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2016-09-09

赤ちゃんと妊婦を守れ 空気感染(飛沫核感染)等で感染する麻疹(はしか)に治療法はない(その7)尼崎の保育所で麻疹の集団感染か 中3女子の感染も(訂正あり)→追加接種が増えているが、肝心の定期予防接種用ワクチンが不足の様相

関空では
 麻疹の集団感染
が起きているが、兵庫県尼崎の保育所でも
 麻疹の集団感染
が起きている。9/8付神戸新聞より。


尼崎の保育所ではしか集団感染か 関空との関連不明
 兵庫県の尼崎市保健所は8日、市内の保育所園児や母親ら6人がはしかに感染したと発表した。集団感染とみて経路を調べるとともに注意を呼び掛けている。市内ではほかに1人が感染。いずれも軽症という。
 同保健所によると、保育所の1、2、3、5歳の男女4人のほか、30代の母親と30代の女性アルバイト職員が感染8月22日に5歳児が鼻かぜの症状を訴え、その後発熱や発疹があったため、同31日に保健所に届け、9月2日にはしかと判明した。ほかの5人も4日ごろまでに相次いで発症。保育所の閉鎖はしないという。
 関西空港の従業員らに感染が広がっているが、保育所での発症者の中で最近関空を利用した人はおらず、同保健所は「今のところ、関連性は考えられない」としている。保育所のほか、中学3年の女子生徒(14)の発症が判明しているという。(吹田 仲)

今回保育所で感染したのは
 1、2、3、5歳の保育園児(いずれも麻疹の予防接種回数は1回か。5〜7歳の小学校入学前に2回目の定期予防接種を行う)
 30代の母親とアルバイト職員(いずれも女性、定期予防接種回数は1回以下の世代)
と、
 定期接種が1回の時代、もしくは2回接種世代だがまだ2回目が済んでない年齢
に属する。
問題は、
 30代の女性が感染している点
だ。妊婦が麻疹に感染すると、
 経過が重くなる傾向があり、流早産の危険が高まる
ため、抗体価が低い女性は次の妊娠までに、予防接種を済ませておくのが望ましい。今回は「母親」1人が感染しているが、
 麻疹や風疹の抗体価が低い妊婦さんに対しては、出産後の入院中に予防接種を行う
ようにしている産婦人科もある。出産直後だと、妊娠中に
 予防接種が済んでない/抗体価が低い感染症に罹らないよう注意していただろう
から、
 有料になる予防接種(定期予防接種は無料だが、それ以外は有料となる)
にも、さほど抵抗はないだろう。今後は
 麻疹や風疹の抗体価の低かった妊婦さんには出産後、できるだけ早く予防接種を受けてもらう
ような積極的なキャンペーンを行う必要があるだろう。また
 低所得世帯に対しては、有料となる予防接種の助成
も必要だろう。

無料で行われる麻疹の定期予防接種が
 2回に変更
されたのは
 2006年
である。そのため
 移行措置
として、
 1歳時・入学前の2回の定期予防接種
以外に、
 2回定期予防接種から漏れた1990年4月2日生(現在25-26歳)〜2000年4月1日生(現在16-17歳)の年代

 第3期(中学1年に当たる年度)
 第4期(高校3年に当たる年度)

 定期予防接種
が行われたのだが、地域によっては必ずしも徹底しているとは言い難かった。

今後、麻疹の流行が更に拡がるとすれば、こうした
 麻疹の予防接種回数が1回以下の世代を直撃
するだろう。
 1990年4月2日〜2000年4月1日生
といえば、
 社会的な活動が活発な時期
で、
 外に出る機会が多い
わけで、
 麻疹に感染しやすく、感染しても「麻疹と判断できる」前が最も感染力の強い時期に他人に感染させやすい世代
と言い換えることが出来るだろう。
先日、
 海外から帰国後、西宮から幕張メッセのコンサートに出かけた19歳の麻疹患者
がいたが、やはり
 2006年以降の移行措置世代
に当たる。
保育所との関連は不明だが、感染が確認された
 中3女子(14)
は、上記の移行措置世代ではなく
 2回の定期予防接種世代
に当たる。免疫がうまくつかなかった可能性もある(訂正 21:10)が、接種回数が1回以下である蓋然性が高いだろう
予防接種を2回受けたとのこと(リンク先は要登録)。日経メディカルの今日付の記事。
麻疹の集団感染が尼崎市でも、関空の利用はなく 別に関空従業員と中学生も、感染経路は不明

こうした(訂正終わり)
 2回接種世代で、1回以下しか接種してない個人の追加接種をどうするのか
も、麻疹がゼロ歳児や妊婦に与える影響の大きさや、罹患年齢が上がるにつれ、重症化しやすいという麻疹の特性を考えると、効果のある対策が必要だろう。こうした
 弱い部分
は、
 次の流行の起点
になる恐れがある。

喫緊の問題は、
 定期予防接種に使用する以外に、麻疹風疹混合ワクチンが足りるのか
という点で、すでに
 不足
が、あちこちで囁かれている。9/7に頂いたSEISAN先生のコメントを再掲する。


大阪の小児科医です。今週月曜日、いきなり麻疹風疹混合ワクチンが市場から消滅していました。
各製薬卸さんの倉庫の在庫がいきなりゼロになったんです。
先週頭はまだ頼めば、数の制限はあるものの入ってたんですけど、営業担当もびっくりしてました。
麻疹風疹混合ワクチンは、需給関係が結構タイトになっており、発注制限がかかっていたんですけど、それでもいきなり「消滅」と言っていいような状況になるのはおかしいです。

その一方で、関空会社が関空内の全企業職員に対して、麻疹の罹患・ワクチン歴を聴取して必要な場合ワクチンを接種するということが発表されました。おそらく、罹患歴なし(子供のころにかかったかもしれないけど、わからない、というのも含む)、ワクチン接種が0~1回のみ、という職員を対象にすると思いますが、対象職員数は1万5千人とのこと。となると、下手をすると1万人くらいが接種対象になる恐れがあり、そんなもの、個別に開業医や病院で対応するのは不可能だと思われますので、おそらく臨時集団接種を考えているのだと思います。

だとすると、一気にそのためのワクチン確保に走った可能性が考えられます。

でも、それで大阪からワクチンがなくなってしまったら、本来必要な小児の定期接種はどうすればいいのでしょう。
我々個人経営の小児科医は「ワクチン持ってきて」と発注しても「すいません、ありません」と言われればおしまいです。
薬品卸の営業さんにもどうしようもありません。

そして一番守らなければいけない子供たちがワクチンもなく麻疹罹患の可能性にさらされるのだとしたら、それでも関空の職員の予防接種が優先されるべきなのでしょうか。

おそらくひと月もすれば流通もまた安定を取り戻すとは思いますが、ワクチンがそれでなくても不足している現状で、今回のパニックのような麻疹対策が本当に正しいのか、疑問に感じてしまいます。(以下略)

定期予防接種に使うワクチンが払底しているのだとすれば
 それこそ本末転倒
だ。

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