2013フィギュア世界選手権男子 三連覇のP.チャンの優勝にも疑問の眼差し
日本ではほとんど報道されてないのだが
2013フィギュア世界選手権男子で三連覇を成し遂げた地元カナダのP.チャン
にも
採点への疑惑の目
が注がれている。
ロイター(日本語)より。
フィギュア=世界選手権、不透明な採点システムに疑問の声
2013年 03月 18日 14:28 JST[ロンドン(カナダ) 17日 ロイター] カナダ・オンタリオ州のロンドンで行われたフィギュアスケートの世界選手権の男子シングルでは、地元のパトリック・チャン(カナダ)が3連覇を達成したが、不透明な採点システムに疑問の声が上がっている。
ショートプログラム(SP)首位だったチャンは15日に行われたフリーの演技では、ジャンプで2回の転倒があったにもかかわらず、2位の得点をマーク。デニス・テン(カザフスタン)を抑えて優勝した。
チャンはふがいない演技だったとして、優勝後は2日続けてファンに謝罪。「今回の優勝を人々が疑問に思うのは理解できる」としながらも、「優勝に値する演技だった」と主張した。
また「ホッケーでは相手チームより1点でも多く取ればいいが、フィギュアスケートはそれよりも少し主観的」とし、「自分の優勝が妥当である理由について、機会があれば喜んで説明する」と話した。
今回の結果を受けて、世界選手権の元王者トッド・エルドレッジ(米国)は「パトリックを非難するつもりはないが、2回も転倒した選手があれほど高い演技構成点を獲得するのはおかしい」と指摘している。
2002年のソルトレークシティー冬季五輪でのフィギュアスケート競技の判定スキャンダルから10年以上がたった今も、フィギュア界は判定システムに対する信頼を取り戻せていない。
ま、
P.チャンが大口を叩くのは、仕様
なので、その点はスルーしておく。
問題の演技だけど、
珍しくP.チャンが2回転倒
した。P.チャンは、そうした失敗が少ないので有名なのだがさすがに
2コケ
はあまり記憶がない。4回転ジャンプも転倒も共に体力を消耗する。その影響だろう、後半かなりしんどそうだった。
それでも
なんとか優勝した理由
は
転倒する前に決めた2つのジャンプが4回転ジャンプでその2つだけで30点をたたき出していた
からだ。現在
フィギュアでは転倒1回につき-1.00の減点
という採点システムになっている。もっとも
転倒するジャンプでも、回転が足りている
なら、それほどひどい減点にはならない。
こちらがP.チャンの技術点(TES)。
元はこちら。
wc2013_Men_FS_Scores.pdf
転倒したのは
3つ目の要素の3Lz 基礎点 6.00+GOE -2.9=3.8(回転不足なし)
6つ目の要素の3A 基礎点 6.60(本来の70%の点数→回転不足=UR Under rotated 回転が1/4以上〜1/2未満不足)+GOE -3.00=3.6(実際には後半のジャンプ加点1.1を掛ける)
の2つのジャンプ。しかし
1つ目の要素の4T+3T 基礎点 14.40+GOE 2.57=16.97
2つ目の要素の4T 基礎点 10.30+GOE 2.86=13.16
で
16.97+13.16=30.13
と
30点越え
だ。結局
TESの合計は82.13
で、
2つの4回転ジャンプ成功で4割弱のTESを稼いだ
ことになる。これに
男子フリー最高だったPCS 89.28
と
2回の転倒による減点-2.00
の全て合計すると
169.41
となり、前日のSPの得点98.37と合わせて、
267.78
を獲得、SPで2位FSで1位だったデニス・テンの猛追を振り切って
辛くも三連覇
となったわけだ。ちなみにデニス・テンの総得点は
266.48
で、
P.チャンとの点差はわずかに1.3の僅差
だった。
かたや、デニス・テンは、カザフスタンの伸び盛り。これまで何回も国際大会には出ていたが、世界選手権のような大きな大会で最終グループに入ることはまずなかった。直前の四大陸選手権大会でも12位と振るわず
今回の世界選手権でにわかに躍進
したのだ。だからこそ
伸び盛りの若手 vs. 円熟の王者対決
を
すっきりした点差で決着
してもらいたかった、と思うのは、世界中どこでもそうだろう。
P.チャンの場合
PCSの盛り加減
によっては
デニス・テンに敗れる
こともあり得た。PCSの話だけすれば
P.チャン 89.28
デニス・テン 87.16
その差 2.12
である。もし、P.チャンのPCSがあと少し及ばなければ、新王者誕生だった。
技術点(TES)だけをみれば
P.チャン 82.13
デニス・テン 87.76
だから、
技術的には出来がよかったデニス・テンが2回転倒したP.チャンに負けた
というのに
観客が納得しない
のも理解出来る。
ま、そんなこんなで
相変わらず、フィギュアの採点はブラックボックス
で、
どんなさじ加減があるのか
は、外からはさっぱりわからないわけだ。
ロイターの英文記事では
Glitzy Gala cannot hide figure skating wartsBy Steve Keating
LONDON, Ontario | Sun Mar 17, 2013 5:16pm EDT
(Reuters) - The figure skating world championships closed on Sunday as they almost always do with a glitzy gala, arguments and controversy.With a scoring system that is harder to understand than the theory of relativity and offers about as much transparency as a Papal conclave, figure skating still struggles to connect with the average fan, particularly in North America where their numbers are on the decline.
