眼科手術で術後合併症の細菌性眼内炎予防に使用される抗菌剤バンコマイシンに予後不良の「出血性閉塞性網膜血管炎(hemorrhagic occlusive retinal vasculitis: HORV) 」を引き起こす疑い@アメリカ白内障・屈折手術会議(ASCRS)と米国網膜専門医学会(ASRS)
正直、余りうれしいニュースではない。
失明も、眼手術後HORVで学会調査開始【米国白内障・屈折手術会議】バンコマイシン使用に関連か
白内障手術で術後に起こる合併症の中で、それほど発症割合が高いわけではないのだが、
失明をもたらす恐れのある
ものとして重要なのは、
細菌性眼内炎
だ。それで、予防のため、手術の際、
抗菌剤のバンコマイシンを眼内に使用
することがある。
バンコマイシンを眼内に使用する方法は
硝子体への注射
前房内への注入
バンコマイシンを含む灌流液の使用
だ。ところが
このバンコマイシンの眼内への使用
が、少ないながらも
大変予後の悪い「出血性閉塞性網膜血管炎(hemorrhagic occlusive retinal vasculitis: HORV)」を引き起こす疑い
が、アメリカの学会で報告され、
アメリカ白内障・屈折手術会議(ASCRS)とアメリカ網膜専門医学会(ASRS)
は、
調査委員会
を立ち上げた。
閉塞性網膜血管炎
は、
網膜血管の炎症が原因で血管が詰まる病気
で、
網膜血管が詰まると、その部分の網膜は機能を失い、「見えなくなる」
ことになる。当然、閉塞性網膜血管炎の予後は良くなく、
視力低下や失明の原因
となる。
アメリカの報告では
2014-2015 6例
2015以降 16例
の
合計 36眼にHORV
とかなり稀ではあるが、多くが
予後不良
で
61%が0.1未満に視力低下
22%が失明
という結果になっている。この内の
7眼(19%)は細菌性眼内炎の治療のためにバンコマイシン硝子体注射の追加療法を受けた後に発症
しており、
7例中5例が失明
した。極めて残念なのだが、
失明の恐れがある合併症を治療して失明
という、本末転倒の結果になっている。いまのところ
白内障手術からの報告のみ
だが、
このHORVは眼科手術全般で起こりうる
と見られているのが痛い。
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