重い熱性痙攣は癲癇の原因に 重い熱性痙攣の治療薬の大半に癲癇を起こしやすくする恐れも@東大の研究
子どもが発熱して、ひきつけを起こす。所謂「熱性痙攣」だが、松田道雄の書いた『育児の百科』では
熱性痙攣は心配しなくてよい
と書いてあったように記憶する。その代わり
熱がなくて引きつけるようなら、医師に診せるように
と書いてあった。
でも、数はごく少ないのだが
熱性痙攣から癲癇
という子どもは何人か知っている。そうした子どもは
運が悪い
と片付けられていた。
赤ちゃんが熱を出して引きつけると、本当にびっくりする。
でも、恐らく、祖父母の世代は、
熱があって引きつけてもそんなに心配ない
という対応を取るかも知れない。それが「常識」だったからだ。
その「常識」を覆す研究結果が出た。
NHKより。
重い熱性けいれんで「てんかん」7月16日 5時38分
幼いときにインフルエンザなどで重い熱性けいれんになると、脳の一部で神経回路が発達せず、てんかんを発症しやすくなるとする研究結果を、東京大学のグループがネズミを使った実験を基にまとめました。
東京大学薬学系研究科のグループは、てんかんのうち、脳の海馬と呼ばれる部分で神経回路に異常が生じているタイプに着目し、ネズミを使って発症の仕組みを調べました。
神経回路が発達するのは、インフルエンザなどで熱性けいれんになりやすい幼い時期のため、生まれて間もないネズミ16匹に人工的に重い熱性けいれんを起こしたところ、成長後、いずれも脳波に異常が現れ、半数でてんかんの発作を確認しました。
さらに、海馬では、成長とともに移動する神経細胞が特定の神経伝達物質に過剰に反応し、本来の場所に到達できていないことが分かったとしています。
研究グループでは「重い熱性けいれんになると海馬で神経回路が発達せず、てんかんを発症しやすくなる」と結論づけています。
そのうえで、重い熱性けいれんの治療で使う薬の大半に、この神経伝達物質の働きを強める作用があることから、薬の投与でてんかんのリスクが高まるおそれがあると指摘しています。
研究を行った池谷裕二准教授は「熱性けいれんの患者の追跡調査を行い、治療法の見直しを検討することも必要ではないか」と話しています。“患者の追跡調査必要”
今回の研究について脳神経外科が専門でてんかんに詳しい東北大学の中里信和教授は「てんかんが起きる仕組みを解明しただけでなく、熱性けいれんと治療薬の関連についても分析を進めた点で、画期的と言える。研究の進展によっては、熱性けいれんの治療を見直さなければならない可能性があるので、よりよい治療法の開発に向け、患者の追跡調査や別の薬を使った臨床研究を進める必要がある」と話しています。
ネズミによる実験が元になっているのだが、
熱性痙攣を経験して、後に癲癇が起きるメカニズムを解明
している点が重要だ。そして
現在使われている重い熱性痙攣の治療薬自体が、癲癇を起こしやすくする恐れがある点を指摘
しているのが注目される。
今まで、「常識」だった
熱性痙攣は恐くない
が、
重い熱性痙攣は慎重な投薬が必要
に変わるのか、今後の研究の推移に注目したい。
続き。(21:52)
shy1221先生から、今回の成果が論文として、7/15付の
Nature Medicine
に掲載されていることをご教示頂いた。ありがとうございます。コメントを再掲する。
(略)
こういった話題は、何か論文がアクセプトされた時に、宣伝兼ねて報道発表するものです。今回の研究成果は、Nature Medicineに掲載されたもののようです。
http://www.nature.com/nm/journal/vaop/ncurrent/full/nm.2850.html
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コメント
ブログの内容からのみで失礼。
「重い熱性痙攣」の定義が不明であるが、いままでも、癲癇の病気の人で初発の痙攣発作が、熱性痙攣のように見える症例があるのが知られています。この区別と「重い熱性痙攣」の違いが分からないと、コメントのしようが無いと思います。その上で、
>インフルエンザなどで重い熱性けいれんになると
インフルエンザ脳炎の可能性を否定していますか?
ブログ主は、医療関係者でないようなのですが、東大は報道機関発表でなく、学会誌に投稿してもらいたい課題です。
投稿: 匿名1 | 2012-07-16 14:05
>東大は報道機関発表でなく、学会誌に投稿してもらいたい課題
こういった話題は、何か論文がアクセプトされた時に、宣伝兼ねて報道発表するものです。今回の研究成果は、Nature Medicineに掲載されたもののようです。
http://www.nature.com/nm/journal/vaop/ncurrent/full/nm.2850.html
投稿: shy1221 | 2012-07-16 19:40