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2016-02-17

鬼神の作か 粟生屋源右衛門「透彫葡萄棚香炉」

昨年、東京駅の東京ステーションギャラリーで開かれた
 交流するやきもの 九谷焼の系譜と展開
で、驚くべき「やきもの」が展示された。
 粟生屋源右衛門 透彫葡萄棚香炉
だ。写真だけでは細かいところがわかりにくいが、上記解説によれば


竹の葡萄棚をリス、トンボ、カタツムリなどが彩る装飾性豊かなデザイン。エミール・ガレが活躍したアールヌーヴォーより半世紀も前に、日本でこのような陶磁が作られていた

という、時代も国境も超えた、まさに
 ぶっとんだ作品
である。この恐るべき香炉を作り出したのは
 粟生屋源右衛門のデザイン
とそれを
 陶磁器という、窯の火任せの不確かな工芸で実現
させた
 鬼神の作か
と疑われるような、
 究極の技術
だろう。この香炉が形になるまでに、陶土を捏ねて繊細な形を作り、組み合わせ、それを壊さないように焼き、釉薬を掛けてはまた焼き、組み立てるという長い過程で、どれだけの意に満たないものが壊されたか、考えるだけで身震いしてしまう。

いったん断絶した九谷焼は、江戸時代末期、再興九谷諸窯で再び花開くが、私財を投じて再興させた豪商・吉田屋の豊田伝右衛門の窯は吉田屋窯と呼ばれる。吉田屋窯で最高の腕前を誇ったのが粟生屋源右衛門(あおや・げんえもん 1789-1858)である。源右衛門は、若杉窯で学んだ後、再興九谷諸窯で腕を振るい、後自前の窯を築いた。
粟生屋源右衛門は、上の写真や動画にあるように
 本来、陶芸では試みられない、木工品を陶器で再現する
ことにも情熱を注いだ。東京ステーションギャラリーにも、他に
粟生屋源右衛門「山水図御茶棚」
が出陳されている。
九谷焼の地元石川美術館の所蔵品では
粟生屋源右衛門 作品一覧
 色絵桐鳳凰草花文高卓・色絵山水図卓
がそれに当たる。

陶土は焼けば歪む。切ったり、削ったりすれば、たやすく形が得られる木工とはそこが違う。不安定な陶土を、窯の火に委ねても、木工品と同様の自在な形を作るのは至難の業だ。さらに、やっと得られた素焼きの生地に、絢爛たる色を乗せてゆくのだ。
陶工の驕りが、二度と再現できない美を生んだ。
それを作った人も、世に伝えた人も、見る人も、実に恐ろしい。

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