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2014-10-15

梵巴蔵漢初期仏典対照プロジェクト Online Sutta Correspondence Project

先日、学会発表で、阿含経典に言及した。
阿含経典というと、
 赤沼智善 『漢巴四部四阿含互照録』 1929
という大変な労作に基づいて、漢訳阿含とパーリ阿含の両方を比較対照する、というのが最初の手順である。(パーリ語を読まない人はどうしてるか知らない)ちなみに 『漢巴四部四阿含互照録』 は、先師梶山雄一先生が研究室に置いていたら、某書店が
 先生、ちょっと拝借してよろしいですか
と言って持っていって、その内、先生のご存知ない間に影印本を作った、という故事があり、あの温厚な梶山先生が珍しく大層ご立腹であった。

それもこれも
 紙の時代
のお話。

インターネット時代では
 衆知の結集
が、いともたやすく行われる。最近、阿含経典を使うことがなかったので、寡聞にして知らなかったのだが、
 Online Sutta Correspondence Project
という
 梵巴蔵漢初期仏典対照プロジェクト
が、各国のお坊さんを含むそんなに大人数じゃないグループで、2005年から行われている。
 サンスクリット、パーリ語、チベット語、中国語の各国語初期仏典

 対応関係が分かる
形で掲示されている。
凄い。ともかく凄い。印度学で、必ず問題となる
 平行句もチェック
されている。

もともと印度学は、電子テクストとは馴染みが早く、入力環境が劣悪だった頃から
 テクスト電子化の取り組み
が続いてきた。
その流れが、こうした形で現れている。

少なくとも
 漢訳阿含とパーリ阿含との対応関係
はもちろんのこと、
 梵本等があればそれもチェックできる
システムで、運営グループの諸師には頭が下がる。
特に、出土資料である
 梵本断片
に関して言えば、
 写真が公開されている断片にはリンク
 情報が公開されてない断片には詳しい書誌情報
が明記されている。
以前なら
 図書館に1-2週間籠もって調べていた
ことが、瞬時に解決するのだから、学界を裨益しているのは当然、
 在家出家の仏教徒の信仰にも資する
プロジェクトだ。

律だけ、ざっと見たところ、大きなベースが
 漢訳律は摩訶僧祇律(大衆部)と五分律(化地部)等
 梵本律(断片)は大衆部・説出世部・説一切有部・根本説一切有部等
だ。これに
 パーリ律と蔵律の広律
が加わる。

実際に検索を掛けてみると
 平行句が含まれる梵巴漢蔵すべての仏典がリンク
される。律で言えば、漢訳なら
 四分律・五分律・摩訶僧祇律・十誦律の四大広律
だけでなく
 個々の部派の波羅提木叉
や、あまりにもデカくなりすぎて一つの広律として訳しきれなかった
 義浄訳 根本説一切有部律群
が、ずらずら出てくる。もちろん、パーリ律・梵本断片等も一瞬にして分かる。

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