« 流転する書物 「痕跡本」 | トップページ | 食べたいといったときに食べさせて上げよう »

2013-11-19

華岡青洲の全身麻酔薬「麻沸湯」の全貌が分かる「麻沸湯論(天保十 1839)」現代語訳・英訳@愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻 病因・病態領域麻酔・周術期学講座

華岡青洲の全身麻酔は、ヨーロッパの麻酔術に先駆けて行われたものだが、いかんせん
 日本の江戸時代の事象
なので、世界的な認知度はそれほど高いとは言えない。

で。
実際に
 華岡青洲が全身麻酔に用いた「麻沸湯」がどのようなものなのか
を記しているのは、青洲の高弟で、青洲に
 桂洲
の号を貰った伊予大洲の人
 鎌田正澄玄台
で、彼が口述し、その弟子の松岡肇が筆記した
 麻沸湯論
だ。

「麻沸湯論」は、鎌田桂洲の著書
 『外科起廃』卷一のはじめ
に、天保十年の刊本では
 麻沸湯論
の名で、東邦大学額田文庫所蔵の写本では
 用麻沸湯弁
の題名で載っていて、これで私達は
 華岡流外科の実際の施術
を知ることが出来る。なお、東邦大学額田文庫所蔵写本は稿本のようで、刊本とは文字に異同が多い。

さて、この
 漢文脈で書かれた「麻沸湯論」

 現代の麻酔学の観点から現代語訳・英訳
したのが、鎌田桂洲の故郷、愛媛の
 愛媛麻酔の歴史友の会

 土手健太郎愛媛大学医学部准教授を中心とするグループ
である。
その成果の現代語訳がこちら。
麻沸湯論の現代語訳
なお、土手先生のグループによる紹介では
 麻沸湯論は、1839年(天保10年)に、華岡青洲の一番弟子であった鎌田正澄玄台が、麻沸湯による全身麻酔の方法を、門弟の松岡肇に口述筆記させたもの
であり
 1846年のモートンや1847年のスノウの記述よりも前
の著述で
 麻沸湯論は麻酔科歴史上の非常に重要なもの
である。

『外科起廃』はあちこちで版本や写本が公開されていて、
 江戸時代、華岡流麻酔術導入後の日本の外科の実態
がよく分かる書物である。

|

« 流転する書物 「痕跡本」 | トップページ | 食べたいといったときに食べさせて上げよう »

コメント

「麻沸湯論の現代語訳」タイムリーなご紹介ありがとうございます。
ちょうど時代ミステリの和田はつ子先生の近著『大江戸ドクター』の著者インタビューを始めたところで、非常に参考になります。
『大江戸ドクター』は、冒頭が歯科麻酔による歯抜きのエピソードからなんですよ。

投稿: 雀部陽一郎 | 2013-11-19 16:36

 雀部陽一郎先生、お役に立てたようで何よりです。
 愛媛大学の土手先生は麻沸湯関連のテーマで今年度の武田の杏雨書屋研究助成を獲得されたとのことで、今後のご活躍が期待されます。

投稿: iori3 | 2013-11-19 18:56

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 華岡青洲の全身麻酔薬「麻沸湯」の全貌が分かる「麻沸湯論(天保十 1839)」現代語訳・英訳@愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻 病因・病態領域麻酔・周術期学講座:

« 流転する書物 「痕跡本」 | トップページ | 食べたいといったときに食べさせて上げよう »