小南一郎『唐代伝奇小説論 ― 悲しみと憧れと ―』 岩波書店 6800円@3/19発売
小南一郎先生の御著書が、岩波書店から明後日発売予定である。
唐代伝奇小説論 ― 悲しみと憧れと ― 小南 一郎■体裁=A5判・上製・カバー・256頁
■定価(本体 6,800円 + 税)(未刊)
■2014年3月19日
■ISBN978-4-00-025954-5 C0098
思うに任せぬ立身出世、愛し合っても別離を選択せざるを得ない男女関係―。いつの時代も現実社会は矛盾に満ち、不条理な出来事が多く発生する。女性を主人公とした虚構世界の様々な恋愛悲劇に、唐代の知識階層に属する作者たちはどんな思いを込めたのか。人生とは、運命とは何かと語りかけてくる作品群を、丹念に読み解く。
専門外の方は、あまり小南一郎先生をご存じないかも知れない。
しかし、京大中国学の先生の中でも、指折りのお一人であることは間違いない。
研究対象とされる領域は広く、甲骨文字、『楚辞』、五経等儒学経典、西王母を始めとする神仙研究、志怪小説、唐代伝奇、敦煌変文、中国の仏教説話、そして正史『三国志』など、ざっと上げただけでも多岐に渡る。そして、恐ろしいことに
論証は常に緻密
である。
2006年3月に京大人文研を退任された時の著作目録は以下に。
小南一郎教授著作目録(PDF)
人文研におられる頃は
その内、床が抜けるのではないか
と噂されるほど、研究室内の蔵書を誇っておられた。毎年、新たに書物を購入され、その全てに目を通し、少しでも目新しい知見が得られれば、それを研究に取り込む。膨大な文献を博捜するのみならず、考古学的な文物にも目を配り、近年は、民間文学の現場にも足を運ばれて調査を続けておられる。何かと成果を求められる昨今の慌ただしい研究の世界において、
篤実
と表現するのがふさわしい、希有な存在である。
小南一郎先生の学風の特徴はその広さ、厳密さと共に
文章の素晴らしさ
にある。京大の先生方といえば
悪口を言われて一人前
という風土がある。これには、京都という土地柄が醸成する文化の1つ、
ただ褒められているだけなのは、実はちっとも褒められてない
という裏の意味がある。京雀の流れを汲んだわけでもないのだが、口さがないことでは定評がある筈の京大の先生方が、わたしの学生時代、老いも若きも、
筆が立つ
と潔く冑を脱いでいたのが、小南一郎先生である。それは今も変わらない。
まだ、先生の新著を目にしていないのだけれども、唐代伝奇を正面から扱った上記単行本は、先生がこれまで書き、研究、発表されてきたテーマ・論文を更に磨き上げて、上梓されるものだろうと思う。
先生の新著に触れられるとは、実に幸せな気分だ。今から待ち遠しい。
なお、小南一郎先生の研究会「桃の会」が3/29(土)に京大附属図書館で開かれる。
日時:3月29日(土)13:00~於京都大学附属図書館3F共同研究室5 館内地図
※参加の方は、附属図書館1Fのカウンターで身分証を提示、「共同研究室5を使用する」と 図書館員の方にお伝えください。
・丹羽健:宗炳「明佛論」における山水の仏教的機能
・邵磊:荻生徂徠の『文戒』について(仮)
・小南一郎:西域の伏犠・女媧[カ]
(発表順ではありません)
興味とお時間のある方はどうぞご参会下さい。
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