2012-05-27

レオナルド・ダ・ヴィンチ『解剖手稿』岩波書店 1982年@京都大学附属図書館に鉛筆で訂正が入っている件

必要があって、岩波が1982年に出した
 解剖手稿(An):ウィンザー、王室図書館、約400頁。
 岩波書店刊、B3版変形(44.8×31.3cm)、ファクシミリ201葉+日本語本文1,058頁、
 全3分冊・別冊1、定価1,545,000円
を、京大附属図書館で閲覧した。

これは本文部分は
 レオナルドの鏡文字を翻刻+日本語訳
という体裁なのだが、なんと
 翻刻部分の間違いを訂正している箇所があちこちにある
ことに気がついた。
なんせ
 本体価格が150万円を超える超豪華本
なので、岩波が正誤表を出したかどうかは知らない。知らないのではあるのだけど
 誰かが、レオナルドの手稿の綴りの誤りを鉛筆で丹念に直している
のである。手稿によっては
 推定される作成年代
まで入っている。

あの様子だと、岩波の150万円を超える限定版は、結構綴りが間違っているようだよ。

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2012-05-20

河竹登志夫『黙阿弥』講談社学芸文庫

黙阿弥は、なぜ引退して
 黙阿弥
を名乗ったのか。その謎を黙阿弥の曽孫である河竹登志夫が、遺された葛籠の中の文書から拾い上げ、幕末〜明治に掛けての
 御一新による文化破壊と改新の嵐
に揉まれた、狂言作者河竹黙阿弥の苦悩と困難を跳ね返す強靱さを描き出す。
いや、面白かった。

元々、河竹登志夫の文章は
 雑誌『四季の味』の連載
でファンになっていたので、この『黙阿弥』も文春文庫に入った早々に買い求めたのだが、本の山に埋もれて行方知れず、その後、年表を増補したこの講談社学芸文庫本を購入、やっと読み終えた。
この人の作品なくしては歌舞伎の幕が開かない、狂言作者河竹黙阿弥の芝居が、その持ち味故に、幕政下においても、明治政府下においても、何かと目の敵にされ、当局の圧迫に晒される。筆難を受けるそのたびごとに、黙阿弥は
 ぎりぎりまで筆を凝らして、しかも咎めに触れない
よう、細心の注意を払って、
 役者に親切、見物に親切、座元に親切の「三親切」
で工夫に工夫を重ね、当たりを取っていくのである。
 演じる役者に親切
というのがまずは基本であり、当て書をする、役者のクセ、特長、苦手等を飲み込んだ上で、観客の時好に沿って、その役者の魅力を最大限に引き出す脚本を書くこと、それが黙阿弥の今に残る仕事の原点なのである。
当て書をした役者はとっくに世を去ったが、黙阿弥の芝居は残り、
 新古演劇十種や新歌舞伎十八番などのお家芸
に選ばれ、繰り返し上演されている。
黙阿弥の芝居の内
 かなりのものが明治以降に書かれた
というのも、驚きである。
明治政府の
 演劇改良運動
によって、庶民の娯楽であった歌舞伎が
 上流階級の観劇にふさわしいモノに改変される過程
で多く書かれたのが、
 能・狂言を題材に能舞台を真似た舞台で演じられる松羽目物
で、黙阿弥の書いた土蜘や船弁慶、釣狐、茨木もその流れだったりするのだ。

河竹登志夫は、引退に際して「黙阿弥」と名乗ったのは
 いまは「黙」って身を引くがその内「もとのもくあみ」、狂言作家として戻る
というのが真意である、という。

14歳ですでに放蕩に明け暮れていた、生粋の江戸の人黙阿弥は
 いかに柔軟にお上からの無理難題を捌くか
ということには、長い修練を積んでいる。上には
 恐れ入りました
という体を見せておいて、
 結果的に実を取る
のが、江戸っ子の粹、薩長土肥の田舎者が貴顕として跳梁跋扈する明治の世でも、野暮な田舎者を強靱な意志の力でやり過ごし、
 座付き作者
としてのつとめを果たし、引退の後は、座付きという束縛からも自由になって、思うさま、筆を運んだ。若い頃はニワカ好きだったという黙阿弥は
 しゃれのめす、柳に風と受け流す
という、江戸庶民の
 最強の抵抗の武器
を磨き上げて、温容を崩さず、
 明治政府の野暮天役人や御用学者を一蹴
したのである。

