STAP細胞 情報戦の様相 こんどは石井委員長の論文に画像加工の疑い→委員長辞任の意向だそうだが実験ノートは存在→後任の委員長は弁護士に
発端の一つは昨日15:14のタイムスタンプがついた、科学ライター片瀬久美子さんのblog「warblerの日記」の記事。
石井俊輔氏が責任著者となっている論文に関する疑義を頂きました
上記記事によると
理化学研究所の石井俊輔上席研究員が責任著者となってる論文に疑義があるとして、匿名の方から相談されました。
なお、石井氏はSTAP細胞論文の調査委員会委員長をされている方です。相談者から頂いた資料を公開し、他の方々にも検証して頂きたいと思います。
(以下略)
ということで、
(1) Oncogene. 2008 Feb 14;27(8):1045-54. Epub 2007 Aug 13.
(2) J Biol Chem. 2004 Oct 22;279(43):44582-9. Epub 2004 Aug 11.
の2本の論文について
画像の加工・切り貼りが行われているのではないか
として
匿名の相談者から寄せられた検証のための画像を載せたpdf
が転載されている。
しかし
匿名の相談者
って、
どう考えても研究者か元研究者
だよね。一将功成りて万骨枯る、死屍累々のバイオ研究だと、いくらでも
実験データの検証ができる人材
が
野に放たれている
のだ。寮の先輩も農学部卒だが、その後医学部の院でバイオのソルジャー(その頃はまだピペドというもの悲しい蔑称はなかった)となり、学位を貰ったところまでは聞いたけど、その後、お元気ですか?
さて、この
画像加工疑惑
に対し、石井俊輔氏の反論は早かった。昨日中にラボのサイトで、次のような反論を行っている。
'14/04/24 インターネット上で指摘されている当研究室からの論文について(PDF)
趣旨は
(1)については、論文の内容と合うように、レーンの番号を入れ替えた。ただし、元データは存在するので、それを提示している(実験ノート)。出版社には訂正を申し入れた。
(2)については、問題ない
という内容だ。
STAP細胞問題と根本的に異なるのは
実験ノートが存在して、元データをすぐに公表した点
である。てか
普通はこの形式で疑念に答える
わけで
STAP細胞問題
は
実験ノートの該当箇所と元データを記者会見で公表出来なかった時点
で
科学の話としては終わっている
のである。
で。
今朝の毎日がこの件を取り上げた。
<STAP問題>調査委員長の論文に疑義「画像順入れ替え」
毎日新聞 4月25日(金)5時30分配信新たな万能細胞「STAP細胞」の論文に不正があったとされる問題で理化学研究所の調査委員長を務めた石井俊輔・理研上席研究員が24日、2008年に責任著者として発表した論文で画像データの順番を入れ替える誤りがあり、訂正の手続きを取ったとの文書を公表した。この論文については、インターネット上で「画像に疑義がある」との指摘が出ており、理研広報室は「正式に通報があり、内容の信頼性が高いと判断すれば、調査を始める」と話す。
問題になっているのは、がんが発症する仕組みに関して海外の専門誌に08年に発表した論文。著者8人のうち石井氏ら2人が責任著者を務める。ネット上では十数匹のマウスごとに遺伝子の発現状態を示した2枚の画像に、切り張りや使い回しのように見える跡があると指摘された。民間企業が運営する画像分析サイトに毎日新聞が調査を依頼したところ「画像の加工が複数みられた」との判定だった。
画像の切り張りや流用については、STAP細胞論文に関する調査委員会の最終報告でも問題視され、それぞれ改ざん、捏造(ねつぞう)と認定された。
これに対し石井氏は24日夜、自らの研究室のホームページに反論を掲載、「論文を検証し(実験データを)説明の順番になるように、入れ替えていることが分かった」と説明。既に出版元に訂正の許可を得たと記し、実験ノートのコピーも公開した。
ネット上では04年に発表した別の論文でも画像の加工が指摘されており、これについて石井氏は「問題はないと考えている」としたうえで、「疑念を抱かせてしまったことをおわび申し上げる」と書いた。
理研広報室は「文書の公表は、石井氏個人の行為で、理研としては情報を収集中」と説明している。【渡辺諒】
毎日はまだ科学の方面から突っ込んでいるのだが、産経はその点では地力があるとは思えず、当然
突っ込む方向も「責任問題」
となる。その分、掲載時間も毎日より早い。
産経より。
STAP問題、理研調査委員長が辞任へ 自身の論文データに疑義
2014.4.25 02:08新型万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文不正問題で理化学研究所の調査委員長を務める石井俊輔・理研上席研究員らが執筆した論文に対し、インターネット上で疑義が指摘されていることが24日、分かった。石井氏は同日、産経新聞の取材に対し委員長を辞任する意向を明らかにした。
「改竄ではないが…隙を作った」
この論文は乳がんを抑制するタンパク質に関するもので、平成20年に理研などのチームが英学術誌に発表。石井氏が責任著者の一人になっている。遺伝子を調べる実験結果の画像の一部を入れ替えた改竄(かいざん)ではないかとの指摘が出ていた。
