高齢研究者の「デジタルデバイド」問題
師匠と電話でお話しした。
最近は、加齢のため
活字を読むのが面倒になる
とのこと。
こんな時は
電子書籍で自由にフォントを拡大
すれば楽なのだが、恐らく、
自宅にインターネット環境すらない
と思われる。
ダウンロードして電子書籍・電子化された論文を読む
とか
書籍や論文の必要な部分をスキャンして取り込む
とか
21世紀の研究生活では普通になっている研究環境
が
そもそも存在していない
ということになる。
この頃は、人文系の後任不補充が影響して、大学を退休されても
第二のお勤めをしない
先生方が増えている。問題は
こうした高齢の先生
には
デジタルデバイドの状態に置かれていることがある
ことだ。
本務校に在勤中は、誰かが肩代わりしてやってくれていたのだろうが、退休後は自分でやらなくてはいけない。
孫でもいれば、手伝ってくれるかも知れないが、そうそう都合良く行くわけもない。
今、日本では
モノになるのに、時間が掛かる教育
というのを
ムダとして切り捨てる
ことが進んでいる。
漢文の読解
なんて、その好例だ。
日本語とはSyntaxの異なる言語である中国語を、日本語のSyntaxに乗せて「読む」システム
が
漢文
である。何だか、
中国語をやれば良さそう
に聞こえるのだが、
現代中国語と「漢文」とされる文語文には懸隔がある
のは、
現代日本人がいきなり『源氏物語』の原文を読めと言われてもムリ
なのを考えれば、理解出来るだろう。
中国語文語文には文語文独自の文法・システムが存在
する。
高齢研究者の中には、漢文読解を始めとした
長期間の鍛錬と習熟を必要とする専門分野の先生方
がいらっしゃる。その知識・経験は
貴重なリソース
なのだが、そうした先生方は、概ね
デジタルデバイドの状態
にあるので、退休後は
社会にその知識・経験が還元されにくい
ことになってしまっている。
後任不補充で
日本中の人文系講座が閉鎖
されていく中、インターネットやITを活用して
高齢研究者の「叡智」を利用
する方法はないものか。
もちろん
高齢研究者のComputer Literacy再教育
は必要だろうが、それよりは
誰でもITやインターネットを使えるようにする補助システムの整備
の方が汎用性があるし、今後も役に立つ。
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