黙阿弥については、文化庁デジタルライブラリーにオンラインの解説がある。
文化デジタルライブラリー

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2012-05-11

森銑三・柴田宵曲『書物』岩波文庫 緑153-1

戦時下の昭和18年に初版が出、戦後の昭和22年に増訂改版が出された
 森銑三・柴田宵曲『書物』
を発掘して、手に取っているところ。昭和18年頃、何があったんだか
 戦時下で状況は逼迫しているのだが、なぜか良書がいくつか出る
のだが、これもその一つといっていいのかも。増訂改版の森銑三の序を読むと、昭和20年、森銑三は蔵書をすべて戦災で失ったことが記されている。
解説は中村真一郎が書いているのだが、奥付を見てはっとした。
 1997年10月16日
となっている。中村真一郎はこの年の12月25日に亡くなった。とすると、この解説は、中村真一郎最晩年のものということになる。

昭和18年〜昭和22年というと、今から60年以上前なのだが、現在の出版にも通じる、森銑三の鋭い指摘があるので、その部分を書き写して、以下に転載する。


著述家(pp.32-34)
(前略)しかしながらいつの時代にも重んずべき著述家は少くて、重んずるに足らぬ著述家が多い。徒に多くの書を著して、何一つ特に挙ぐべきもののない人もいる。己を養うことは一向にしないで、ただ出す方にばかり追われている人がある。書肆の註文に応じて時好に投じそうなものばかりをつぎつぎ著して、能事終われりとしている人もある。時勢が変わったからと、以前著した書物とは全然傾向を異にする書物を著して恬然としている人もある。そうかと思うと、十年一日の如く似寄りの書物を何部でも何冊でも著して、端目からはよくも飽きないことだと思われる人もある。自分には何ら硏究することもなくて、ただ先人の著書に述べてあるところを書直して、一時を糊塗している人もある。努力だけは認められても、独創を全く欠いている人もある。質よりも量のある書物を拵えることに依って、自己の存在を認められようとしている人もある。影武者を使った代作の書物をつぎつぎと版にして、自ら大家を以て任じている人もある。(略)
 一口に著述家という内にも、大いに尊敬に値する人と値しない人と、あるいはかえって軽蔑に値する人とがあるわけである。多く売れた書物、評判になった書物の著者が尊敬に値する人で、売れなかった、問題にもせられなかった書物の著者が軽蔑に値する人だなどとはいわれない。かえってその反対の場合もあろう。著述家という内にも種々雑多な人がいる。私等に何人が真に尊敬に値する著述家か、その一事に注意を払うべきである。世間の評判には捉われずに、己の眼を以てそれを知ろうと努むべきである。(以下略)

肝に銘じたい。

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2012-04-30

書籍が盗難に遭う

28日の晩、北京から送って貰ったばかりの書籍の入った箱を、ちょっと目を離した隙に、盗まれてしまった。3箱の内、一番上の箱だけ盗んでいくというよくわからない盗難に遭った。

24冊でひとそろいの叢書の、かなり半端な端本になるので、もし、以下の書籍を今後オークションや古書店等で見かけられたら、教えて頂ければ幸いです。
 『海外回帰 中医古籍善本集粹』(中医古籍出版社)の17・20・21・23巻

警察にはすぐに届けた。

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2012-04-14

読もうと思うと、一番読みたい書物が見つからない件

単に家に書物が溢れすぎてるだけではあるんだが。

本当は
 河竹 登志夫『黙阿弥』
を読みたかったんだが、なぜか行方不明。amazonには
 お客様は、2002/3/30にこの商品を注文しました。
と言われちゃうし。読みたくて注文したのに、ずっと行方不明。

仕方がないので、先ほど発掘した
 渡辺保『黙阿弥の明治維新』 (岩波現代文庫)
を読もうっと。

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幸田成友「凡人の半生」(『幸田成友著作集』第七巻所収 中央公論社1971)

幸田露伴の弟、幸田成友(1873〜1954 明治6〜昭和29)が少年〜青年時代を描いた、明治初期〜中期にかけての自伝。生家である幸田家の話から帝国大学卒業までを扱う。
原著は1948年刊の単行本。中央公論社の著作集(七巻+別巻一)の第七巻に入っている。

でもって。
 全八巻で送料込で10000円ポッキリ
という廉さに驚いた。ま〜、今の時代、幸田露伴もあんまり読まれないし、幸田成友に至っては、更に読まれないだろうな。書誌学に興味がある人以外は、幸田成友なんて名前も聞いたことないかも。
バラで買うより、一括で買った方が断然廉かったので、さっさと購入。

幸田成友の筆写本『文館詞林盛事』を今年初め、京大図書館で見たばかり。てか、
 地下書庫に普通に置いてある
のである。もっとも、『文館詞林盛事』の写本は、都立中央図書館本も見ないといかんのですがね。

