中国のH7N9型鳥インフルエンザのヒトへの感染 (その25)北京で症状の出ていない(不顕性)H7N9型鳥インフルエンザキャリアの男児みつかる@4/14→H7N9型鳥インフルエンザウイルスのヒトヒト感染が始まるのは中国からとは限らないことに
感染症で困るのは
不顕性のままで、本人が気づかないキャリアが出る
ことだ。ヒトからヒトへ感染する病原体であれば、
症状が出ないけれども、病原体を保持したヒトが、周囲を感染させる
ことになる。
これまで
中国のH7N9型鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染症例
では
かなりはっきりした症状が出て、多くは重症化してから確定診断された症例
だった。つまり
中国のいう「確定診断例」
とは、
不顕性の感染例は含んでいない状態
だった。
さて、そろそろ
不顕性のH7N9型鳥インフルエンザウイルスキャリアが見つかる
だろうとは思っていたが、案の定見つかった。
北京市の4歳男児
で、
両親は家禽や魚を販売
しており、男児一家の向かいに住む近所の人が、北京での最初の確定診断例の女児の家から鶏を買ったことがある
というもので
男児には症状はなにも出ていないが、H7N9型鳥インフルエンザウイルスキャリア
であることが、スクリーニング検査でわかった、というものだ。
これで
H7N9型鳥インフルエンザのヒトへの感染状況
は
更に一段階進んだ
ことになる。
不顕性のキャリアがいる
ということは
すでにH7N9型鳥インフルエンザキャリアが、世界中に散らばっていてもおかしくない
ことを意味する。
空港でのスクリーニングは発熱等の症状が出たヒトが対象
であり、
不顕性のキャリアはひっかからない
からだ。
今朝の北京市衛生局の発表より。元は簡体字。最後の方の翻訳に若干自信がないので、間違っていたらごめんなさい。
主動篩査監測發現一例人感染H7N9禽流感病毒携帶者(積極的なスクリーニング検査が1例のH7N9鳥インフルエンザウイルスキャリアを発見。)時間、2013-04-15
2013年4月14日20時30分、北京市衛生局接到北京市疾控中心報告、在對首例人感染H7N9禽流感確診病例父親販賣家禽相關人群的主動篩査監測中、發現一名4歳竹姓男童H7N9禽流感病毒核酸陽性。(2013年4月14日20時30分、北京市衛生局は、最初のH7N9型鳥インフルエンザのヒトへの感染確定診断例患者の父親が家禽を販売した関係者を積極的にスクリーニング検査をした中に、4歳の竹という苗字の1名の男児がH7N9型鳥インフルエンザウイルスRNA陽性であることを発見したという、北京市疾病予防コントロールセンターの報告を受けた。)
目前該男童無臨床症状。(現在のところ、この男児には臨床的には症状が現れていない。)
北京市臨床專家組根據其臨床表現・流行病學調査和實驗室檢測結果、綜合判定該男童為人感染H7N9禽流感病毒携帶者。出於對該兒童健康的關心、衛生部門將其送往地壇醫院進行緊密醫學觀察。(北京市の臨床専門家チームは、臨床所見・感染症学検査所見とを考慮して、この男児はH7N9型鳥インフルエンザキャリアであると総合的に判定した。この男児の健康への関心から、衛生部局は、男児を地壇病院に送り、詳しい医学的経過観察を進めている。)
此次主動篩査監測由朝陽區疾控中心實施、範圍包括朝陽區崔各莊郷奶[女乃]東村禽類養殖戸共24人、方式是採集了咽拭子標本送北京市疾控中心進行檢測。該男童父母從事禽魚販賣工作、其街對面鄰居購買過首例確診病例家庭所販賣的鷄。(今回の積極的なスクリーニング検査は、朝陽区の疾病コントロールセンターによって行われたもので、検査範囲は朝陽区崔各荘郷奶[女乃]東村で家禽を養殖する世帯全部で24人を含んでおり、検査方式は喉を綿棒でぬぐった検体を集めて北京市疾病コントロールセンターに送って検査を進めた。この男児の両親は家禽や魚の販売に携わっており、住居のある通りの向かい側に住む近所の人が最初の感染確定診断例の家庭が売っていた鶏を購入したことがある。)
此次發現携帶者、是北京市從被動的「症状監測」延伸到對高危人群開展主動「病原學監測」、進一歩提高防控工作主動性・前瞻性所取得的成果。專家分析、此次主動篩査監測結果對判斷H7N9禽流感病毒的致病力和易感人群具有一定的參考作用。(今回キャリアを発見したことは、北京市が受動的な「症状の監視」からハイリスク群に対し積極的な「病理学的監視」を展開するまでに伸展したことを意味し、更に予防コントロール活動を積極性・予測性が得られる成果を得られるまでに高めた。専門家は、今回の積極的なスクリーニングの結果は、H7N9型鳥インフルエンザウイルスの病原性や感染しやすい人のグループを判断するのにある程度参考になるだろうと分析している。)
今回の発表が意味することは
中国政府が公表しているよりずっと多い「感染者が存在する」
という事実であり、
キャリアはすでに世界中に散らばっていても不思議はない
ということである。
今の所
ヒトヒト感染の事実は認定されていない
が、今後、ウイルスの変異によって、
H7N9型鳥インフルエンザはヒトヒト感染するようになる恐れ
は十分にあり、
それが始まるのは中国とは限らない
のが、北京市衛生局の発表の意味するところである。
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コメント
詳細な翻訳をありがとうございます。麻酔科は、感染症を直接診察はしないのですが、肺炎が酷くなって、人工呼吸治療をすることになれば、当然ICUなどで、接触することになります。
直近では、新型インフルエンザで、春の神戸の日本麻酔科学会が吹っ飛んでお盆に急遽延期された時のことを思い出します。
投稿: 麻酔科医 | 2013-04-15 08:21