ワクチンで防げる風疹で2004年に続き先天性風疹症候群(CRS)の赤ちゃんが10人を超える→2004年に風疹を撲滅したアメリカ CDC(疾病対策センター)は日本渡航へ注意呼びかけ
今を先立つ9年前の2004年
日本では風疹が大流行
し、
9月9日、厚労省は緊急提言
を行った。この時は、
第二次小泉内閣
で、
厚労相は公明党の坂口力
だった。坂口力は医師である。また小泉首相も厚生相(当時)の経験がある。比較的
厚労行政には関心が高かった
と見ていいだろう。
風しん対策の強化について(含:厚生労働省通知および緊急提言)(2004年9月9日)1.緊急提言について
「風疹流行にともなう母児感染の予防対策構築に関する研究(班長:平原史樹横浜市立大学大学院医学研究科教授)」班において、この度、「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」(以下「緊急提言」という。)が取りまとめられた。
*当該研究は、厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症研究事業「水痘、流行性耳下腺炎、肺炎球菌による肺炎等の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究(主任研究者:岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長)」の分担研究として実施しているもの。「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」
→ PDFダウンロード(20ページ/116 KB)
(注)P13に掲載の各地ブロック相談窓口(2次施設)は変更されています。
→最新版はこちら(2011年10月6日更新)2.緊急提言の内容
以下の3章で構成されている。
(1)予防接種の勧奨
風しん流行を阻止するため、風しんの定期予防接種強化の必要性を指摘
妊婦への感染波及を抑制するため、特に、妊婦の夫、子供及びその他の同居家族等への接種を勧奨
(2)風しん罹患妊娠女性への対応
妊娠女性への対応診療指針(フローチャート)を策定
(3)流行地域における疫学調査の強化
風しんの流行発生地域において必要な調査事項を整理3.緊急提言を踏まえた対応
(1)9月9日に記者発表及び課長通知を発出
[通知] 厚生労働省健康局結核感染症課長→PDF
(2)ワクチンメーカーにおいて、今年度中にワクチンの増産を予定
(3)MRワクチンの2回接種など、予防接種を取り巻く重要な課題を今後、検討会で検討する
(4)その他(広報等)厚生労働省、国立感染症研究所、すこやか親子21等のホームページに緊急提言を掲載
日本産婦人科医会において、会報及びホームページにより会員に周知
日本医師会においても、広報等で会員に周知
この内、
厚生労働省健康局結核感染症課長名
で出された
風しん対策の強化について
では、次のように明言している。
1 来シーズンの風しん流行を阻止するため、風しんの定期予防接種の対象者について、もれのないよう接種の強化を図ること。また、妊婦への感染波及を抑制するため、特に、
1 妊婦の夫、子供及びその他の同居家族
2 10 代後半から 40 代の女性(ことに、妊娠希望者又は妊娠する可能性の高い者)
3 産褥早期の女性
のうち、明らかに風しんの既往、予防接種歴、抗体陽性確認がある者を除いた者は、予防接種を受けることが望ましいと考えられていることにつき、周知を図ること。
と
現在、風疹罹患の多い20代女性を含む層への風疹の予防接種の必要性を周知
するように書いてあるのだが
その後も、継続的にこの通達が周知された
ようには感じられないのである。更に言えば、上記にあるような
MRワクチンの2回接種など、予防接種を取り巻く重要な課題を今後、検討会で検討する
提言が
現在の厚労行政、特に昨年来続いている風疹の流行に生かされている
とは到底思えない。5/23に厚労省に風疹対策を日本小児科学会や日本外来小児科学会などの4つの団体を申し入れたとき、厚労省は
風疹よりもっと重い感染症の予防接種も対策できてない
と
ニベもない対応
をした話は以下に。
