華岡青洲の全身麻酔薬「麻沸湯」の全貌が分かる「麻沸湯論(天保十 1839)」現代語訳・英訳@愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻 病因・病態領域麻酔・周術期学講座
華岡青洲の全身麻酔は、ヨーロッパの麻酔術に先駆けて行われたものだが、いかんせん
日本の江戸時代の事象
なので、世界的な認知度はそれほど高いとは言えない。
で。
実際に
華岡青洲が全身麻酔に用いた「麻沸湯」がどのようなものなのか
を記しているのは、青洲の高弟で、青洲に
桂洲
の号を貰った伊予大洲の人
鎌田正澄玄台
で、彼が口述し、その弟子の松岡肇が筆記した
麻沸湯論
だ。
「麻沸湯論」は、鎌田桂洲の著書
『外科起廃』卷一のはじめ
に、天保十年の刊本では
麻沸湯論
の名で、東邦大学額田文庫所蔵の写本では
用麻沸湯弁
の題名で載っていて、これで私達は
華岡流外科の実際の施術
を知ることが出来る。なお、東邦大学額田文庫所蔵写本は稿本のようで、刊本とは文字に異同が多い。
さて、この
漢文脈で書かれた「麻沸湯論」
を
現代の麻酔学の観点から現代語訳・英訳
したのが、鎌田桂洲の故郷、愛媛の
愛媛麻酔の歴史友の会
の
土手健太郎愛媛大学医学部准教授を中心とするグループ
である。
その成果の現代語訳がこちら。
麻沸湯論の現代語訳
なお、土手先生のグループによる紹介では
麻沸湯論は、1839年(天保10年)に、華岡青洲の一番弟子であった鎌田正澄玄台が、麻沸湯による全身麻酔の方法を、門弟の松岡肇に口述筆記させたもの
であり
1846年のモートンや1847年のスノウの記述よりも前
の著述で
麻沸湯論は麻酔科歴史上の非常に重要なもの
である。
『外科起廃』はあちこちで版本や写本が公開されていて、
江戸時代、華岡流麻酔術導入後の日本の外科の実態
がよく分かる書物である。
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コメント
「麻沸湯論の現代語訳」タイムリーなご紹介ありがとうございます。
ちょうど時代ミステリの和田はつ子先生の近著『大江戸ドクター』の著者インタビューを始めたところで、非常に参考になります。
『大江戸ドクター』は、冒頭が歯科麻酔による歯抜きのエピソードからなんですよ。
投稿: 雀部陽一郎 | 2013-11-19 16:36
雀部陽一郎先生、お役に立てたようで何よりです。
愛媛大学の土手先生は麻沸湯関連のテーマで今年度の武田の杏雨書屋研究助成を獲得されたとのことで、今後のご活躍が期待されます。
投稿: iori3 | 2013-11-19 18:56