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2017-07-27

銀座きしやの畳紙

その昔、まだ祖母も叔母も元気だった頃、和箪笥にはたくさんの着物が入っていた。
祖母は、
 値段を見ないで物を買う
という恐ろしい習慣のある人で、娘である叔母の着物を誂える時は、反物を肩に当てさせて、いいと思ったら、それに決めていた。
その頃の呉服屋の商売のやり方は
 いいものを先に見せる
のが鉄則である。お客の懐具合を心積もりして
 お客の予算を勘案した品物で一番いいもの
を、最初に見せる。呉服屋としても
 長い付き合い
なのだから
 顧客を毟り取るようなマネ
はしない。ただ、
 一番いい物
は、大抵
 予算よりちょっと上
なので、普通は
 その次以降に見せられる「もう少しお手頃な品」
に行きついて
 ああ、最初のがいいのだけど、ちょっと予算的にしんどいな
と思うことになるのだが、祖母は
 いい
と思ったら、それでもう面倒なことは言わなかった。だから、どこに行っても
 いい奥様
で通っていたし、決断が速いので買い物に時間は掛からなかった。ほとんど着物で通した人で、贔屓の呉服屋や小間物屋、履物屋も好みを心得ていた。前もって
 明日何時に伺います
と電話を入れておくと、お店の方も、祖母の好みに合って、似合いそうな品を準備して待っている。
叔母の着物はそう簡単ではなかったが、お店が苦心して選んだ品を当てさせ、ちょっと鋭い眼差しで一瞥して、
 これがいい。これにするわ。
と一転にこにこしている祖母の顔が今も思い出される。

和箪笥は
 美しい着物
を見られる、たのしい魔法の筺のようなものなのだが、問題は
 うっかりすると仕舞う時に畳紙の紐がはみ出てくる
点である。祖母や叔母が留守の間に、こっそり抽斗を開けて
 わあ、このお着物綺麗!
なんて眺めて、弟と遊んでいたのだが、畳紙の紐がはみ出たままになってしまっていて、帰ってきた叔母に
 またあんたたち、抽斗開けたの。ちゃんと仕舞いなさい!
と怒られる羽目になる。
そもそも
 叔母や祖母の着物
は、その当時、札幌の三条会館にあった
 銀座きしや
で誂えた物が多かった。ご存知の方はお分かりになるだろうけれども
 銀座きしやの畳紙の紐

 薄茶色の紙縒り紐
である。細く固い紙縒りの紐は、ともかく扱いが面倒で、抽斗の端からぴんぴんはみ出てくる。
叔母も子どもの頃は、和箪笥の抽斗からはみ出してくる畳紙の紐に悩まされたようなのだが、その当時は
 とっても怖かった祖母
が、はみ出ている畳紙の紐を見て
 亡くなったおかあさまはこういうのを大層嫌ってましたよ
と言ったもので、それ以来
 畳紙の紐はきちんと仕舞う
ようになったそうだ。叔母はよく出来た人だったので、一度言われたことは二度注意されることはなかった。しかも曾祖母、祖母と二代続けて女系の我が家で
 亡くなったおかあさま
は、
 一番の権威
である。祖母が19歳の時に亡くなっているので
 誰も生きている曾祖母に会ったことはない
のだが、祖母が
 亡くなったおかあさま
というと、みんな黙った。後年、リビングのピアノの上に
 帳場に座ったちょっとおたふく顔のおかみさんの博多人形
が置いてあったけれども、その人形の顔だちが
 亡くなったおかあさまによく似ている
というので、祖母が気に入ってそこに置いたのだった。
この曾祖母に比べると、祖母もわたしもおっちょこちょいが過ぎるのだが、叔母はその点、曾祖母の美点を受け継いだようで、無作法なことはしなかった。どちらも隔世遺伝がなせるわざかも知れない。

ところで、バブル経済が破綻した後、呉服業界では倒産が相次ぐ時代がやってきた。
銀座きしやもその難を免れなかった。
2004年、銀座きしやは倒産、その後を山野愛子で知られる現在のヤマノホールディングスが譲り受けた。
だから、いまも「銀座きしや」の看板は上がっているが、それは以前のきしやとは別なものだ。