それはともかく。この
 凡人の半生
は、滅法面白い。少なくとも
 教育史
を噛っている人には必読書でしょう。制度がめまぐるしく変わった、明治初期〜中期にかけての学制の変化と教育内容が当時の小学生〜中学生〜高校生〜大学生の立場できっちり描かれている。そういう意味で
 貴重な証言
だ。

幸田成友は
 東京商科大学教授
だったので、後身である
 一橋大学
には、蔵書の一部から成る特殊文庫
 幸田文庫
がある。
こちらは平成14(2002)年に一橋大学附属図書館で開かれた
 武家社会と江戸・大坂の経済― 幸田成友とその史料 ―
の紹介。

『文館詞林盛事』について言えば、京大に古典研究会の影印本がないっぽいので、ちと困っている。見たいのは附属の
 文館詞林解題(阿部隆一・尾崎康)
なんだけどね。京大の蔵書リストを検索した限りにおいて、阿部隆一には冷たいもんなあ。

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2012-04-13

京大附属図書館のキャラクター「クラちゃんとインちゃん」

ええっと。。。。

この4月から
 京大附属図書館のキャラクター
なるものが登場した。こやつらである。
Kurainn_default
見た感じ
 変な帽子をかぶった三つ目の犬
なのだが、これは
 上の人と下の人に分解する
のである。


附属図書館キャラクター:「クラちゃんとインちゃん」

プロフィール
名前 クラちゃんとインちゃん(2名)
性別 不明(2人とも)
身長 12~13cm程度(2人合わせて) 
趣味 読書(2人とも)
好きな食べ物 総長カレー(2人とも)
その他
京大附属図書館に住み、京大の本を全て読んでいる
普段は附属図書館4階中庭の植え込みに住み、閉館後、誰もいなくなると地下書庫に出かける
2人の出会いは、クラちゃんが多くの知識を求めて京大を訪れ、たまたま立ち寄った学食で食べたカレーに感激していたところ、隣で同じくカレーを食べていたインちゃんと意気投合、共に行動するようになった
手に持っている本は、豆本「KURENAI」。リポジトリの中身がいつでも見られる。

という触れ込み。本を持ってる姿はこれ。
Kurainn_book

で、こっちがクラちゃん。


Kura

クラちゃん
落ち着いていて、思慮深い。ちょっと慌て者のインちゃんをたしなめるお父さん的な役回りになりやすい
クラインの壺(四次元版)をモチーフにしている
浮遊して移動できるが、普段はインちゃんの頭の上に乗っている
自身を浮遊させるとき、真下の物体を浮かせることもできる。カレーも浮かせて、そのまま吸い込むように食べる
食べるだけでなく、下から多くのものを収容できる。現在は、大量の書籍がクラちゃんの中に入っている
暗い場所(夜中の書庫など)では、眼を光らすことで道を照らすことができる

こっちがインちゃん。


Inn
インちゃん
図書館に住む妖精
本を読むのが好き(なんでも読む)
決して犬ではない

犬に似てるけど、犬じゃないらしい。

こやつらの
 キャラクターグッズ(非売品)
なるものも開発された。


グッズ
Goods
図書館のイベント(オリエンテーション、スタンプラリーなど)で配布しています
クリアファイル
マウスパッド
コースター
付箋
ボールペン

う〜ん、図書館のイベントに参加する予定はないけど、真ん中の青いの(インちゃんが泣きべそかいてる図柄)だけちょっと欲しいかも。

上記に出てくる
 総長カレー
はレトルトが通販で買える。
総長カレー
京大生協のカンフォーラでいつでも食べられるけど、昨年の10月には
 総長カレー全種展開
という「夢の企画」があった。
カンフォーラ 総長カレー全種展開・期間限定 10/3(月)~10/31(月)
これまでの経験によると、京大で学会が開かれ、かつ京大生協が仕切る場合は
 総長カレーと「満月」の「阿闍梨餅」・「出町ふたば」の「豆餅」等が出てくる仕様
になっている。

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2012-04-09

国会図書館のデジタル化資料さらに充実 古典籍資料は約2万3000冊追加 官報が創刊号から 英文官報も

国会図書館エライ。
まずはアナウンスから。


国会図書館のデジタル化資料
お知らせ

2012-04-09・古典籍資料(貴重書等)に約2万3千冊を追加しました。うち約1万8千冊はインターネット公開しました。->閲覧
官報に明治16(1883)年7月2日~昭和27(1952)年4月30日分、約2万1千点を追加し、インターネット公開しました。->閲覧
また、これまで国立国会図書館内でのみ公開していた英語版官報約2千点を、インターネット公開しました。->閲覧

