日の女性国会議員のお涙頂戴初老の超高齢出産番組が民放で放映されてしまったから、早急に現実を突きつけて女性議員のエゴへの同調を打ち消す必要性があったんでしょう。

投稿: Dad | 2012-02-18 00:02

体力もそうですが、財力が続きません。
40才で出産すると、こどもが小学校入学時に46才。大学入学が58才になります。
一浪か2浪でもしようものなら、こどもが医師国家試験に合格するのは60才近く。多額の学費が必要になる頃、定年を迎えるわけです。常勤の職を長くやっていれば、退職金も年金もあるかもしれませんが、多額の学費をかけたこどもが医者になれなかったら目も当てられません。親子そろって路頭に迷います。さらに、歯科医の前例もあり、医者にしたからって、親を扶養してくれるほどの収入があるかどうかもわかりませんね。

投稿: 麻酔科医 | 2012-02-18 17:46

すいません、40才でこどもが生まれると医師国家試験に合格するのは、最短で、64才、ちょっと浪人や留年したら70才です。

投稿: 麻酔科医 | 2012-02-18 21:03

または、大学合格するのが、60才、、、。医学部卒業が66才で初期研修終わるのは、70才ちかく。
孫の面倒みるには、ちょっと大変な年齢です。

投稿: 麻酔科医 | 2012-02-18 21:06

親の知人を見てると50台前半で一定数の方が亡くなりました。
「平均寿命は80歳。そんなことを考えたら何もできない。」と言われそうですが
50代で亡くなることは非常に珍しいことではなく、時々あることだと思います。

40歳で子どもを産んで50歳で亡くなると子どもはまだ小学生。
たとえ遺産があったとしても非常に不幸だと思います。

投稿: isola | 2012-02-19 18:49

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