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2017-07-25

嗚呼、オープンキャンパス「テロ」

6月頃から、各大学では
 オープンキャンパス
が始まる。受験生が夏休みに入った今はそれこそ
 酣
である。

ところで、オープンキャンパスというと
 担当の教職員はいろいろ大変
な上に
 必ずしも、進んで参加している場合ばかりではない
と思われるのだけど、
 こんなテロ
が行われるという話。嗚呼。@anima_solarisさんのtweetより。

いろいろ不幸ですね。

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東京五輪・パラ組織委員会 殺し文句は「多様性と調和」 交流施設「ビレッジプラザ」で日本林業を殺す気満々 「木材をタダで下さい!」

いや、すげー。東京五輪では
 選手村の交流施設ビレッジプラザを仮設で設置
するというのだが、東京五輪・パラ組織委員会は
 木造で作る
として
 全国にタダで木材を寄越せ
という内容の
 美名に隠れた林業殺しキャンペーンを始める
という。
NHKより。


東京五輪 選手村の交流施設を作る木材 全国から無償で募集
7月25日 7時08分
東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会は、選手村の交流施設を作るための木材を、無償で提供する自治体を全国から公募し、大会後は東京オリンピックのレガシー=遺産として各自治体に活用してもらう取り組みを始めることになりました。
東京・中央区の晴海に建設される選手村には、大会の期間中、選手が家族などと交流できる施設として「ビレッジプラザ」と呼ばれる仮設の施設が建設されます。
大会の組織委員会は、この施設の屋根や壁などに使う木材を全国の自治体から無償で提供してもらい、大会後は各自治体で東京オリンピックのレガシー=遺産として活用してもらう取り組みを始めることになりました。
木材は、製材であれば種類は問わず、自治体名を明記できるということで、組織委員会は全国の木材を使うことで多様性と調和を表現したいとしています。
木材を提供してもらう自治体は、9月11日から公募し、10月上旬に45の自治体を決めたいとしています。
組織委員会は「木材を全国から募ることで大会機運の醸成につなげ、コスト削減と大会の記憶が残る取り組みにしていきたい」と話しています。

まあ
 名前を明記してやるから「タダで寄越せ」
って話。なんて
 上から目線
なんですかね、東京五輪・パラ組織委員会。

いま、
 林業は青息吐息
である。林野庁が昭和59年から始めた
 緑のオーナー制度
は、
 出資金の元本割れが相次ぐ惨状
で、NHKの
 「緑のオーナー制度 責任はどこに」(時論公論) 2017年05月11日 (木) 清永 聡 解説委員
によると


満期を迎えた支払額の平均です。出資額の50万円を超えたのは最初の年度、平成11年度の54万円の1回だけでした。その後13年度は40万1千円、15年度は36万8千円、20年度は30万1千円、25年度は29万3千円など、ずっと元本割れが続き、平成27年度は、24万7千円まで下落しました。50万円を20年預けて半額以下しか受け取ることができない計算です。

とのことで、これから償還を迎える分については

林野庁によりますと、これまでに契約が終わったオーナーは一昨年度の時点でまだ4割、3万3千人です。5万5千人以上が、これから入札などの時期を迎える計算になります。この問題はむしろ今後、本格化する恐れがあります。

という見通しである。

このように
 林業に投資して資産形成
というプランが
 絵に描いた餅以下の代物
に成り下がり、全国で訴訟が起きている現在において、東京五輪・パラ組織委員会は
 タダで木材を寄越せ
というわけだ。要するに
 どうせ、市場に出したって売れないだろ? だったら五輪に「貢献」した方がいいだろ
って
 お上の思惑
が透けて見える。

で、東京五輪・パラ組織委員会にお伺いしたいんですが
 木材の輸送に掛かる運賃は誰が持つ
んだ?
 木材はタダで提供
は、分かった。じゃ、
 東京の現場までの輸送に掛かる費用は誰が負担する
んだ? もしかして
 運賃も込でよろしく!
って話か。
 林業関係者を虚仮にするにも程がある
んじゃないのか。

twitterでも、こんな声が。@nakamukaeさんのtweetより。


ほんと
 カッコ悪すぎる
ぜ。
 仮設施設の材料費も払えないくらいビンボー
なんだったら
 東京五輪・パラリンピック自体を返上
しちゃった方がマシじゃね?

