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2012-02-17

著作権切れの古典語(ギリシャ語・ラテン語・梵語)文法書・辞書がオンラインで引けたり落とせたりする件

くるぶしさんのblog「読書猿Classic: between / beyond readers」の2/12付記事
 2012.02.12 ここまでできる→ネットで無料で読める世界の語学教科書(古典語篇)
を、海外調査中に発見、さすがに海外調査中は落とせないので、ともかくブックマークした。
で、先ほど、めぼしいもの、必要なものをいくつかダウンロード。
紹介されているのは
 ギリシャ語・ラテン語・梵語
のオンラインで使えるor落とせる、教科書や辞書のたぐい。

Liddell & Scottなんてあるじゃないか! 高校の倫社の先生が、Loebでプラトンやらアリストテレスを高校生に読ませる授業をしていて、Liddell & Scottの該当箇所のコピーも一緒に配られたりした。西洋古典は大学でやらなかったので、Liddell & Scottを自分で買うことはなかったが、高い辞書だよね。その代わり、梵英は2種類、巴(パーリ)英は2種類、蔵(チベット)英は2種類、それとBuddhist Hybrid Sanskrit Grammar and Dictionaryと、印度学の辞書を揃えなくてはいけなかったからな。どれも高い辞書だ。パーリ語は、英語の教科書だったような記憶がうっすらあるけど、何使ったんだっけ? Wilhelm Geigerの"A Pali Grammar"だったかな。
オンラインで本体を落とせるだけではない。なんと、日本で大久保克彦さんという個人の方が
 EPWING for the classics
というサイトで、各種ラテン語・ギリシャ語辞書のEPWING化をしてくださっている。もとになっているデータは、
 タフツ大学のPerseusプロジェクト
からのものとのこと。このタフツ大学のPerseusプロジェクトは、各種古典文学(要するにギリシャ語ラテン語)のテクストを中心に、電子化して公開している。一般にも知られているテクストとして、ラインナップされているのは


Popular Texts

Caesar, Gallic War (English, Latin)
Catullus, Carmina (English, Latin)
Cicero, In Catilinam I (English, Latin)
Vergil, Aeneid (English, Latin)
Herodotus, Histories (English, Greek)
Homer, Odyssey (English, Greek)
Plato, Republic (English, Greek)
Tom Martin, Overview of Classical Greek History from Mycenae to Alexander (English)


なんて辺り。ラテン語をがんばれば、カエサル(シーザー)の『ガリア戦記』を読めるようになるかも。ギリシャ語なら、ホメロスの叙事詩やプラトンの著作、そしてヘロドトスの『歴史』もいけるぞ。

驚いたのは、梵英の定番辞書
 M. Monier-Williams, Sanskrit English Dictionary
をrwさんがEPWING化したものが公開されていることだ。
 M. Monier-Williams, Sanskrit English Dictionary JIS X4081(EPWING)化用 ツールキット
便利な世の中だ。前は、オンライン辞書を使ってたけど、手元にある方が便利。

EPWINGビューワーは、Mac用の
 コトノコ2.1a12
を導入してみた。

古典語というと
・辞書や教科書が高価で入手が難しい
・文法が死ぬほど難しい(たぶん Skt. > G. >L. の順)
・3回生から鬼のように勉強しても、世界的に研究者としての売れ先はほぼ限られていて死屍累々
という悪条件のために、学生が来ないので有名なのだが、少なくとも、この3つの悪条件の一つ
・辞書や教科書が高価で入手が難しい
というのは、近年、webでこのような公開が進んでいるので、かなりマシになった。

大体ですよ、印度学などは
 19世紀末に出た教科書を今も大事に使っている
わけで、わたしが2回生でSkt.初級を取ったときも
 なんで前世紀の教科書なんだ
と思った。いまや21世紀だもんな。ちなみに、くるぶしさんが紹介されているSkt.の教科書や文法書、辞書の半分は、学部の内に買うことになっていた。初級はPerry+辻直四郎『サンスクリット文法』(岩波全書)+鎧さんの辻文法用インデックスの3点セットで乗り切る。3回生になるとLanmanから始まる。
 Lanmanは本文をコピーして、それをルーズリーフor大学ノートに、何行おきか空白をあけて切り貼りをする
ところから、授業の準備となる。Skt.は単語ごとに分かち書きになってないから、自分で単語の切れ目を見つけて、分析してから辞書を引く必要がある。この
 ノートにコピーを切り貼りする
というのは、この後、かなり長い時間続く。才能のある人だと、そのままで楽々読めるようになるのが早いけど、違う分野のテクストを読み始めるときは、大体、この手の切り貼りを作って、まずはタームに慣れる。その内、勘が付いてくるけど、やはり見慣れないタームや、特殊な用例があちこちに見つかるから、この
 切り貼りノート
は、習慣になる。
そういえば、永ノ尾さんが、大学へ向かう電車の中で
 1日1ページ、マハーバーラタを読んでいた
という話を聞いたことがあるが、それは永ノ尾さんだからできたことで、普通の院生だと、とてもじゃないけど、
 まずは単語を分解する
ところから始まるから、電車で気楽にコピー1枚分だけ読み通すのは無理。

で、これらの書物は、
 注文してもすぐ来ない
のが定番で、インターネット通販が発達する以前は、研究室で学期始まりに、まとめて注文を出してもらう習いだった。
前にも書いたけど、印度学の卒論に必要な辞書を、京大生協の丸善に頼んだら、当然のように全然送られてこなくて、手元に届いたのは、卒論締切をとっくに過ぎてからだった。

そういうアホらしい、しなくてもいいような、くだらない苦労が減っているということだけでも、internetは偉大である。

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コメント

あなたは面白い方ですね。感心しました。ありがとうございました。こんな風にして語学は誰かの手により、受け継がれていくんだなと思いました。私はラテン語の前に、サンスクリットやらなきゃならないのに、英語のテキストわかりたいがために今はラテン語を初めて検索し始めた者です。励みになりました。ありがとうございました。

投稿: リンゴ | 2015-10-15 13:20

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