石井氏は取材に対し「オリジナルのデータがあり、不正な改竄ではない」と否定。その上で「疑義を指摘された以上、その部分を突かれると理研や委員会に迷惑をかける。調査委員長がこのような隙を作ってはいけない。不本意だが本日、理研に委員長の職を辞したい旨を伝えた。慰留されても意志は固い」と述べた。石井氏によると学術誌側も不正でないことは認め、訂正を承諾しているという。
理研は2月中旬に調査委を設置。委員長の石井氏は分子遺伝学が専門で、16年に発覚した理研の研究者による血小板に関する論文不正の調査委でも委員を務め、改竄などを認定した。
STAP論文をめぐっては、調査委から不正を認定された小保方晴子・研究ユニットリーダー(30)が不服を申し立て、再調査の実施と不正認定の撤回を求めている。責任者である石井委員長が自身の疑義で辞任の意向を固める異例の事態となり、一連の問題はさらに波紋を広げそうだ。
さて、この一連の報道についてだけど
24日に発覚→毎日が民間企業が運営する画像分析サイトに調査を依頼したところ「画像の加工が複数みられた」との判定
っていう
時系列の関係
がよくわからない。
片瀬久美子さんのblogに掲載されたのが
インターネット上で問題になっている
ということの中心だとすれば、
画像判定の会社が凄腕
ってことになるんだが、
片瀬久美子さんに相談した「匿名の人物」が毎日にも相談していた
ということも考えられる。ま〜、ともかく
石井委員長を辞任に追い込む
ことにはなったのだが、
いよいよ理研の内紛の様相
を呈しているように、外部には見られてしまうところが理研としては痛い。
理研には、今年
iPS細胞の臨床応用
という、人類にとって、大きな課題に取り組んでいるチームがあるんだがな。
仮説レベルに立ち戻ったSTAP細胞
より、iPS細胞が実際に治療に使えるかどうかの方がよほど大事なんだけど、
STAP細胞問題がマスコミ的に「おいしい」事象
になったものだから、
科学的な問題は脇にどけても出来る話
ばかりでかまびすしい。
目先の自社媒体の売り上げや視聴率しか考えてない
からだ。
で、
毎日の委託した民間業者の指摘する「画像の加工が複数みられた」箇所
って、上記反論(順番を変えて切り貼りした)以外では、どの部分を指すのか、毎日はきちんと説明してくれるのかな。
続き。(19:41)
石井氏の辞任の意を受けて、後任の調査委員長が決まった。NHKより。
調査委員長辞任へ 再調査に時間も
4月25日 18時52分STAP細胞を巡る問題で、小保方晴子研究ユニットリーダーがねつ造などの不正行為を行ったと認定した理化学研究所の調査委員会の石井俊輔委員長が、みずからの論文で画像の切り貼りが行われていたと指摘され、委員長を辞任することになりました。
石井委員長はSTAP細胞を巡る問題で小保方晴子研究ユニットリーダーがねつ造などの不正を行ったとする報告書をまとめ、小保方リーダーからの不服申し立てを受けて再調査を行うかどうかの審査を進めていました。
しかし、24日になって7年前に発表した乳がんの論文で遺伝子の実験結果の画像を注釈を付けないまま、切り貼りしたりしていたなどとする指摘があり、石井委員長は理化学研究所に対し、委員長を辞任する意向を伝え、承認されたということです。
これについて石井委員長は「実験ノートのコピー、オリジナルデータを示し、研究不正ではないことをホームページに掲載しました。しかし、このような状況で、委員長の任務を継続することは迷惑をおかけすることになります」などとするコメントを出しました。
後任の委員長には調査委員会のメンバーで、弁護士の渡部惇委員がなるということで理化学研究所は問題が指摘された石井委員長の論文についても調査を開始したことを明らかにしました。
委員長の交代で小保方リーダーの不服申し立てに対し再調査を行うかどうかの判断は、さらに時間がかかる可能性が出てきました。弁護士「小保方氏も不正ではない」
これについて、小保方晴子研究ユニットリーダーの代理人を務める三木秀夫弁護士は「石井委員長が同じようなことをしていたにもかかわらず、小保方リーダーの論文を改ざんと結論づけたことは残念だ。石井委員長が不正ではないと言っているならば、小保方リーダーも不正ではないというのが感想で今後、調査委員会がその考えに合わせて判断してくれるのではないかと考えている」と述べました。
また、後任の委員長に調査委員会のメンバーで弁護士の渡部惇委員が就任することについて、「法律家としてきちんとした判断を期待したいが、同じメンバーでは結論が変わらない可能性がある。調査委員会のメンバーを変えるよう求めたい」と述べました。
というわけで
後任は調査委員会のメンバーで弁護士の渡部惇委員
だそうだから、今後、メディアを含めた情報戦の局面では
弁護士 vs. 弁護士の論争
となる。これまで
科学者の語義 vs. 法律家の語義
で論戦してたのだが
それぞれの定義の範囲が違う
ため、
かみ合った議論
ではなかった。今後は少なくとも
同じ土俵で勝負
って話だから、思う存分、それぞれの立場を主張して頂きたい。
まあ、ここまで来ると、
科学的議論
ってことにはならないので、後は
感情論
とか
手続論
が、いよいよ報道の中心になるんじゃないの。それは
科学の勉強をしたくない、あるいは科学の専門ライターを身内に抱える経費をケチってきたマスコミが望んできたこと
だろうしな。
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