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2017-07-17

防衛省がサイバー部隊増強だそうで

防衛省が
 サイバー部隊を1000人規模に増強する
という
 俄には信じがたいニュース
を共同が伝えている。


防衛省、サイバー部隊千人規模へ 攻撃手段も研究
2017/7/17 02:01
 防衛省が同省・自衛隊内部のネットワークの監視や、サイバー攻撃を受けた際の対応を担う「サイバー防衛隊」の規模と能力を大幅に強化する方向で検討に入ったことが16日、分かった。現在の約110人から将来的に約千人に増やし、サイバー攻撃を自ら仕掛ける研究をする担当部門を新たに設ける構想だ。サイバー攻撃の方法を研究することで防御能力の構築に役立てるとしている。

 政府は2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、サイバー攻撃への対応力強化を課題にしている。攻撃方法の研究は自衛隊によるサイバー攻撃能力の保有に向けた動きと見られる可能性があり、今後議論を呼びそうだ。

何が俄に信じがたいかといえば
 いま110人規模なのに、「将来的」とはいえ簡単に10倍に出来るほどセキュリティ関連の技術は甘くない
ってことだ。
大体
 人材をどこからリクルートしてくる
んだよ、防衛省。
 まともな情報技術者
であれば、
 国家公務員の「薄給」
よりも、新卒の段階で
 より厚遇のポジション
が約束されているだろう。

まあ、はっきり言って、アメリカが
 大学進学
をエサに、
 新兵を、移民を含めたあらゆる階層からリクルート
しているような手段に倣って
 防衛省奨学金を作ってリクルート
するくらいしか方法がないんじゃないの?

てことで
 頭数を揃える
のは、
 可能
かも知れないけど
 水準を保つ
のは、難しいでしょうよ。

てかさ、今現在で
 110人規模
って辺りが、すでに絶望的情況だ。
まあ、がんばれ、防衛省。

おまけ。ちょっと古い記事だけど、miyaichiさん経由。
一部を引用する。


新人プログラマーが使えない理由
2011年5月10日 by Jon Evans
(略)
旧来のシステムは、限られた情報に基づいていた ― 応募者についてわかるのは履歴書だけだった。しかし、業績のある人だけを面接すれば、ずっと広い範囲から人を選べる。FizzBuzzなどやめ、面接者に自分のコードと設計思想を説明させ、今だったらどう作るかを聞く。目の前で1つか2つ機能を実装させて、実際にどう動くか、どのように考えて作業しているかを見る。それこそが技術面接で知りたいことだ。古典的アルゴリズムやデータ構造をどう理解しているかではない。世界は前進しているのだ。

防衛省のサイバー部隊のリクルーターに上記のような
 眼力
があるかどうかは謎だな。官僚制に毒されていれば、まずアウト。

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2017-07-06

台鐵と近鉄が友好協定締結ですとっ!

日本には、数多鉄道会社があるけれども、
 東西の似たもの同士
といえば、
 東の京急、西の近鉄
ではないか密かに思っている。もっとも
 車両の連結・切り離しの速度

 毎日、金沢文庫や京急川崎、品川で切り離しと連結を展開する京急の圧勝
だけど。横浜の家の最寄り駅が金沢文庫なもので、毎度のように鮮やかな手腕を見ていると、
 大和西大寺の連結・切り離しの遅さ
には、毎回、イライラしてしまう。で、いつもその切り離しのせいで
 3分の遅れ
になるからな、近鉄。

