鬼手斬心 藤井聡太六段という天才
日曜日のこと、
第15回詰将棋解答選手権チャンピオン戦
が開催された。普段は、東京と大阪の2会場で行われる大会なのだが、今年は
4連覇を賭けて出場する藤井聡太六段への取材が殺到
したため、急遽藤井聡太六段と選ばれた少数の参加者が出場する
名古屋会場
も設けられた。
4連覇。
そう。現在
中学3年
の藤井聡太六段は
第12回大会は満点で優勝
この時は
藤井二段(小6)
続く
第13回大会は最後の1問を逃し90点で優勝
この時は
藤井三段(中1)
そして昨年の
第14回大会は、第1ラウンドで表記ミスがあり1点減点、第2ラウンドでは最後の1問を逃し91点で辛勝
この時は
藤井四段(中2)
であった。
小学校6年生が並み居る大人達を振り切って優勝
という時点で
藤井聡太六段の「詰将棋」の才能の空恐ろしさ
が分かろうというものだ。なお、藤井聡太六段が初めてこの大会に出場したのは、
第8回大会で、51点
で
小学校2年生のときに初参加
したのである。
大人に互して、8才の小学2年生が難問だらけの詰将棋でまずまずの成績を収めた
のだ。
そして、今年は
ただ1人満点で優勝、4連覇を達成
した。
3/26付日刊スポーツより。
藤井六段はモンスター級!詰将棋選手権全問正解V4
将棋の最年少プロ、藤井聡太六段(15)が25日、名古屋市などで行われた「第15回詰将棋解答選手権チャンピオン戦」に優勝し、史上初の4連覇を成し遂げた。藤井は10問全問正解で100点満点。小学6年(当時二段)だった15年の大会初優勝以降のV4。実戦の終盤の力に直結する詰め将棋でも、金字塔を打ち立てた。類いまれなる読みの速さに、関係者は「モンスター級」と絶賛した。
グレーの長袖Tシャツにチノパン。いつものスーツ姿ではなく、カジュアルな服装に身を包んだ藤井が、異次元の強さと速さを見せつけた。将棋界の記録を次々と塗り替える“天才棋士”が、大好きな詰め将棋でも偉業を成し遂げた。「毎年楽しみで参加しているので、プレッシャーはなかった。今年も素晴らしい作品に出合えてうれしく思います」。作者に感謝しながら、満足そうにうなずいた。
同選手権は玉を詰ます正確さや速度を競い、多くのプロ棋士も参加する。今回は名古屋のほか、東京、大阪の3会場に分かれ、永世名人の資格を持つ谷川浩司九段、プロ棋士養成機関「奨励会」の会員、アマチュアら計105人が出場した。
プロ棋士でも解けないという難問ぞろいの10問にチャレンジした藤井は、全問正解の「はなまる100点満点」。前半の制限時間90分では、全3会場で最速の55分で解答を終え退室。後半はフルに時間を使い、“ラスボス”と呼ばれる最難関の10問目をクリアした。ラフな服装でも時間配分など、勝負師の一面をのぞかせ、2位のプロ棋士の宮田敦史六段の94点を寄せ付けなかった。
全日本詰将棋連盟の柳田明会長は「これまでこれだけ速く解く人を見たことがない。まさにモンスター級です」。名古屋会場で出場した船江恒平六段は「全問正解? 信じられない。次元が違う」と言葉を失った。
詰め将棋は、快進撃を続ける最年少棋士の原動力だ。幼稚園のころから詰め将棋を始めた。スポーツに例えるならウエートトレーニング。詰め将棋は将棋の基礎トレーニングとも言える。地味な作業だが、藤井はプロになっても毎日欠かさない。小学時代からコツコツと「詰め将棋ノート」も作ってきた。
表彰式を終えた藤井は「難しい問題が解けて自信になった。詰め将棋が基礎となり、対局にいい影響を及ぼしている」と、笑顔で話した。原点を忘れない天才棋士は強い。【松浦隆司】
(以下略)
詰将棋と、本将棋とは、将棋の駒を使うのが共通なだけで
本来は異なったジャンルのゲーム
である。詰将棋が強いからと言って、本将棋が強いとは限らない。
しかし、
300年に1度の天才棋士
と噂される藤井聡太六段の場合は
詰将棋は本将棋終盤の「読み」の鋭さを支える武器
だと言っても過言ではあるまい。
3/22、
第66期王座戦2次予選
では、藤井聡太六段は
糸谷哲郎八段
と挑戦者決定トーナメント進出を賭けて対局した。糸谷哲郎八段は
阪大文学研究科修士課程でハイデッガーを研究した異色の棋士
で、来期は
棋士のトップクラス10人しかいない(今年は、三浦弘行九段の残留保証措置のため1人多い)A級に昇格する実力者
だ。
戦前は
さすがの藤井聡太六段も苦戦を強いられるのでは?
