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2016-02-17

雛の顔

もう長いこと、飾られることもなく長持に仕舞い込まれているが、札幌の家には
 二つの雛飾り
があった。一つは昭和十八(1943)年生まれの叔母のもの、一つは明治四十年(1907)生まれの祖母のもの、祖母までは二代女系が続いているので、どちらも二人が生まれた時からずっと家にある雛人形だ。
祖母は三姉妹の惣領娘だったが、曾祖父母は三人の娘それぞれに京都から雛飾り一式を取り寄せた。往時は大通十一丁目にあった家の座敷に、三組の雛人形を並べて飾ったと聞く。戦後長く住んだ西線十一条の家では、仏間の床の間に段を組んで祖母と叔母のお雛様を並べた。父は五人兄弟で、叔母以外全員男なので、五月には、父たち兄弟の五月人形が、毛氈を紫に換えて、飾られた。
祖母のお雛様は顔が良く、わたしが子どもの頃には、もう作ることができなくなっていた、実に品の良いものだった。切れ長の眼の凜々しい顔のお雛様は、その頃流行っていた、丸顔で目がぱちくりしているようなお雛様とは、全く違った。
雛道具は、ちゃんとした塗りで、金で牡丹唐草が全面に入っている。泔[シ甘]坏(ゆするつき)は金属製で、小指の先ほどの大きさだったけれども、洗髪の道具は一つの塗りの台に纏められ、赤い糸が十文字に懸けられ、落ちないようになっていた。

百十年程前に生まれた祖母のお雛様は、ひょっとしたらここから取り寄せたのだろうか。
見覚えのある顔のお雛様を見付けた。
丸平大木人形店 大木平蔵作 丸平コレクション
下の方に見える
 十一世面庄の頭
のお雛様である。十一世面庄は明治三十三年に没している。
ただ、人形の頭そのものは、職人さんが亡くなっても、そのまま使い続けられるので、生没年では判断が出来ない。
どこかになにか書附でも残っているとはっきりするのだが。

上記リンク先は、個人蔵の大木人形店 大木平蔵作 丸平コレクションで、御自分の所蔵する大木人形店のお人形を公開されているものだ。
興味深いのは、
 五人囃子ならぬ七人楽人
の並ぶ、大きな雛飾り一式だろうか。
二番親王尺三寸二十五人揃
五人囃子は、武家の制から出てきたもののようで、王城の地京都のものではない。この七人楽人の編成は
 和琴・琵琶・篳篥・鞨鼓・龍笛・笙・楽太鼓
だ。

ところで、上記のホームページに、興味深い記述がある。


丸平大木人形店のこと
創業250年を数えようとする丸平大木人形店は、人形とそれに付随する飾り物のみを扱って続いた京都でも随一の老舗です。(略)
一度“安物作り”というレッテルを貼られると、パーツすら一流のものは渡されなくなってしまうような京都の特殊な職人環境にあって、着付け師がどれだけ優れた人形に仕立て上げられるかは、どれだけ優れたパーツを集められるかという事でもあります。当然そこには、経済上の問題が大きく立ちはだかりもするのですが、言わば別次元に存在し得た丸平さんは、時には様々な職人の生活を支える意図から、敢えて必要もない数のパーツを発注するような配慮もされていたようです。
丸平さんは卸しや仲買という商業流通に属さず、“職商人(ショクアキンド)”という姿勢を貫きましたから、その価格には仲介料というものが含まれないのです。卸値の五倍六倍は当たり前という際物業界にあっては、絹100%の衣裳などとても使えませんから、織物の発注で「絹100%であっては困る」という一般的な着付け師に対し、「絹100%でなければ困る」というほどの違いが最初に存在してしまうわけです。(以下略)

京都という土地柄は、身内に厳しい。最初の
 一度“安物作り”というレッテルを貼られると、パーツすら一流のものは渡されなくなってしまう
という厳しさは、職人の世界だけではなく、学問の世界にも通じているように思う。
 仲介料無しの「職商人」
であればこそ、最上の素材を集めることが出来る。
 原価の3倍の値段で売ればいい商売
とは、そこが違う。
だから、注文して納められる人形にこそ、職人の真価が問われる。納められた人形はほとんど公開されないから、大木人形店の技を見るには、たまさか開かれる展覧会に行くか、上記リンク先を作っておられる篤志家がコレクションを公開される場合くらいしか機会がない。

良いものを見せて頂いた。

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