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2014-07-04

台湾中央研究院の『正統道藏』が涵芬楼本の画像を貼ってくれている件

テクストデータベースを作るのなら、かくありたい。

道教の経典を収めたものを
 道蔵
というが、一般的には明の正統10年(1445)に編纂された
 正統道蔵
とその続編の
 万暦続道藏(明・万暦35 1607)
を合わせて『正統道蔵』としているのを、基本文献として使っている。で、この明の『正統道蔵』の版木は、その後も長く保存されていたのだが、1900年の
 義和団の乱
で、北京に八カ国連合軍が入城した時に焼けてしまった。だいたい、
 八カ国連合軍が焼いたり、壊したり、略奪した文物
の中でも、
 書籍

 漢字が読めなかった各国の軍人たちが、不要な物としてぞんざいに扱った
ために、多くの貴重な書籍が悲惨な運命を辿っている。愛書家には気が狂いそうな話だ。
今使われている『正統道蔵』は、版木が失われた後に、傅増湘や梁啓超等が提案し、1923年に上海商務印書館が影印した
 涵芬楼本
で、底本は、北京の道観(道教の寺院)白雲観が所蔵していた『正統道蔵』だ。これは、道光25(1845)年の重修本である。涵芬楼というのは、上海商務印書館のことだけど、ついでにいうと、この上海商務印書館が集めていた貴重な書物は
 昭和7年、日本軍の攻撃で焼けてしまった
のである。戦争は文化財の敵だ。
冷房がなかった大学院生の頃、毎日35℃を超える京都の下宿で、頭が働かないので、せめても読めるものをと、一冊一冊が薄くて軽い、涵芬楼版の宋代随筆の叢書をベッドに寝転んで眺めていたのだが、扉の裏辺りに
 涵芬楼所蔵の貴重な書籍は日本軍の空襲で焼け失せた
と、どれにも印刷されていて、それを見る度に申し訳ない気分になった。昭和7年1月29日〜2月5日にかけて、上海の最大の印刷会社であり、一方で「書物の宝石」と称される宋版を含む貴重な書籍を多数蔵する東方図書館を併設していた上海商務印書館は、日本軍の空爆を含む猛攻撃を受け、中にあった書籍は烏有に帰した。その当時のレポートが以下に。
大淵鐵太郎「上海商務印書館爆撃の被害状況」『建築雑誌』46(563), 1397-1416, 1932-11-05
この時、焼失した書籍の数は
 古籍が中心の中文書籍 26万8千冊余り
 外国語の書籍 8万冊余り
で、印刷されてから1000年以上経つ、中国史上最も美しい木版印刷の宋版など、中文の貴重書の数では当時随一といっていい蔵書数を誇っていたものが灰となった。日本軍の上海空襲を目撃したエドガー・スノウは『極東戦線』で


それよりも大きな損害はそれに続いて有名な東方図書館が破壊されたことだった。そこには千年以上も昔から伝わる金では買えない、かけがえのない宋時代の古文書が、長年にわたって注意深く保存されていた。民間人が殺されても多くの中国人はそれを許したかもしれないが、この空襲があってからは、日本人を野蛮人であるときめつけるにいたった。彼らにとっては、一切のものに尊敬の念を示さないこと、中国と同じように日本にとってもまた貴重な文化遺産である古典の原本にさえ尊敬の念を示さないことは、理解しがたいことだった。

と記している。今はともかく、少し前までは
 文字の書いてある紙
は、普通の紙ゴミとは分けて、
 惜字炉
で、別に燃やしていた国の話なのである。軍人に学問がないのが当たり前というのは、洋の東西を問わないにしても、かりにも、同じ漢字を使い、『論語』を始めとする中国の古典にも学んできた筈の日本人が、いとも簡単に漢字文化の精髄を破壊したのは、恐ろしい出来事だった。もし、日本に同じ衝撃があるとしたら、
 正倉院を空襲で失うとき
だろうか。東方図書館が火に包まれたとき、言いしれぬ絶望感が中国の文化人・指導者を襲った、と思われる。

さて、『正統道蔵』に話を戻すと、日本には、
 宮内庁書陵部に正統10年刊本が一揃い
揃っている。宮内庁書陵部の
 図書寮文庫所蔵資料目録・画像公開システム
で検索すると
 道蔵経 明版 4139点
と、素っ気ない結果が返ってくるのが
 世界であまり残っていない貴重な正統刊本
なのだ。

で。
 仏典とか道教の経典をデータベース化するときの問題点

 変な字が多い
ということに尽きる。
 変な字
つまり、あまり使われることのない漢字を
 冷僻字
というのだが、こうした文字は
 文字コードが与えられていない
ことが多い。文字コードが存在しないということは
 世界中どこからでも読めることを目指しているテクストデータベースに載せることが出来ない
というのと同義だ。では、
 道蔵データベース
を作るとして、
 文字コードのない冷僻字をどう扱うか
は、頭の痛い問題だ。さらに、仏典でも道教の経典でも、
 御札や仏・神等の画像
が入っている。これらは
 文字情報には起こせない
のである。冷僻字に関しては
 文字画像を直貼りする
というのが、一時期のあまりありがたくないトレンドだったのだが、最近
 台湾研究院の『正統道蔵』データベース

 テクスト部分に該当する刊本の画像をデータベースにリンクさせて貼る
ように仕様変更した。つまり
 この字なんだろ
と悩んだ時には、
 圖
と書いてあるリンクを踏めば
 底本の涵芬楼本がpdfで開く
という寸法。
これは助かる。すごく助かる。家に
 『正統道蔵』のセット
がなくても、ネットに繫げば
 版本の必要な部分が直接手に入る
のだ。どうしたって
 テクストデータベース(釈文ともいう)は不完全
になってしまう。だったら
 現物を貼る
というのは、一番正しい解決策。

東大の大正新脩大蔵経データベースSATも
 大正新脩大蔵経の元画像を貼る
仕様になって久しいが(Macでは操作性が劣るのが悲しい)、やはり
 文字コードのない文字や画像
は、
 現物通し
というのが、一番ありがたい。

さっき、中央研究院の
 新漢籍電子文献資料庫
で検索を掛けていたら
 直齋書録解題

 テクスト+画像直貼り仕様
にバージョンアップしていたのに気がついた。
そうなんだよね。
 冷僻字

 書目
にも多いからな。
ありがとう、中央研究院。

しかし、涵芬楼本の『正統道蔵』をダウンロードできるサイトが中国国内にあるんだけど
 24KB
とか、冗談みたいな速度なので、一つファイルを落とそうとしても
 あと7日
とか、もう絶望的な時間が表示されて困っていたところだった。
全部落とす必要はなくて、
 見たいところだけ
手元にあればいいのだから、中央研究院の『正統道蔵』はオススメ。

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