といった予想もあったが、蓋を開けてみると
わずか87手で藤井聡太六段が糸谷哲郎八段を粉砕
した形になった。棋譜を見る限り、
形勢はほぼ午前中に決していたのでは
という声すらある。
実際には
藤井聡太六段が61手目に放った4三歩打
が、糸谷哲郎八段の息の根を止めた。まさに
鬼手斬心
である。
この
4三歩打
なのだが、
将棋ソフトが一瞬判断が付かない手
だった。
将棋ソフトは、
最速の手順で勝ちを収めるようプログラム
されている。藤井聡太六段の一手は
最速ではないが、糸谷哲郎八段の勝ち目を完全に潰す一手
だった。
来期A級入りの先輩棋士を、わずか87手でねじ伏せたである。尋常の勝利ではない。
感想戦では、藤井聡太六段も糸谷哲郎八段も表面的にはにこにこしながら、検討を重ねていたのだが、実質は
藤井聡太六段による糸谷哲郎八段への「指導対局」
だった。14才年下の藤井聡太六段と会話を交わす糸谷哲郎八段は、敬語を使っていた。それほど
圧倒的勝利
だったのだ。
糸谷哲郎八段がいくら手を展開して見せても、藤井聡太六段は詰まない。藤井聡太六段の口から
それは詰まないので
という言葉が出ていた。糸谷哲郎八段が読み切れなかった勝負の最終局面を、藤井聡太六段はあっさり読み切っていた。最後は
25手詰
だったそうだが、その解説はわたしの手に余る。
こうした
読みの鋭さ、的確さ
を支えているのが
藤井聡太六段の「詰将棋力」
であることは疑いない。
実は糸谷哲郎八段との対局で見せたような
将棋ソフトが一瞬迷う手
が
藤井聡太六段の真骨頂
だ。AIでも読み込めない
人間にしかできない「完膚無きまで敵をたたきのめす一手」
が
天才と称される15才の藤井聡太六段から繰り出される
のである。そして
前回の29連勝時と比べて、遥かに強い相手とばかり対戦している藤井聡太六段は現在16連勝中
だ。数が29より少ないから、マスコミは飛びつかないが
中味の濃さから言えば、比べものにならない
のが、現在続いている連勝である。これが
来期C1昇格の中学生棋士
なのだから、末恐ろしい限りだ。
藤井聡太六段が
鬼手斬心の勝負師
へと変身を遂げたきっかけは
昨年のクリスマスイブに行われた第3期叡王戦本戦トーナメント1回戦
だったと言われている。
深浦康市九段と166手に及ぶ激戦の末敗退
したのだが、
この一戦が藤井聡太六段を「強くした」
と見られている。
藤井四段「寄せ方間違えた」深浦九段の粘りに敗れる [2017年12月24日15時32分] 将棋の史上最年少プロ、藤井聡太四段(15)が23日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第3期叡王戦本戦トーナメント1回戦で166手の激戦の末、A級在籍棋士の深浦康市九段に敗れた。優勢に進めながら持ち時間を使い果たしてミスが出て、深浦の粘りに屈した。 藤井は終局直前、脇息(きょうそく)にもたれかかったり、力なく手を指すなど、悔しさをあらわにした。投了を告げるとガックリと肩を落とした。「途中、指しやすさを感じていたが、寄せ方を間違えた」と振り返った。 15日には深浦と同じA級の屋敷伸之九段を朝日杯で倒したが、今回は壁にはね返された。 深浦とは今年4月にインターネットテレビ局Abema(アベマ)TVの番組企画として放送された「藤井聡太四段 炎の七番勝負 第5局」で対戦。藤井が非公式戦ながら勝利している。最近の対局の棋譜を取り寄せるなど、研究してきた深浦の攻めると見せては守り、守ると見せては攻める変幻自在の指し回しに、局面をひっくり返された。 昨年12月24日のデビュー戦以来、「プロになる前にはなかった経験をさせてもらった成長の1年」と振り返る。28日に大阪市の関西将棋会館で行われる王座戦予選、対豊川孝弘七段戦が今年最後の対局。高校進学も含め、「何事にもできるだけ全力で取り組む」が目標の2018年を迎える。上記記事にあるように、この時 藤井聡太四段(当時)は時間配分を間違え て、 残り時間が僅かとなり、1分将棋で差し手を間違えて負けた のである。
以後、藤井聡太六段は
時間配分に気をつける
ようになり、同じ轍を踏んでいない。
最近の藤井聡太六段は
前回負けた相手に対しては、次戦で完膚なき無きまで叩きのめす将棋
を持ち味としている。次回、深浦康市九段と対戦する時はどこまで進化しているだろう。
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