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2023-06-13

杉本昌隆『師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常 (文春e-book)』文藝春秋社 書冊体1760円 

「師匠」と通称される人物は数多おれども、今、日本で一番広く知られているのは
 藤井聡太七冠の師匠 杉本昌隆八段
だろう。先日は、渡辺明前名人を4-1で破り、
 最年少名人位・最年少七冠獲得
に成功。これまで
 タイトル戦すべてに勝利して、奪取・防衛は2020年6月の棋聖位から15期連続勝利(無敗)
という
 前人未踏の記録を着々と積み重ねる弟子 藤井聡太七冠
を育て、支えてきた師匠だ。
本書は、『週刊文春』の連載。先頃連載100回を迎えたので、無事、単行本となって出版された。映像での杉本昌隆八段の姿は、TV等でよく目にするが、師匠の筆も楽しい。
何より
 小学1年生の藤井聡太少年のずば抜けた才能
に感銘を受け、ある時以後は
 藤井少年の指す将棋を見逃さないようにしていた
という、
 藤井聡太七冠のファン1号
の師匠である。
 天才を恙なく育てる
のは、至難の業だが、杉本昌隆八段は、まさに適役だった。

本エッセーでは、藤井聡太七冠を始めとする将棋界の動向に触れつつ、
 1回の連載で1回はクスリとしてもらいたい
という意図で、堅苦しくない文章が綴られる。
決して、マスコミ等の目には触れない場所での藤井聡太七冠を中心とする弟子たちとのやりとり、「勝負師」を生業とする、少し変わった人々「プロ棋士」の人生の一端が時に覗く。
 ああ、杉本昌隆八段も藤井聡太七冠も、何より将棋が好きなんだな
と気づかされる。

奨励会を抜けて四段に昇段、プロとなった後も、勝負の世界は厳しい。たとえ才能があったとしても、無限とも思えるような体力・気力が無ければ、タイトル戦に手を伸ばすこともできず、やがては引退に至る。
身体が弱くて、短い現役棋士人生だった、杉本昌隆八段の最初の師 大村和久八段を追悼する文章では、
 若い頃に共に指した有吉道夫九段、内藤國雄九段と60年以上前の少年時代に帰ったように語り合う姿
に心打たれる。
 子どもの頃から切磋琢磨し合った相手と長期間にわたって繋がりがある世界
は、スポーツの一部を除けば、将棋や囲碁くらいではないだろうか。

もちろん、杉本門下にあって、
 圧倒的な若き才能
に打ち負かされて、やがて研修会・奨励会を去って行った兄弟子達の姿に触れることも忘れない。
 1歳でも若いことが才能の絶対条件
である将棋界にあって、驚異的な進撃を続ける藤井聡太七冠を生み出したのは、やはり杉本昌隆八段あってのことだろう。

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