早稲田大学文学部蔵書印付の顧頡剛等編『古史辨』が除籍されてヤフオクに出品されている件
ヤフオクを見て、驚いた。
一昔前なら、
中国学をやるなら、普通に手許に置いてめくる書籍
として、院生以上なら割と持っていたと思う
顧頡剛等編『古史辨』
の
早稲田大学文学部の印が書底に押してある除籍本
が出ている。
背のラベルが読めないのだけど、
重複本として処分
された雰囲気だ。
家にも1セットあるけど、購入当時は結構高価な書物だった。
近年、『古史辨』のような中国学の古典的書籍、中国国内のほぼ全ての新刊を含む出版物は愚か、
日本で最近出版された学術図書
に関しても、
中国で海賊PDFが蔓延している
のは、周知の事実だろう。国内の新刊については、たぶん、日本にいる留学生等が中心になって、せっせと
自炊した書籍をネットにアップしている
のだろうと思っている。最近は大学図書館では
ペーパーレスのコピー推奨
というわけで
紙に印刷せず、USBにそのままスキャンした画像を取り込む
こともできるから、それを適当に加工してアップするわけだ。
そんなことがまかり通っているためか、数年前に京大文学部図書館に行ったら
最近は中国古典の書籍は、学生さんがあまり利用しないんですよ
と司書の方が仰っていた。まあ
手許にある端末をネットに繫げば、現物のコピーが入手できる環境
になってしまっているので
わざわざ図書館に行って、紙の書籍を確認する必要がない
ってことなんだろうね。確かに、書庫の漢籍は手を触れられた頻度が減っているように感じた。開かない書籍は、天に埃が溜まるから、なんとなく煤けて見える。
恐らく、『古史辨』が除籍になった理由の一つは
利用頻度が低い
ためだろう。
しかし、ヤフオクに出回るとはね。
知り合いの国立大学の先生何人かは
重複本は廃棄する方針
という図書館のやり方に業を煮やし、
廃棄前に「重要な典籍を救出」する
ように心がけられているという。
今から10年以上前だけど、古書店経由で、ある国立大学図書館の除籍本を入手したことがある。
ジョセフ・ニーダム『中国の科学と文明』日本語訳の既刊分
だった。
大学図書館から、科学史の基本図書であるニーダムの『中国の科学と文明』が除籍された
ことに驚いた。
同時に、日本での科学史の扱いの低さも感じた。
しかし、
ネットにあるから、読まれるか
といえば、そういう訳でもないだろう。
積ん読本は背文字が見える
が、
ダウンロードした電子文献は、ファイルを開かない限り、落としたことさえ忘れてしまう危険性大
だからな。
かくして、古典的名著は利用頻度が落ち、あちこちの図書館から除籍されてヤフオクに出回り、ダウンロードされた電子文献は、一度利用された後は忘れ去られる。
古典的名著は、こうして書庫から駆逐され、現物を手に取れない状況が続けば、最後には存在すら念頭に上らなくなるだろう。
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