伏見冲敬『草書をおぼえる本―草訣歌詳解』二玄社 1983.1→追記あり
中国学プロパーだと、
書誌学は勢い版本学が中心
ということになる。そうすると
普段見ている文字は、ほとんどが楷書
で、
草書や篆書
が出てくると、大騒ぎをして
『五體字類』
をひっくり返したりする。
ところで、
筆の文字に慣れていない現代人
だけではなく
清代の中国人
も
草書
は、形や崩しを覚えないと使いこなせなかった。
そこで作られたのが
草訣歌
だ。
訣歌とか歌訣
というのは、いうなれば
記憶のための語呂合わせの歌
で、いろいろな暗記物の訣歌があるのだけれども、
草訣歌は草書の形を覚えるための語呂合わせ
である。これに、伏見冲敬さんが、日本語で解釈を加えたのが
草書をおぼえる本―草訣歌詳解
というわけだ。
いや〜、これは、俗書であるだけに
間違いやすい文字が集められて
いて、
初学者向け
だ。たとえば、こんな風に、よく似た文字を並べて、口調よく説明している。
草書を苦手とする人は、この書物で草書の稽古をすると、少しは
草書が読みやすくなる
だろう。別に筆で書かなくても大丈夫。
筆の運び
が分かればいいのだ。その点、上の図版のように
手本の「手」は確か
だ。
活字・フォント世代にお勧め。
(追記 11:05)
同じ種類のものが
iPad/iPhoneのアプリ
として無料で提供されている。
草訣百韻歌
画面が二分割されていて、
右頁にお手本、左頁に指でお習字できるようになっている。
(追記終わり)
なお、
蔵書印などのハンコの字が読めない!
と泣いている人向けなのが、同じ著者による
篆書が身につく本―篆書偏旁歌訣
だ。こちらは実際に篆書を交えて、字体を説明する。
蔵書印が読めない
落款が読めない
とお困りのご家庭には是非1冊。
あとは先に紹介した
五體字類
があれば、なんとかなるかな。
蔵の中や天井裏から出てくるような、近世の文書を読む時はまた別で
御家流
という書体対応の字書が必要になる。
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