梵巴蔵漢初期仏典対照プロジェクト Online Sutta Correspondence Project
先日、学会発表で、阿含経典に言及した。
阿含経典というと、
赤沼智善 『漢巴四部四阿含互照録』 1929
という大変な労作に基づいて、漢訳阿含とパーリ阿含の両方を比較対照する、というのが最初の手順である。(パーリ語を読まない人はどうしてるか知らない)ちなみに 『漢巴四部四阿含互照録』 は、先師梶山雄一先生が研究室に置いていたら、某書店が
先生、ちょっと拝借してよろしいですか
と言って持っていって、その内、先生のご存知ない間に影印本を作った、という故事があり、あの温厚な梶山先生が珍しく大層ご立腹であった。
それもこれも
紙の時代
のお話。
インターネット時代では
衆知の結集
が、いともたやすく行われる。最近、阿含経典を使うことがなかったので、寡聞にして知らなかったのだが、
Online Sutta Correspondence Project
という
梵巴蔵漢初期仏典対照プロジェクト
が、各国のお坊さんを含むそんなに大人数じゃないグループで、2005年から行われている。
サンスクリット、パーリ語、チベット語、中国語の各国語初期仏典
が
対応関係が分かる
形で掲示されている。
凄い。ともかく凄い。印度学で、必ず問題となる
平行句もチェック
されている。
もともと印度学は、電子テクストとは馴染みが早く、入力環境が劣悪だった頃から
テクスト電子化の取り組み
が続いてきた。
その流れが、こうした形で現れている。
少なくとも
漢訳阿含とパーリ阿含との対応関係
はもちろんのこと、
梵本等があればそれもチェックできる
システムで、運営グループの諸師には頭が下がる。
特に、出土資料である
梵本断片
に関して言えば、
写真が公開されている断片にはリンク
情報が公開されてない断片には詳しい書誌情報
が明記されている。
以前なら
図書館に1-2週間籠もって調べていた
ことが、瞬時に解決するのだから、学界を裨益しているのは当然、
在家出家の仏教徒の信仰にも資する
プロジェクトだ。
律だけ、ざっと見たところ、大きなベースが
漢訳律は摩訶僧祇律(大衆部)と五分律(化地部)等
梵本律(断片)は大衆部・説出世部・説一切有部・根本説一切有部等
だ。これに
パーリ律と蔵律の広律
が加わる。
実際に検索を掛けてみると
平行句が含まれる梵巴漢蔵すべての仏典がリンク
される。律で言えば、漢訳なら
四分律・五分律・摩訶僧祇律・十誦律の四大広律
だけでなく
個々の部派の波羅提木叉
や、あまりにもデカくなりすぎて一つの広律として訳しきれなかった
義浄訳 根本説一切有部律群
が、ずらずら出てくる。もちろん、パーリ律・梵本断片等も一瞬にして分かる。
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