円安は高止まりしたままの国際的な食料価格を反映して日本の食卓を直撃 貧困層では飢餓や栄養不足もしくはファストフード依存による肥満を引き起こす恐れありとの指摘
日本は食料輸入国である。
一方で、
穀物等の国際価格は高騰したまま
になっている。
農林水産省の平成22年度の『食料・農業・農村白書(平成23年5月31日公表)』より。
第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組(穀物等の国際価格は再び上昇基調)
穀物、大豆の国際価格は、平成20(2008)年春から夏頃にかけて過去最高水準となりましたが、近年においては、価格高騰前の平成18(2006)年秋頃に比べると高水準ながら落ち着いた動きをみせていました(図1−3)。しかし、平成22(2010)年7月以降、ロシアでの干ばつによる小麦等の在庫減少の見通し等により、小麦の価格を中心に再び上昇しました。その後、8月にはロシアが小麦等の禁輸措置に踏み切ったこと、小麦からとうもろこし等他の穀物へ需要がシフトしたこと、米国のとうもろこしの生産量見込みが大幅に下方修正されたこと、中国で大量の大豆輸入が行われたこと、アルゼンチンで降雨不足がみられたこと等により、小麦のほか、とうもろこしや大豆についても国際価格が上昇しました。また、米についても、パキスタンやタイの洪水による減産見込み等により、8月以降小幅ながら、国際価格が上昇しました。この傾向は平成23(2011)年に入っても継続しており、穀物や大豆の国際価格は、過去最高を記録した平成20(2008)年の水準に近づいている状況にあります。
穀物、大豆以外の農産物の国際価格も高騰しています。砂糖の価格については、世界2位の生産国であるインドでの減産や、主要輸出国であるブラジルでの降雨不足による減産懸念等により、平成21(2009)年4月以降高騰しており、平成22(2010)年12月には平成20(2008)年平均価格の2.6倍まで上昇しています(図1−4)。コーヒーの価格については、コロンビアにおける天候不順やBRICs(*1)等における旺盛な需要増が重なり、平成22(2010)年6月以降高騰しています(図1−5)。
穀物、食肉、砂糖、乳製品、油脂類(植物及び動物由来)の国際取引価格を基にFAOが毎月算出している食料価格指数(平成14(2002)〜平成16(2004)年=100)をみても、平成23(2011)年2月には、237.2と過去最高の水準となりました(図1−6)。また、世界銀行の食料価格指数(*2)についても、平成22(2010)年10月から平成23(2011)年1月までの3か月間で15%上昇し、平成20(2008)年のピーク時をわずかに3%下回る水準に達しています。これら価格の動きは、天候不順による生産の伸び悩み等に加え、近年人口が増加している中国等の新興国での消費増が背景にあるといわれており、今後も十分注視していく必要があります。
1/25更新の最新の農水省の分析。世界の穀物需給及び価格の推移(グラフ)より。
グラフで明らかなように
食料価格は、高騰したままで、円安誘導によって、国内価格の上昇は避けられない
と思われる。
中国では、インフレもあり、
食料価格の信じられないような高騰
が問題になっていたのが昨今のお話。
ところが、日本は
歴史的円高
を背景にしていたため、
ドルベースで価格が高騰しても、日本円の価格では「食料インフレ」は起きなかった
というのが、北林寿信さんの「世界食料日誌」1/31付の分析である。一部を引用する。
2007年以来の穀物等主要農産品国際価格の高騰にもかかわらず、日本に限って食料インフレをまぬかれていたのは、ひとえに、同時並行的に進んだ円高のためであった(下図参照)。しかし、円高から円安に転じた今も、穀物等国際価格は高止まりしたままだ。日本の食料品価格は、多くの庶民の飢餓や栄養不足をもたらすほどに、あるいは安価なファストフードへの過剰依存で肥満病を促すほどに高騰する恐れがある。
というわけで
アベノミクスが直撃するのは経済弱者の食卓
になる恐れがあるという。
キヤノンのこんな記事を載せてるのは朝日だが
キヤノン、増収増益を予想 12月期
キヤノンは30日、2013年12月期決算が円安の影響で増収増益になるとの予想を発表した。売上高は前年同期比9.5%増の3兆8100億円、営業利益は同26.6%増の4100億円になる見通し。円安が営業利益を1092億円押し上げるという。(以下略)
この「円安の押し上げた営業利益の配分先」がどこなのか。単に
内部留保
になるだけならば、
経済は回らない
どころか
企業が儲かっても、経済弱者に飢餓が出るかも知れない
ってことだ。
経済格差が生む「饑饉」
は
直接目に見えにくい
ところが問題で、ある日
餓死しているのが見つかって発覚
するのが最悪のケースである。
さて、
原油や国際的食料価格の高騰に対応出来る「アベノミクスの具体的なインフレ+円安コンボ政策」
って、寡聞にして知らないのだけど、どうなってるんだろう。
インフレ+円安コンボ
で
直撃されるのは食料価格
の悪寒。原油価格の上昇は
輸送コストや栽培(資材や温室等)コストの上昇
を招くわけで、当然価格に反映される。
本当に「政策的円安とインフレ誘導」で「みんなが幸せになるのか」
という辺り、最近あまりニュースを見ないからわたしも知らないんだけど、詳しい説明はあるのかな。それとも
正規雇用以外の経済状況は見ない
ってだけの話か?
