40代出産を統計だけで評価する海老原嗣生リクルートキャリア特別研究員の狙いは何か
日本中の
産科医・小児科・周産期医療関係者を敵に回す
つもり満々の連載が
プレジデント Woman オンライン
で始まっている。海老原嗣生リクルートキャリア特別研究員が執筆する
ほんとうに40代出産は厳しいのか?
だ。
プレジデントWomanの惹句は
よりよく働く、生きる、輝く! 女性の応援サイト
だそうで、
40代出産に焦点を当てる
というのは、編集部に
1. まだ30代のキャリア女性に「出産のスケジュールを遅らせたい」
2. もう40代になる、なったキャリア女性に「出産は可能だ」とメッセージを送る
ってどちらかの動機があるからじゃないのか。1は言語道断。2は不妊治療にかかる経費から始まることを考えると、そこから出産、子育て、教育と続けるには、子どもの養育に乳母を雇える程度に裕福な階層でないと、しんどいことになるだろう。40代以降の不妊治療費は高額になる。身体へも精神的にも負担が大きい。そこからさらに、若くても大変な妊娠・出産・子育てが始まる。体力は低下している、更年期は近づいている、両親は介護年代だ、そうした年代が40代なのは、いくら見た目が若く見えたとしても、医学的・社会的に避けられない事実だ。
はっきりいう。
人間は生物
だ。
40代で出産する
のは、
人間という生物の生殖能力が衰えた状態
での妊娠出産だけに、
母子双方の生命を賭けた危険な妊娠・お産を引き起こす可能性が高い
のである。そうでなければ、わざわざ厚労省が
高齢初産は35歳以上
と規定しない。それに、
年齢に依らず、誰もがいつでも安全な出産が出来るわけではない
のだ。お産は終わるまで、何が起きるか分からない。
そして、赤ちゃんが健康に生まれさえすれば
母子双方が、子どもが成長するまで「いつでも健常」であると勘違い
させるようなテーマは
不毛
だ。
親が望んだ形で生まれてくるとは限らない。
親が望んだ形で成長するとは限らない。
その時、
40代で親になる
のは、
明らかに親の側に残されている時間が短すぎる
のである。
年齢はハンディになる
のだ。40代で親になりたい人達は、
何か問題が起きた時に十分なリカバーができるのかを自問
して欲しい。若ければ、時間はまだ潤沢にある。若ければ、乗り越えられるかも知れない課題だが、40代には時間がない。
こんなことは起きては欲しくないが、もし、自分の子どもが、社会復帰が見込めないほどの大ケガや大病をしたり、一酸化炭素中毒などで脳にダメージを受けたとして、リタイア年齢に近づいている親達は、家族を守り、子どものケアができるだろうか?
妊娠・出産では問題なく、文字通り
玉のような赤ちゃん
が生まれたとしても、その子が成長の過程でけがをしたり病気をしたりして、思いがけず、亡くなったり、重い障碍を負うことだってある。
出産することだけにターゲットを絞る
と、
元々「子育て」に組み入れられていた、「子どもはちょっとしたことで死ぬかも知れない弱い存在」という事実が見えなくなってしまう
のだ。少なくとも30年前までは
子どもは「無事に成長するとは限らない」という視点
が、社会のあちこちに備わっていた。だからこそ
子どもは守られるべき
なのである。
子どもは可愛いから
なのではなく、
まだ弱く、何かあったら命を落としかねない存在
だからだ。弱いものを守るのは大人の務めだ。
それにしても、プレジデントWomanは、チャレンジャーだ。
働く女性を対象とする媒体
で、
乏しい医療資源を必要とする「医療の手を借りる必要のあるお産」の増大を煽る危険のある連載を続ける
のは、
誰の幸せのため
なのか疑問だ。大体、医療スタッフにはたくさんの女性がいる。妊娠・出産でお世話になる産科・周産期医療・新生児科等は慢性的な人手不足だが、それでも、お母さんや赤ちゃん、子ども達の命を守ろうと身を粉にして働く人々がいる。そうした、多くの女性を含む医療スタッフは
休む暇もなく、自分にさえ奉仕してくれればよい
のか? なんだかね。ま
プレジデントWomanのいう「よりよく働く、生きる、輝く! 女性」
には
医療現場で働く、女医さんや看護師さん、助産婦さん、薬剤師さん等の女性は含まれない
んだろうな。もし、今後、プレジデントWoman編集部および海老原嗣生リクルートキャリア特別研究員の関係者が病院に来たら、NaCl等で鄭重にお見送りするなどしても、オレは許すぞ。
それより
住んでいる住民の意識では立派な都市のはずなのに、危険なお産になったとき、十分な手当が出来ないとか、働く女性に必須の保育園・幼稚園・学童保育施設が乏しい地域の特集
でもしたほうが、まだしもマシというものだ。問題があぶり出されれば、
自分たちの税金が子どもを安心して育てられるようには有効に使われてない地域
から、子どもを持つ/持ちたい人達は逃げてゆく。
出産は終わりではなく、単なるステージの変化に過ぎない、ということが理解出来ないと
統計だけで「40代だって出産できる」
と言っても
倫理的に問題はない
と思えるのだろう。
出産≠問題なく成長すること
は
世の中の常識
だと思っていたが、
長すぎる不妊治療
によって
出産=成功
という勘違いが蔓延してしまったために、こんな
生まれたら全てOKと勘違いさせる連載
がまかり通るのかね。立派な大人が公的な媒体で書いていい内容とは思えない。
で、リクルートの肩書きを冠して連載している以上、
海老原嗣生リクルートキャリア特別研究員の所属するリクルートは、高齢で両親となったカップル向けの商品開発
でもしているのか? 40代世帯だから、いまのところは収入は多く、手近な資金は潤沢に見えるが
かわいい子どもの教育費に注ぎ込んでいると、両親の老後資金が枯渇する世代
である。
以下は2012年の日経マネー編集部の概算。現在は、中高年層の昇給は抑えられる傾向が強まっているので、この時より厳しいかもしれない。(リンク先の記事全てを読むには、無料登録が必要)
40歳過ぎて念願の子供、嬉しいけど老後はトホホな現実 日経マネー編集部 南 毅 2012年11月22日
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コメント
プレジデント Woman オンラインを覗いてきましたが、海老原嗣生、典型的なバカの見本ですね。
アフリカで40代でも0.9人出産しているからというのが、日本での40代出産が問題ない理由?
片や40代でもそれまでに何人も産んでいる経産婦。片や40歳前後になってやっと結婚しての初産。
これって、条件が違いすぎるのだけど、海老原氏にとっては同じなんですね。
まあ、こういう記事を認めるプレジデント自体、どうしようもない雑誌という気もするが。
投稿: hisa | 2016-02-17 15:08