朝日新聞北海道版渡辺康人記者(たぶん旭川支局勤務)が医学的にウソを含む助産師の言い分を垂れ流して妊産婦を不安に陥れている件「赤ちゃんがツルンと生まれるのが健康的」というのはデマ
助産師というのは
国家試験に合格して看護師免許を取得した後、専門の学校もしくは大学の課程等で1年以上の規定の修学(助産経験が必要)を経た上で、国家試験に合格して助産師免許を得た者
というわけで
看護師免許(修学3年以上)+助産師免許(修学1年以上)
と
最低4年間は医学・看護に関する勉学・実習を経た
上で
看護師・助産師の2つの国家試験に合格した医療従事者
のはずだ。
ところで、次の文章は正しいか。
1. 煙草のニコチン等の毒素は、妊娠中、胎児の生殖器に貯まりやすい
2. 女性には「産む力」が備わっているので、それを高めればどんな場合でも難産になりにくい
3. 出産時には、多くのカロリーを消費するので、分娩によって胎外に出る赤ちゃんと胎盤および出血量の総量以外に、3-4kgも体重が減る
4. 食品添加物に含まれている催奇性物質は、胎児の生殖器に貯まりやすい
もし、こんな文章に
○
をつけたら、国家試験に失敗することは間違いない。
ところが、なぜか現役助産師が、上記のようなことを平気で明言し
朝日新聞北海道版の渡辺康人記者が記事にしている
のである。旭川の話だから、たぶん旭川支局勤務だ。
すげーよ、朝日新聞北海道版の【健康のつくりかた】欄担当の渡辺康人記者。
デタラメな言説を新聞に掲載
して
少子化の上、妊娠回数が減り、ただでさえ経験が少ない妊産婦の不安を不必要に煽り立てる
のか。
問題の記事はこれだ。
健康【健康のつくりかた】赤ちゃんを「ツルン」と産みやすく
写真:「心も体も緩めて」。気さくな雰囲気で母親に接する北田恵美助産師=旭川市永山8条15丁目の助産院「あゆる」■十分な運動と適度な食事を
【渡辺康人】究極の「健康のつくりかた」を考えるうち、健康な妊娠、出産こそがその第一歩ではないかとの思いに至った。私が勤務する旭川には、母子の健康維持と自分らしい出産を尊重することで知られる道北唯一の入院施設付き助産院「あゆる」がある。北田恵美助産師(51)に妊婦へのアドバイスを聞くと、その一つひとつに明確な根拠があった。
「妊婦さんだからと特別にすることは何もないんです。食も運動も本来当たり前のことをやるだけ」。病院の助産師から2005年に独立して助産院を開業した北田さんは、出産間もない母子の世話をしながら話し始めた。
助産師は分娩(ぶんべん)の介助や健康指導ができる国家資格。産科病院に所属することが多く、道内では独立したベッド付きの助産院は札幌に数カ所と、旭川、釧路、網走に1カ所ずつあるだけだ。治療や帝王切開などの医療行為はできないが、あゆるでは、病院なら数分で終えてしまう産前健診に1時間かけ、出産前後も日々の生活から食、運動、家族関係、悩みの解消法に至るまでじっくり相談にのる。
出産時は分娩台を使わず、入院部屋を兼ねた畳敷きの場所で自ら望む姿勢で産むことができる。(略)
北田さんは、女性が自然に備えている「産む力」に着目。適度に食べ、動き、眠るという太古から繰り返してきた日常生活がきちんとできていれば、健康で自然な出産の確率が高まると考える。表が北田さんの主なアドバイス。「ツルンと健康に赤ちゃんを産みやすくする基本」だそうだが、どれも一見よく言われる健康法だ。
不摂生で食品添加物などもへっちゃらに食べる小太りの私。「不健康といえば不健康だけれども、日常さほど支障は感じない。出産ではそんなに違いが?」とぶしつけに質問してみた。すると、「大人はご自由に判断されていいんじゃないですか。でも、妊婦さんは違うんです」と丁寧に根拠を説明してくれた。
【たばこ】胎児に十分な栄養が行き渡らず、流産や先天異常に陥りやすい。呼吸障害や乳児突然死症候群の原因にも。また、有害物質が胎児の生殖器にたまりやすい。
【運動】出産に備えて体力は重要。陣痛から出産まで一般に7~15時間。その間に体重が3~4キロ(赤ちゃんの重さを除く)も落ちるほど体力を要する。また、運動不足で太ると産み出す力が弱まり、帝王切開や出産後の大量出血の危険が高まる。妊婦は運動するなとか、ふっくら体形が「安産型」というのは昔の考え。体の冷えも大敵なので体を動かして新陳代謝を促す。
【健康的に食べる】特に夜10時以降の食は肥満の元。白砂糖は太るだけでなく、カルシウムの吸収を邪魔し、健康な出産を妨げる全身の冷え、むくみにつながる。逆に栄養不足も出産時の体力不足や低体重児を招きやすい。いずれも帝王切開のリスクが高まる。また、低体重児は将来メタボリック症候群になる割合が高い。食品添加物も妊娠時は特に注意。催奇形因子など遺伝子を傷つける有害物質が胎児の生殖器にたまりやすい。
【リラックス】母体へのストレスは出産時間を長引かせ、ストレスホルモンが子どもの性格に影響を及ぼす可能性がある。
◇
北田助産師は「女性は妊娠をきっかけに命や健康、食べ物についていろいろと考えるようになる。自分の意志で決め、実践することで、どんな出産であれ結果に納得しながら子育ての出発点に立てる」と話す。
◇
■妊婦さんへのアドバイス
(1)たばこを吸わない
(2)運動をする
・助産院あゆるではヨガ教室も開いているが、おすすめは1日1時間歩くこと。
(3)健康的に食べる
・過食も小食も出産にはよくない。食品添加物や白砂糖は避ける。
(4)心を緩める