2013-05-26 あなたは風疹で1週間以上入院することになったらどうしますか 今年の大人の風疹 従来より重症化割合が高い→風疹による脳炎で12日入院 脳波に異常が残り投薬継続の例→国は風疹対策には冷淡「水ぼうそうなど、より深刻な感染症の予防接種も補助できてないから」
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2013/05/1-16-afff.html
もちろん、2004年のように
ワクチンメーカーにおいて、今年度中にワクチンの増産を予定
なんて迅速な動きを、風疹が流行していた昨年中にしていれば、現在の問題
ワクチン不足
にはならなかっただろうが、
厚労省は座視
していた。
かく厚労省が不作為を続けた結果、
とうとうこの6月に、2004年のCRS患児の数を超えた
のである。読売より。
風疹で胎児障害、11人目…9年前の流行上回る
今回の流行が始まった昨年後半から11人目の報告例で、推定3・9万人の風疹患者が出た2004年の10人を上回った。風疹患者の増加に歯止めがかからないため、CRSの子どもを持つ親らが17日、国が費用を負担した臨時の予防接種を実施するよう、厚生労働省に申し入れた。
同省などによると、新たなCRSの患者は今月9日までに東京都へ報告された。同省は近く、11人目の報告例として正式発表する。風疹の患者は昨年後半から増え始め、今年は今月2日までに全国で9408人の患者が報告され、今月中に1万人を超えそうだ。昨年1年間との比較でも、既に4倍近くに上っている。
患者の8割近くは男性。中心は20~40歳代で、男性全体の8割以上を占める。今年4月時点で34歳以上は自治体の予防接種の対象外だったことなどから、特に患者が多い。子育て世代でもあり、夫が妊婦にうつさないよう、同省などは自主的に予防接種を受けるよう呼びかけている。(2013年6月18日08時37分 読売新聞)
要するに
2004年の教訓はまるで生かされてない
のである。
昨年の風疹流行の際に、
厚労省が、更なる流行を阻止するための風疹対策を練った形跡
もない。
無策
のまま、1年を過ぎた現在、すでに
ワクチン需給は逼迫
していて、
ワクチン不足
がようやくマスコミにも取り上げられるようになった。読売より。
風疹予防接種、助成拡大でワクチン不足の兆し風疹の感染拡大が止まらない。
今年に入って報告された全国の患者数は1万102人(今月9日現在)と、早くも昨年1年間(2392人)の4倍を超えた。危機感を募らせた自治体が、予防接種の費用助成に相次いで乗り出したが、その結果、接種を受ける人が急増し、今度はワクチン不足の傾向も表れ始めた。
◆無料化◆
最も懸念されるのは、妊娠初期の女性の感染だ。胎児が感染すると、難聴や心疾患、白内障などの障害が出る先天性風疹症候群(CRS)になる恐れがある。厚生労働省によると、報告事例は昨年10月以降、11人に上っている。
大阪府富田林市と太子町、河南町、千早赤阪村を受け持つ富田林医師会は今月2日、妊娠を望む女性や妊婦の夫以外も対象とする異例の無料集団接種を始めた。「周囲の人々の感染防止が重要」との考えからだ。自己負担額は通常、1万円程度という。
対象は19~49歳で、当初は5日連続、その後は週2~3回ペースで土日のほか、平日午後6時から同市の富田林医師会館で実施。インターネットでの予約制で、来週は26、27日に行う。
20日も降りしきる雨の中、会社員や主婦ら約60人が次々に訪れた。妻が妊娠中という会社員男性(40)は「妻がもし感染したら、と考えるとすごく心配だった。無料なのはありがたい」と笑顔を見せた。◆5月32万回◆
国立感染症研究所(東京)によると、風疹患者数は今春から急増し、5月は全国で毎週800人以上の患者が報告された。今月9日までの1週間では517人に減ったが、ピークを過ぎたかどうかは「まだ何とも言えない状況」という。
こうした中、妊娠を望む女性や妊婦の夫に予防接種の費用を助成する市区町村が拡大。5月初め、市区町村に補助を出していたのは東京と千葉、神奈川の3都県だったが、その後は大阪府や愛知、兵庫、奈良、和歌山各県などが始め、京都府も関連議案を府議会に提案中。大阪府では全市町村が助成制度を設けた。
