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2022-04-25

第26回手塚治虫文化賞は魚豊『チ。—地球の運動について—』が受賞 24歲は最年少受賞

今年の第26回手塚治虫文化賞は
 魚豊『チ。—地球の運動について—』
が、満場一致で受賞。
魚豊さん、おめでとうございます。
まだ24歳、哲学科2年で中退、というなかなかの経歴。哲学科に行くくらいで、アーレント読んだりしていて、端倪すべからざる作家。当然ながら
 中二病には罹患済み
で、善悪の二項対立のような凡庸なパースは描かない。

 

昨年の暮れ、ふとしたきっかけでこの作品を知った。画力も台詞も圧倒的。ぐいぐいと引き込まれ、あっという間にKindleで既刊全部揃えちゃったもんなあ。今月18日に完結。単行本の最終巻を待っているところ。
神の摂理に違う
 地動説
を研究する人々は、C教(という設定)の権威を汚す異端者として、無慈悲に拷問され、転向を迫られ、死に至り、焼き尽くされる。1集には
 12歲の天才ラファウ
が登場、寄る辺なき孤児が卓越した知力でこれから地位も力も得られようとしたときに地動説に出会う。真理を探究するか、見過ごして地位と権力への道を進むか。ラファウは前者を選び、凄惨な拷問が予定されていた日の前夜、自ら死を選ぶ。遺体は焚刑に処せられる。
ラファウが残したというよりは、ラファウ以前の地動説研究者達が密かに書き残した所説は、隠され、伝承されていく。
小学校高学年くらいの子どもには、必ず大人も周囲も圧倒する、ラファウのような奴がいる(自殺はしないけど)が、「神童」の手の内を明かしているのが読ませどころだ。

 

続く2集以降では、凡庸な暴力の恐ろしさが淡々と描かれる。
 C教の真理を守る
ために、ありとあらゆる狡知と悪辣な技術を懲らした拷問具が作られ、地動説に関わる者たちに使われる。

 

真理は暴力に屈するのか。是非、一度読んでほしい。
魚豊さんの受賞インタビュー。
前編https://digital.asahi.com/articles/ASQ4P5RCSQ4NUCVL048.html
後編https://digital.asahi.com/articles/ASQ4P5RJ0Q4NUCVL04J.html

 

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