特別講演会 馮錦榮香港大学教授「Galileo and Jesuit Science in 17th Century China」@3/27 人文研
中哲の先輩、馮錦榮香港大学教授の講演会が、昨日人文研で開かれた。
馮さんは、わたしが中文3回生の時の中哲のD1で、基本的に
3回生/M1/D1
という組み合わせは、研究室でよく顔を合わせ、また、D1はM1の、M1は3回生の面倒を見る習慣だったので、結果的に3回生はD1とM1の先輩には特にお世話になる。わたしは、漢代の勉強をしていたので、中文と中哲と両方の授業に出ていた。で、調べ物等で中哲研究室には時々足を運んだ。その頃の中哲研究室は倫理学と一つの研究室を半分に区切って使っていて狭かったのだが、行くと、たいてい机の一つで、馮さんが勉強していた。馮さんの修論は、規定枚数50枚なのに
本文50枚・注50枚・補論50枚
の150枚を、中国語で提出した、というので、有名だった。日本語と中国語では、圧縮率が違い、全文中国語で書くと、ほぼ1.6倍の内容になる。だから、馮さんの修論は、相当な分量なのだ。
馮さんの研究の特徴は
それまで誰も気がつかなかった文献をアーカイブから拾い上げる卓越した能力
にある。昨日の講演は2本行われ、1本目は英語、2本目は中国語だったのだが、どちらの発表でも
これまで誰も気がついてなかった文献
が大量に駆使されていた。いつもながらのことなのだが、凄い。文献を博捜するため、香港・中国・台湾はもちろんのこと、日本や欧米の各地の図書館に赴き、貴重書の中から、宝を掘り当てるのだ。最近は更に韓国も射程内だ。韓国ではいま漢字を自由に読み書きできる韓国人が激減しているので、中国・香港・台湾・日本の研究者は、漢文文献を調査するチャンスである。埋もれている文献がまだまだあるはずだ。
そして、今回は
文献を博捜する能力が文物にも向けられた
ので、北京や台湾の故宮博物院にある
天文観測機器
が、たくさん紹介された。康煕帝の天文観測機器はフランスに発注されたもので、パリの職人とその工房のサインが入っている。美しく機能的なそれらの天文観測機器を見るだけでも楽しいのだが、そうした機器の原理やガリレオとの関連が、イエズス会の活動を媒介として、見事に説明されるのを聞くと、明末清初の科学技術や科学知識の広がりが手に取るように見えてくるのだ。ラテン語で書かれた科学書が、中国のこうした天文観測機器や、漢訳された宇宙論に反映され、それらは後に韓国や日本にも及んでいるのを、馮さんが丁寧に解き明かしてくれた。
馮さんは、まだまだ論文の「ネタ」があるそうで、これから大量に明末清初の中国の科学史に関する論考を精力的に発表する予定である。とても楽しみだ。
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コメント
昨日家族旅行で台湾に行き、以前紹介があったお茶屋さんに
行きました。色々試飲させてもらって安心して買えました。
ありがとうございました。茶王も買いました。確かに
おいしいです。
投稿: こん | 2012-03-28 22:46