これを受け、乳幼児への定期予防接種を除く任意での接種回数が急増している。厚労省によると、例年は年間30万回だが、今年は5月だけで32万回に上った。◆8月末に危機◆
予防接種のワクチンには、風疹単独用のものと、はしかとの混合の「MRワクチン」がある。単独用は生産量が少なく、予防接種では主にMRワクチンが用いられているが、月35万回を超えるペースが続くと、8月末には不足する見込みだ。
兆候はすでに出ており、大阪市天王寺区の「おおつかレディースクリニック」の大塚志郎院長は「以前は販売業者に注文すれば翌日届いたが、今はいつ届くかわからない状態」と話す。
卸売販売会社「スズケン」(名古屋市)は「すべての注文に応えられない状態で、出荷調整している」。子会社が風疹ワクチンを製造する製薬会社「第一三共」(東京)は「需要がここまで膨らむのは想定外だった」とし、今年の製造計画量を2年前の2倍に増やした。
風疹の流行は通常、夏場がピーク。厚労省によると、ワクチン製造には約1年半かかるため、ただちに大幅な増産は見込めないという。同省は、妊娠を希望する女性や同居家族が優先的に接種できるよう自治体などに呼びかけている。(2013年6月23日09時30分 読売新聞)
要は
国の無策の尻ぬぐいを各自治体が行っている
のにも関わらず
今度は「無料接種の拡大でワクチン不足」とマスコミが非難
しているわけだ。
風疹は
ワクチンで防げる感染症(VPD)
である。
先進国の筈の日本
の
情けない感染症事情
については、これまでも指摘されていたが、アメリカCDC(疾病対策センター)は6/19、
アメリカ国民保護の観点から日本渡航への注意
を呼びかけた。NHKより。
米 「風疹流行の日本渡航に注意」
6月20日 14時35分妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんに障害が出るおそれがある風疹の感染が広がるなか、アメリカの疾病対策センターは19日、警戒レベルを1段階引き上げ、日本に渡航する人に予防接種を受けておくよう呼びかけています。
妊娠中の女性が感染すると、赤ちゃんの目や耳、心臓などに障害が出るおそれがある風疹の患者はことしに入って1万人を超え、感染が広がり続けています。
アメリカのCDC=疾病対策センターは19日、日本で大阪や東京などの大都市を中心に風疹が流行しその患者数は今後さらに増える見通しだとして、警戒レベルを3段階のうち上から2番目である「より注意」のレベルに1段階、引き上げました。
そして日本へ渡航する際には、予防接種を受けておくよう呼びかけるとともに、予防接種を受けていない妊娠中の女性は渡航を自粛するよう求めています。
アメリカでは、1960年代末から続けてきた公費負担などによる予防接種によって国内での感染例がほぼなくなったとして、2004年に風疹の撲滅が宣言されましたが、今後も外国からウイルスが持ち込まれるおそれがあるとしています。
アメリカが2004年に撲滅した風疹
を
日本は未だに撲滅できない
どころか
新たなCRS患児を生み出している
だけでなく
風疹患者の重症者も発生
しているわけだ。
国の感染症予防対策とワクチン行政の無定見さと事なかれ主義による不作為
が生み出した
予想された「悲劇」
であるのはいうまでもない。
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コメント
CRS発生が11例ということですが、風疹の本格的なアウトブレイクは昨年秋からです。
そのころに妊娠初期を過ごした妊婦さんたちの出産はまさにこれからです。
おそらく今年後半から来年にかけて、今までをはるかに超える数のCRS患者の発生が予想されています。
9年前の提言で、確かにMR2回接種となり、さらには、3/4期の接種を行うことで、これから先の世代は
何とかカバーされていますが、9年前当時にハイリスクの世代をカバーしてこなかった(通知を出すだけで
なんら実効性のある対策を取らなかった)ことが今のアウトブレイクを起こしているのだとしたら、
まさに「人災」でしかないですね。
投稿: Seisan | 2013-06-28 10:07