それはいいとして、
 台鐵と京急が友好協定を結んだ
時は、とっても羨ましかった。一昨年の5月にはその記念に
 台鐵の駅弁を販売
したしな、京急。

さて。
台湾に行くと、時々お世話になる台鐵なんだけれども、この度なんと
 近鉄と友好協定を締結
したという驚愕のニュースが飛び込んできた。何故に近鉄? 阪急でも京阪でもないのだっ。
理由は分からないのだが
 近鉄には伊勢神宮を擁する「山田・鳥羽線」がある
からだろうか????
中央社フォーカス台湾より。


台湾鉄道、近鉄と友好協定締結 相互誘客狙う
【観光】 2017/07/06 18:23
(台北 6日 中央社)台湾鉄路管理局(台鉄)は6日、近鉄グループホールディングス(近鉄、大阪市)と事業連携・協力に関する友好協定を締結した。台北駅で行われた調印式には、台鉄の鹿潔身局長や近鉄の吉田昌功社長らが出席した。今後は互いの沿線の魅力や観光地を紹介するツアーの催行など相互誘客のための取り組みを進めるほか、鉄道事業、店舗開発に関する事業などで連携を行う。
台鉄は、両者とも100年以上の歴史を持つと言及し、互いに鉄道や観光の発展経験を共有できればと期待を示す。また、台鉄は近年、関連事業の開発に力を入れており、豊富な商品やマーケティング、企画能力を持つ近鉄の取り組みを参考にしたいと意欲を見せた。
近鉄は昨年4月に台北支社を設置し、訪日客の誘致促進や事業の海外展開に向けた情報収集、現地企業との関係構築を進めている。今回の友好協定の締結を通じて台鉄との交流を深め、双方事業のさらなる発展・成長を目指したいと意気込みを示した。
台鉄は近年、日本の鉄道との連携を積極的に推進。これまでには西武鉄道、東武鉄道、京浜急行電鉄、JR四国と連携している。

(陳葦庭/編集:楊千慧)

う〜ん、うれしいけど、近鉄には是非
 気合いの入った「友好協定締結記念イベント」
を企画して頂きたいものだ。
Facebookに転載されている上記記事の写真には
 台鐵の駅弁のマスコットの双子のクマ てる(鉄魯)、はなちゃん(漢娜醤)
20150416002062
とあべのハルカスのマスコットのクマあべのべあ
Abenobear
が写ってるんだが、まさか
 クマつながり
じゃないだろうな?

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2017-07-03

偽史の作られ方

パソコン草創期の人達は、まだ生きている。
インターネット草創期の人達もそうだ。
商業化以降の日本のインターネットの状況なんて、まだ「歴史」というのはほど遠い。
でも、着々と
 「商業化以降のインターネットの偽史」
は作られている。
理由は簡単だ。
1. 商業化以降のインターネットについて「書き手」が若い
2. 2ちゃんねる以前をそもそも「知らない」
3. 2ちゃんねる以前を知らなければ、商業化以降のインターネットの人の出入りの意味が分からない
4. 「書き手」が若い上に、それを「審査」するおじさん・おばさんの「ネット親和力」がそもそも低い
5. 両者が、インターネット商業化以降の作られた「偉人伝」を批判できないまま、鵜呑みにして「論文化」しているor「論文」を容認している
6. 結局、こうしたゴミみたいな「論文」だけが残る←今ココ
だ。
パブ記事と、そうでないものの区別がつかないまま、
 商業インターネット偉人伝

 論拠
として、論文が生産される。
わたしのように、古くからネットにいる人間は笑っていられるけれども、
 その内、わたしたちのようなネットの古代民は死に絶える
わけで、
 書かれた偽史が横行
するだろう。

いや、凄いんですよ、ほんとに。

ネットジャーナリズムが未熟なのもあるけれども、何より問題なのは
 すべてにおいて、専門的な書き手の数の絶対値が少ない
ことだ。
80-90年代の『月刊アスキー』の筆者程度の実力と見識があれば、まともなのだが、そういう人は
 学術論文などという金にもならない文章は書かない
からな。

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