宋美玄『内診台から覗いた - 高齢出産の真実』中公新書ラクレ
産婦人科医である宋美玄先生が、読売新聞の医療サイトであるヨミドクター(yomi Dr.)上で連載中のblog
宋美玄のママライフ実況中継
から、妊娠から出産、育児に至る2011年11月〜2012月12月までの内容に若干加筆したもの。
自らが
高齢初産
となり、現在、日本の出産の1/4に上る
高齢初産妊婦と出産を終えたお母さん達へのエール
として書かれた、と見るのがいいかな。実際には
自らを奮い立たせる
ために、書かれている部分もあるだろう。
従って
高齢初産を迎える妊産婦には心強い味方
といった趣だ。ま
高齢初産を迎える自分が言われたらイヤなことは書いてない
んだから、自然そうなる。
読売新聞のサイトでの連載という性格上、
過激な表現は避けられ、できるだけ穏和な表現
が用いられている。また読売新聞サイドからは
自らの妊娠・出産のライブ中継
という性格を、このblogに求められていたようで、宋美玄先生の普段の「ホンネ」の鋭さからは
かなり抑制された筆致
だ。
最大公約数向け
なので、読んでいて歯がゆいところがある。
本書は
高齢初産妊婦へのエール
という性格がはっきりしているけれども、
高齢初産妊婦が「自分に都合良く読まないよう」な「釘」
は、あちこちに刺されている。
実際、宋美玄先生も、仲間の産婦人科の先生達も
日々過酷な周産期医療の現場
に立ち、命のやりとりに向き合っているわけで、本書の本当の狙いは
ともかくも、赤ちゃんよりも自分優先でわがままになりがちな妊産婦に「赤ちゃんと自分の命を守るために何をすべきか」を導く
ことだろう。
宋美玄先生の狙いが、果たしてうまくいくかどうかは、
読み手の感受性にゆだねられている
ので、
せっかく刺しておいた「釘」をガン無視する読者
がいてもおかしくはない。
難しいよね。
ところで驚いた事が二つ。
一つは
出産後1ヶ月バスタブに入ってはいけないという「指示」
が出ている地域があるってこと。この辺りは、議論があるんだろうけど、いきなり
助産師さんが来て自宅で取り上げた時代に戻ったか
と思いましたとも。地域の言い伝えレベルで、1980年代になっても
産後一ヶ月は入浴禁止
が
金科玉条
の如く、言われていたようなんだが、21世紀になって復活してるとは思わなかった。
もう一つは
離乳食の準備として白湯やジュースを飲ませることはしなくなった
って辺り。
家庭科の教科書の記述
でも
離乳食の準備として白湯やジュースを飲ませる
なんて平気で書いてあったわけで、びっくり。
最近は違って
いきなり離乳食へ突入
だそうだ。まあ、やり方はなんにせよ、目的は
固形物が食べられるようにする訓練
だからな。
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