非正規雇用の場合、正規雇用に比べても更に
急激な円安や、引き起こされるインフレに対応出来る賃金体系
にないわけで、
貧困が更に悪化
するのではないのか。
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コメント
リーマンショックの時に1ドル120円 まだまだ円安とはいえず超円高の調整中といったところです。
デフレで会社の現金収入の額面が減れば 国内の従業員の給与のベースアップやあらたな雇用の確保も困難になるわけで昨年までそんな有様です。
少々適正規模の円安に振れて市場の判断で株価が上がれば銀行も株価の評価損が減少するわけで 企業への貸し出しも増してきます。
ならば産業の空洞化も減り 工場が外国から国内に戻れば国内の雇用も増え 給料をもらう人間が増えてきます。
外国からの輸入食料品の値段が上がれば 国内品も競争出来て売れ行きも伸びるでしょう。農家の収入も上がりませんかね。それこそが食料自給率を上げると考えます。自給率減少とは要は国内で農業を営んでも食っていけない 円高で外国の食料品が安く手に入るから国内農業が立ち行かないからです。
安倍政権は目標は公言したものの まだ何も円安にするような政策や為替への介入はしていません。すべて大型の金融緩和があると予想した市場の前もっての判断なんです。世界第2位の経済大国といいながら いつまでたっても通貨の為替レートを固定していたり、円安に少しでも振れたら輸出産業が打撃を被ると言っては悲鳴を上げて常時政府が為替介入をしているお隣の国の代弁をしているマスコミの論調はまるで嘘です。内需をそだてなかったその政府の責任でしょう。同時に国内では株価が上がり 利益が上がっている企業が後を絶たないじゃないですか。雇用が増えるのはこれからでしょう。いくら円高で物価が安くても給料が入らねば誰も物は買いませんから。
今回のご主人様の論調には首をかしげています。昔と比べて日本のGNPの7割以上は内需です。国内に現金が回りだした方が景気は良くなるはずです。大いに公共投資もやった方が 国内に金が回りますよ。外国の企業に橋や港湾を発注するんじゃないんだから。公共工事の金の回る裾野は広いのです。当然雇用も増えますよ。
投稿: Bugsy | 2013-02-02 19:37
Bugsy先生、コメントありがとうございます。
製造業は給料が上るかもしれませんが、それ以外の業種ではどうなんでしょうか?
たとえば、アウトソーシングしまくっている教育や公共サービス分野は? たとえば私立大学の一般教育分野とか、公教育(小中学校でも)の「講師」待遇とか。こうした分野では、急激な賃金上昇は望めませんし、好況が反映されるのには時間がかかります。
国内雇用の拡大については
雇用後の教育システムが崩壊した後
だというのが、問題ではないかと思っています。未熟練な若年労働者を指導・管理すべき年齢層は、高齢で退職しているか、これまでにリストラされてしまっているかで企業には存在しないわけです。企業が自前で育てなければいけないのですが、その層がごそっと抜けていませんか?
同じことは、医療分野でも言えるように見えます。
「外国からの輸入食料品」というよりは、基盤となる穀物価格等が問題です。
たとえば大豆は? 家畜の飼料となるトウモロコシは?
円高の昨今でも、飼料価格の高騰が酪農家を圧迫していたのですが、このまま行くと、国内の畜産は経営が難しくなるのではないかと心配しています。銘柄牛のいくつかの産地では、高齢化が進んでいて、飼料価格の高騰は廃業の契機となる恐れが前から指摘されています。牛肉の市場価格が飼料価格の高騰に見合うくらいに上昇すれば、赤字は吸収されそうなものですが、その時期まで耐えきれるかどうか。
すでに相当しんどくなっている分野は、そう簡単に持ち直せるのでしょうか。
投稿: iori3 | 2013-02-02 19:59
教育分野の人件費や人員数はあらかじめ国庫補助の予算で決まっており 為替の変動の影響は少ないはずです。ただし国庫収入が増えれば予算もまわりやすくなるでしょう。
雇用後の教育システムも従来のように定年まで安定してその会社に勤務できる日本独自のシステムに戻れば昔のようになるとは思います。
日本の肉牛は高付加で価格も高いのです。集約化して合理化できますかね。こんな日本文化を次世代に残そうとすれば政府が補助金を出さざるを得ないでしょう。
いずれにせよ景気が回復して税収が上がってこその話です。
投稿: Bugsy | 2013-02-02 21:11