That confusing system allowed Canada's Patrick Chan to claim a third consecutive world championship title on Friday despite hitting the ice more times than a toddler learning to skate.
と
With a scoring system that is harder to understand than the theory of relativity and offers about as much transparency as a Papal conclave
教皇選出のコンクラーベと並べて、強烈に皮肉られている。
この不透明さが、北米での
フィギュアの不人気を呼んでいる
というのがロイターの見方だが
日本のフィギュア人気が沸騰
しているのと比べると、世界の他地域でのフィギュア大会は、客席が寂しいのが目立つ。
今回の会場も
動員数が見込めないから、普通のフィギュアの競技リンクより狭いホッケー用の会場
が選ばれたというが、それすら埋まっていなかった。ロイター(日本語版)より。
フィギュア=世界選手権、キム・ヨナ復帰も観客数は減少
2013年 03月 19日 10:35 JST[ロンドン(カナダ) 18日 ロイター] カナダ・オンタリオ州のロンドンで行われたフィギュアスケートの世界選手権では、五輪金メダリストのキム・ヨナ(韓国)が2年ぶりに出場したが、観客数の増加にはつながらなかった。
90年代半ばのナンシー・ケリガンとトーニャ・ハーディング(ともに米国)のライバル関係ほどの緊迫感はないものの、キムは浅田真央とフィギュア史に残るライバル争いを演じている。
しかし今年の世界選手権の会場に選ばれた7000人収容のジュニア・アイスホッケー用のアリーナでは空席が目立った。キムは1位となった14日の女子ショートプログラム(SP)終了後、「観客は思っていたより少なかった」とコメント。「練習セッションだと思うようにして、演技に集中した」と明かした。
観客数は伸びなかったが、会場のメディアセンターにはアジアの報道関係者が殺到。一方で北米メディアのフィギュアへの関心度は低く、国際スケート連盟(ISU)の副会長はロイターに対し、「北米で主要大会が広いアリーナで行われていた日々はもう戻ってこない」との見方を示した。
さらに「最近訪れた日本(でのフィギュア人気)は素晴らしく、まるで10年前(の北米)のようだった」とし、「(フィギュア競技の)受け入れ方が違う」と語った。
来日するフィギュアの選手達が口を揃えて
日本のファンは温かい
と言うのも、理由のあることだ。
ISUは
P.チャンやキムヨナ推し
と見られているのだが、その理由は
人気が低迷している北米やヨーロッパ以外でのファン層拡大を狙っている
からではないか、とも言われてるけど、どうかな。
これからファン層を開拓するとすれば
すでに十分ファンのいる日本以外のアジア
ってことになる。P.チャンは中国系だし、キムヨナは韓国だ。当然
金メダルを取れば、中国や韓国、そして世界各地の中国系・韓国系移民とその子孫のフィギュアファンが増える
だろうと踏んでいるなら、
日本にはメダルはやってもいいけど銀以下、もうこれ以上ファンは増えないし、サムスン等の韓国企業ほど貢いでくれないし
って考え方でもおかしくはない。
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コメント
チャン選手は転倒した時、「あっ負けた!」と思ったそうです。
(読売新聞)
ヨナ選手もですけれど、勝ち負けしか意識していない選手の
演技は上手いけれど心に響くものがありませんね。そんな選手
にいくら歴代最高得点やメダルを与えてもファン増加には
つながらないと思います。
投稿: 七実 | 2013-03-19 20:14
主観的というのは分かります。
ただ、主観に流されるあまり、本来のフィギュアとしての競技で何が大切なのかという事を、日本のマスコミは全然報道してません。
たまに本当の事を報道すると、当然それまで嘘ばかり報道しているのだから、ネガキャンだと言われる始末(マスコミの自業自得ですけどね)。
おまけに、本当の事を話した解説者に謝罪させるという酷い状況を経て、何事も当たらず触らずになっている現状を考えると、例えファンを獲得したとしても、本当のフィギュア「競技」を分からないままになるのではないかと思います。
伊藤みどり以前からフィギュアのファンである自分としては、既にアマチュアよりもプロの方が興味を引く状況になっている状況で、残念ではあるけれど、しょうがないなと思います。
一つだけ心配なのは、そんな状況で真面目に努力している次世代のアマチュアの選手達が割を喰っている所でしょうか。
投稿: Aya | 2013-03-21 20:24