藤井聡太五冠 10代最後の夏 将棋AIによる研究の今後
19歲の藤井聡太五冠の
タイトル防衛戦の夏
が始まっている。7月生まれの藤井聡太五冠は19日に誕生日を迎え、20歲となる。
今年の防衛戦は、コロナ禍で変則的だった日程が通常に戻り、
第7期叡王戦
が皮切りとなった。叡王戦では挑戦者出口若武六段をストレートで退け、最初の防衛戦をクリアした上に、これまで誰も防衛できなかった
叡王戦で初防衛
を遂げた。出口若武六段といえば、2018年の新人王戦で、奨励会時代の出口若武三段と藤井聡太七段が対戦したのが、記憶に残っている。この時もストレートで、段位制限のため最後の挑戦のチャンスとなっていた藤井聡太七段が新人王を手にした。
叡王戦では捲土重来を目指した出口若武六段、第3局では、勝ち筋につながるところまで指したものの、勝機を手にできずに散り、局後の大盤解説会場でそのことを確認、思わず悔し涙が溢れた。
藤井五冠の防衛戦シリーズはここへきて
第93期棋聖戦第1局では永瀬拓矢王座と二千日手、指し直し第2局で角換わりを受けて敗戦
第63期王位戦第1局では豊島将之九段の角換わりを受けて敗戦
と、緒戦を2つ落とした。いずれも
対戦相手の渾身の研究の角換わりを受けての敗戦
だ。
角換わりは
詰めまで研究されている戦法
で、
2020年第91期棋聖戦第3局で渡辺明名人が勝利した
時に、そのことが大きくクローズアップされた。その状況は現在も変わらない。
今日の第63期王位戦第1局2日目には
渡辺明名人
がAbema将棋チャンネルの解説にやってきた。対藤井聡太五冠のタイトル戦では、
2020年度第91期棋聖戦 1-3
2021年度第92期棋聖戦 0-3
2021年度第71期王将戦 0-4
と、番勝負ではとことん分が悪い渡辺明名人だが、劣勢の藤井聡太王位の戦いぶりを見て、かなりご機嫌な調子で早い段階で豊島将之九段の勝利を確信していた。
あるいは、
今後の対藤井聡太五冠戦のヒント
を得られたのかもしれない。
負けはしたのだが、王位戦第1局は
豊島将之九段の渾身の研究 vs. 対人研究はせず、盤面に全力で当たる藤井聡太五冠の棋力
の実に見応えのある勝負となった。昨年度
藤井・豊島の19番勝負
とまで称された王位戦・叡王戦・竜王戦の3タイトル戦では
第62期王位戦 1-4
第6期叡王戦 2-3
第34期竜王戦 0-4
と、いずれも藤井聡太五冠が勝利して防衛・奪取に成功、豊島将之九段はまさかの無冠へと転落した。
臥薪嘗胆、半年の間、豊島将之九段は、対藤井聡太五冠の戦略を練りに練っていたようだ。
豊島将之九段といえば
AI研究を真っ先に取り入れた
ことで知られる。昨年苦杯をなめた後は、AIの環境を充実し、研究の精度を上げていただろうと想像される。
現在の
将棋AI
は
各ソフト同士が鎬を削る戦国時代
から
dlshogi一強
へと移行した、といわれる。GPUをぶん回すdlshogi一強ということは
高くて速いマシンを用意できるかどうか
が、研究精度を上げるための必須条件となった、ことを意味する。将棋AIに限らず、計算機を使う環境では
高くて速いは正義
だ。
「渡辺明名人が130万円もするPCを導入した」
というのが、昨年辺り話題になっていたが、
プロの道具がたった130万円
というのは、何とも不思議なことだった。というか、長年、個人で仕事用にパソコンを使っているが
130万のPCが「とても高価」という価値観
は、謎すぎる。自動車より安いんですぜ。
dlshogiが天下を取っている今後しばらくは
個人では購入出来ない高価な速い環境を棋士が利用できるか
が、
将棋AIによる研究の最先端
になるだろう。
でもって、
コンピュータ周りの世話役
が、必要になってくるだろう。
経団連の機関誌にも登場した藤井聡太五冠の財界でのファンは多いだろう。それを藤井聡太五冠が必要とするならば、
藤井先生のためならいくらでも
と、最高の環境の提供を申し出る企業が複数あってもおかしくない。
将棋AI研究環境整備は個人レベルから企業協賛レベルへ
と移行するのではないだろうか。
目の前の1勝よりも
まだ見ぬ盤上の景色
を求める藤井聡太五冠、これまで
敗北は新たな飛躍へのステップ
としてきた。
深く緻密な角換わり研究
に対して、今後どう対処していくのか、目が離せない。
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