・自分を取り巻く様々なストレスから解放される状況を、出産時までに意識的に作る。
え〜と、この助産師は
医学的にはウソな事柄
と
正しい事柄
を
混ぜ合わせて発言する
という、
非常に厄介な言説で眩惑
してるけど、
ウソに本当のことを混ぜる
というのは
その発言の内容はウソ
ってことだ。
でだ。
お産は終わるまでは「安産かどうか分からない」
のである。いくら
ツルンと産んだ
としても
その後、子宮がうまく収縮せず、弛緩出血を起こし大量出血、母体が死に瀕する事態
だってあり得る。その時
助産院には輸血の備え
はないのだから、当然
病院への救急搬送
をしなければならず、
一刻も早く輸血をしなくてはいけない
のだが
救急搬送にかかる時間の分
だけ
救命の確率は設備のある病院での出産よりも低くなる
んだけど、
そうしたお産での「急変」というリスク
が
全く考えられてない
のが
上記「助産師のアドバイス」
だ。
更に言えば、
帝王切開は、母体と赤ちゃんを守るために行われる医学的介入
なのであり
帝王切開で産んだからといって、お産の価値が下がるわけではない
のだが、上記の
ツルンと健康に赤ちゃんを産みやすく
という言い方は
陣痛が起きて、下から産むのが健康
という
帝王切開に対する世間の無知無理解を助長
し
帝王切開で産んだお母さんたちのストレスを増大させる
という点では
医学的に明らかに有害な発言
だ。単に
助産師が帝王切開等の医療介入ができないので、自分がすべてを仕切れないお産を「悪」としてレッテル貼りしているだけ
なんじゃないの?もしくは
難産になって助産師の手に負えないお産になるとしたら、妊婦の心がけが悪い
という
助産師の責任転嫁
ってだけじゃないのか。結局
助産師の方がエライので妊婦は言うことを聞いていれば良い
という、
どう考えても「自信過剰」な視点
に、一片の疑いも持っておらず、
助産師が言う「健康的なお産」にならないのは「妊婦の不行き届き」
と考え、
お産が一歩間違えると、母子ともに死亡するかもしれない危険を普段からはらんでいる事象
であることを
ガン無視
しているだけだろう。要するに
いいお産は助産師の手柄
で
医療介入が必要な難産は妊婦の怠慢という誤った言説の垂れ流し
以外のなにものでもない。この言説が守ろうとするのは
助産師自身のプライドだけ
だ。
なおかつ、お産に関しては
医師より助産師がエライ
と考えているのだろうね。
分娩を扱う数
でいえば、現代日本の産科の現状では、
大きな病院の産科で1人の医師は年間100件以上のお産を扱う
ので、
産科医は10年もしない内に、自宅出産を扱ったり助産院でお産をとる助産師が一生かけて扱うよりも多くのお産を扱う計算
になる。つまり
分娩を扱う数から見た場合、圧倒的に産科医の方が助産院や自宅分娩を扱う助産師よりも経験が豊富
なのである。現在
自宅出産や助産院助産を扱う助産師はお産のすべてにわたってプロ
だと思われているのは
過去に病院出産よりも自宅出産が多かった時代の記憶の残存
であって
医学的な事実とは反する
のである。
ちなみに、自宅分娩と病院等での施設分娩の数が逆転するのは1960年代初めである。お産子育て向上委員会が厚労省の人口動態から作成したグラフを拝借する。
だから
50年以上も前の話があたかも現在も「事実」であるような錯覚が日本にはまだ残っている
ということだ。
しかしこの記事を書いた
渡辺康人記者
というのは、
取材後に医学的なウラを全く取らない取材方法
で
聞いたことをそのまま垂れ流す
のが
記者としての基本姿勢
なのか。すげーよ、朝日新聞北海道報道センター。デスクもチェックしてないんだもんな。デスクとしては
妊娠関係はヒマネタ扱い、どうせ、自分は関係ないからオールパス
ってことか。
それにしても
かつては『科学朝日』を刊行して科学関連の記事には自信を持っていた朝日
がこんな
トンデモ言説の流布・宣伝の片棒を担ぐ
とはね。
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コメント
いつも有益なる情報、深い分析には心より感謝申し上げます。
産科医療業界を揺るがした「大淀病院事件」から早いもので5年以上経ちますが、その初報は毎日新聞奈良支局(当時)の青木絵美記者と林由紀子記者が手掛けたものでした。
先日、何気なく毎日新聞社HP新卒採用に目を移しますと20名程の社員紹介の中で、林由紀子記者が顔写真入りで登場していました。ご自身のこれまでの歩み、思い出深い事績、一日の流れがまとめられていました。
モットーとして「人の心に寄り沿う記事を」として、一見すると大いに結構なことに見受けられます。しかし、時として涙する者にとっては非情で避けうることができなかった現実、限界というものがあろうかと思います。医学的にいかに奮闘しても避けられなかった悲劇に直面した「被害者」に寄りそう記事を書いた後に残されたのは奈良県産科医療の荒廃がより一層加速した現実でした。
青木・林両記者のみに責任があるという積りはありませんが、医学・医療の限界・現実を率直に受け止め理解した上での報道ではなしにひたすら「人の心に寄り添う記事」を印篭の如く社会に突き付けられたらまたしても大淀病院事件とその後の医療崩壊の再来を招きかねないと危惧した次第です。
今後ともマスコミ批評、特に医療報道に関する深い分析力、洞察力に基づいた解説を期待しております。
投稿: 農夫 | 2014-02-20 16:37