厚労省の「産科破壊計画」発動 手術技術の進歩で帝王切開をより迅速に行えるようになったら「時間が短くなった」ので「手術料をダンピング」母子二つ以上の命を救う「帝王切開」をなんだと思っているのか 最前線の医師の心を折るだけ
緊急帝王切開というのは
このまま分娩を進めると母子ともに危険
と判断されたとき、
迅速かつ確実に行われなくてはいけない緊急手術
だ。現場はいつでも
赤ちゃんもお母さんも救いたい
と思っているのだ。
時には
死戦期帝王切開
と言って
母体が瀕死の状態で行われる
こともある。当然
極めて迅速に行わなければ、母も子も危険、どちらかあるいは両方が命を落とすことさえある
のだ。
基本的に
早く確実に行う
のが
帝王切開
であり、
母体と赤ちゃんの負担を減らす
ために、日々、手術の手技は進歩している。
ところが、
こうした現場の日々の努力
に対し、厚労省は
時間が短縮できたんだから、その分、手術料を下げる
という
ブラック企業顔負けの論理
で、
医療費抑制
の旗の下、
「帝王切開手術料」の値下げに踏み切った
のである。
共同より。
帝王切開手術料2万円下げ 4月、人件費減で厚労省厚生労働省は6日までに、帝王切開で出産する場合の手術料を約2万円引き下げると決めた。現在22万1600円だが、4月から20万1400円にする。入院基本料などは別にかかり、窓口で原則3割を負担する。
帝王切開手術の所要時間が短縮され、人件費が減ったという調査結果が出ているためで、2014年度の診療報酬改定で見直す。当初から手術を予定していたケースだけでなく、自然分娩中などに何らかの問題が生じて緊急手術をした場合も同じ金額。
妊娠32週未満などで手術が難しい場合は現在24万5200円だが、3万円弱引き下げて21万6400円にする。2014/03/06 17:23
えっと
手術の手技が進歩して、従来より迅速に帝王切開が行われるようになった
ら
短くなった時間分、手術料を値下げした
ってことですか、厚労省。しかも
緊急帝王切開も予定帝王切開も同じ額で算定(これは前回の改定時でも「差」を認められてないというヒドい話)
って
どれだけ現場をコケにして、優れた手技を持つ一線級の産科医の逃散を助長したい
のですか、厚労省。
人間の命を救う手技を、技術が向上して時間が短縮されたからと、安く買い叩く理由
を知りたいものだ。
緊急帝王切開を行っている現場の中には
最前線の三次救急
が含まれる。休日の深夜早朝といった
医療スタッフが手薄になる時間
だろうと、おかまいなしに
緊急母体搬送
で運ばれてきたお母さんに
何とか母子ともに助かって欲しい
と
緊急帝王切開
を施す。もちろん、
新生児担当の小児科医も待機
しており、
赤ちゃんの状態が良くなければ、すぐにNICUに運び込む手筈
になっているのだ。こうして
緊急帝王切開が行わなければ失われていた命
あるいは
手術が遅れれば、状態が良くなくなっていた命
に対し、
考え得る中で最善の状況で医療を受けられるようにしている
のが
三次救急の産科の現場
だ。もっとも
こうした難しい状況
では、残念ながら
すべての出産が100%ハッピーな結果になるとは限らない
のではあるが、それでも
命を守りたい
という現場の気持ちは変わらない。
36時間72時間連続勤務
といった
過酷な産科・新生児科勤務
の下、
最前線の緊急帝王切開
は行われているのだ。その努力、高度な技術を
厚労省自らが安く買い叩く
というのだから、日本は本当に素晴らしい国だ。
一秒でも早く
という
原則
が
手術料値下げの「要因」
なのだから
努力する奴は阿呆
と
国が自ら言っているのと同じ
じゃないか。
そうでなくても
高齢初産の増加
によって
帝王切開は増加の傾向
にある。
難しいお産が増えている
のだけれども、
難しいお産に対する「現場の努力を買い叩く」
ということは
これから出産を考えている35歳以上の女性が「出産できる場」を減らす
のと
同意
だと、厚労省は気がついてないのか?それとも
現場で執刀し、麻酔し、手伝う医療スタッフ
は、
高度な技術、高い職業的倫理を安く買い叩かれても、唯々諾々と、厳しい労働環境を受け入れる奴隷
だとでも、思っているのか?
労働を管轄する監督官庁の厚労省が
ここまでブラック
ならば
日本のブラック企業が減らない
のも道理ってことね。
| 固定リンク
« 初めての美容院 癌の子ども達のために髪の毛を寄付した3歳の女の子 | トップページ | 厚労省の「産科破壊計画」発動(その2) 重度新生児仮死蘇生術や吸引分娩といった高度な医療技術で母子を救う技術も軒並み「ダンピング」赤ちゃんとその家族のその後の人生を左右する重度新生児仮死蘇生術のお値段はたったの「27000円(26年度以降)」年間100万件程度の出生数に対し産科の体力を更に削るつもりなのか »
コメント
自分が勤務していた最後の年には、帝王切開の執刀時間は25分を切っていました。自慢するわけではありませんが、その5年前には30分弱かかっていた手術です。あまりにも手術件数が多くて、今日中にこの件数をこなすにはどうやったら、とか、考えているうちにこうなりました。上司からは「早ければいいってもんじゃない」とくぎをさされていたので、決して「とてもよいこと」ではないと思っています。スタッフには「早くおわると(後始末に時間をかけることができて)ありがたい」と言われたし、出血量も少なく、腰椎麻酔手術ですから「もう終わったんですね」と患者さんにも喜ばれました。でも一番は、「自分が次の手術まで少しだけ長く休める」ことがありがたかった。その手術でいくらお金がもらえるのかなんて考えもしなかった勤務医時代ですが、わたくしのそういう努力というか、どうしようもなく習得するしかなかった技術も、手術しなくなった今ではもう取り戻すことができない昔の話です。今思うのは、それでも自分の手術は日本の国から高く評価されていた時代にしたんだから、よかったな、ということだけです。とりとめない思い出話をしてしまいました、すみません。
投稿: suzan | 2014-03-07 09:01
suzan先生、貴重なコメントありがとうございます。
帝王切開にかかる時間を短縮しなければ間に合わない状況
を
厚労省が全く無視している
のはぞっとします。
投稿: iori3 | 2014-03-07 11:04