NHKラジオテキスト まいにち中国語4月号がよく出来ている件
ちょっとした知り合いがエッセイを連載していると教えて貰ったので
NHKラジオテキスト まいにち中国語 4月号
を買ってみた。多田麻美さんのエッセーが載っているのである。生き生きとした北京の今を伝える、冒頭の素敵なカラー写真や文中のスナップを夫君が担当されている。なるほど、面白い。
ところで、3/31から始まる新しいラジオ講座のテクストは
小野秀樹東大准教授 すぐに使える中国語
なのだけれども、これが実によく出来ている。
中国語を学び始める時の最重要ポイントは
最初の1ヶ月で発音を身につけられるかどうか
に掛かっている。
最初の1ヶ月がうまく乗り切れるかどうか
が
その後、その人が中国語が話せるようになるかどうかの分かれ道
だ。
わたしが学んだ教科書は、以前にもそのことに触れたけれども
文革期に作られた『基礎漢語(Mandarin Primer)』上下(中国商務印書館)
で、元は
中英対訳形式(日本では日本語訳が東方書店から出版された)
である。語学の教科書としては大変に出来がよく、
発音パートはみっちり1ヶ月かけて発音の練習をする形式
で、
1970〜80年代には世界中の大学で中国語の教科書として使われていたベストセラー
なのだが、いかんせん
発音練習は単調
なので、大学の語学クラスならともかく、
いろんな経歴の多数の人が学ぼうとするラジオ講座で同じことは出来ない
のだ。
そこで、この「すぐに使える中国語」なのだけれども
単母音・複母音・声調・子音
という
中国語の発音のキモとなる部分
をうまく組み合わせて
飽きが来ないような、短文やフレーズを組み立てる
という、行きとどいた作りになっている。その
発音練習を兼ねる例文が、実際に使える例文
というのが素晴らしい。
発音練習の何がつまらないか
といえば
せっかく中国語が発音できるようになったのに、意味のあるフレーズはまだ教科書に出てこない
ことに尽きる。その
発音練習時期の教科書の弱点
を
見事に克服している点
で、まずは感服した。だから
一般的な初級中国語の教科書では、まず最初の部分で見かけないような漢字
がたくさん出てくる。もっとも
オトナが中国語の勉強をする
と考えるならば、こうした
一般的には使われるが、初級の教科書に最初からは出てこない単語
は、
発音練習という機会を生かして、慣れさせる
のがイイと思う。どうせその内使うようになるからだ。
大体、1980年代中頃から90年代にかけて、国内で使われていた中国語の教科書というと、上記の『基礎漢語』は別格だったのだが
絶対に中国人が使わない中国語
が、平気で載っていた。中国語としておかしな例文もあれば、
こんな表現、実際にはしないだろう
という不思議な口語文もあり、
留学するとまずその「言語障壁」にやられるパターン
が多かった。だから、中国へ留学へ行くと
自分が習ってきた中国語を一度壊してから、新たに生きた中国語を身につける
ことになった。これができない日本人も少なからず存在して、
留学生寮の自室に引き籠もって、日本人としか話をしない生活
を送り、さして中国語が上達しないままに日本に帰国する、なんてことになった。彼ら彼女らが何をしに中国に留学していたのかは謎だ。
そうした不幸な時代を経て、21世紀の今
使える中国語が本当に初級のテクストに載る時代
を迎えた。小野秀樹さんのテクスト編集の苦労と、
この教科書を学ぶ人達には、是非とも中国語を好きになって欲しい
という熱意の元、工夫を凝らした才智に頭が下がる思いがする。
一度、中国語に躓いた経験のある人にも、オススメ。
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