古典籍資料は何が増えてるかな? これから宝探し。

紹介記事。Internet Watchより。


国会図書館、官報のデジタル化資料をネット公開、明治16年の創刊号から

 国立国会図書館は9日、法令や国会の議事日程、叙位叙勲などを掲載する国の機関誌「官報」のデジタル化資料をインターネット上に公開した。明治16(1883)年7月2日の創刊号から昭和27(1952)年4月30日までの号外を含む官報を約2万1000点閲覧できる。
 また、すでに国会図書館内限定で公開していた英文官報「OFFICIAL GAZETTE : ENGLISH EDITION」(1946年4月4日から1952年4月28日の期間のみ刊行)を、日本語の官報の公開にあわせてネット上で公開する。
 このほか、約1万8000点の古典籍資料のデジタル化資料をネット上で公開したほか、4月11日からは自然科学分野の雑誌約19万冊のデジタル化資料、4月19日からは戦後期に刊行した社会科学分野などの図書約9万冊のデジタル化資料を館内限定で公開する。
 ネット公開した古典籍資料の中には、フランス人ジャイヨによる世界図を原拠とする平射図法の東西両半球図「地球全図」や、源義経の生涯を主題にした軍記「義経記」などが含まれている。
(増田 覚)
2012/4/9 12:28

ということのようですよ。

国会図書館のデジタル化資料は、利用許可もすぐに下りるので、非常に使いやすい。
まあ、
 一括ダウンロードできないのが難点
ではあるのだが。

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2012-04-02

お茶の水女子大学E-bookサービス 学内出版物をいきなりリポジトリで提供 書冊体が必要なら有償でオンデマンド出版

学内に
 出版社がない大学
の悩みの一つは
 学内の研究成果を公刊する際、どうしたらいいか
ということだ。これまでは、外部に委託するか、
 学内公刊物の形で無償配付
するか、だった。

無償配付の場合は
 刷り部数の問題
が出てくる。基本的に
 非営利出版で初版のみ
だから、どんなに貴重な内容を含む書籍であっても、再版がない。学内公刊物の形だと、多くてもせいぜい500部くらいだろう。その内の2/3くらいは国内外の大学や研究所・図書館等の公的機関に送付するので、あっという間に書冊体はなくなる。

最近は
 学内公刊物はリポジトリへ
という流れができつつあって、各大学や各研究機関では、サーバを立てて、公刊物をPDFで公開することが多くなっている。ただ、普通は
 書冊体が出て、しばらく時間を置いてからリポジトリで公開
だ。

今回、お茶の水大学が始めた
 お茶の水女子大学E-bookサービス
は、
 最初からリポジトリでPDFとして配付、希望者にはオン・デマンド出版による簡易製本版を「特定非営利活動法人お茶の水学術事業会」が有償で販売
する形だ。

じゃ、オンデマンド出版だといくらになるのか。


書 名:近世日本の儒教思想―山崎闇斎学派を中心として
著者名:高島元洋編著、大久保紀子、長野美香著
ISBN:978-4-904793-00-8
発行:2012.03
※2分冊、セットでの販売です
価格(ハードカバー): 21,000円
  (ソフトカバー): 20,600円
書 名:古今和歌六帖全注釈 第一帖
著者名:古今和歌六帖輪読会(代表:平野由紀子) 著
ISBN:978-4-904793-03-9
発行:2012.03
価格(ハードカバー): 10000円
  (ソフトカバー): 9800円

だって。これが高いか安いかは、
 PDFを落として考える
ってことね。ちなみに、どちらもダウンロードしたのだけど
 『近世日本の儒教思想―山崎闇斎学派を中心として』は1000頁越え
 『古今和歌六帖全注釈 第一帖』は400頁越え
である。上製本で21000円や10000円というのは、オンデマンドというところからいくと
 手間賃込み
だから、こんなものなのかな???
 
で、
 学術書の相場
からいくと、
 『近世日本の儒教思想―山崎闇斎学派を中心として』は外部の出版社からならまず出ない
  (1000頁超えなので、出版社が嫌がる)出るとしてたぶん2分冊で45000円前後
 『古今和歌六帖全注釈 第一帖』も外部の出版社からならまず出ない
  (シリーズもので、各巻の頁数が多いから、長いつきあいになるうえに、利益が見込めない)
 出るとして、たぶん1冊18000円前後
かな。

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2012-03-24

藤實久美子『江戸の武家名鑑 武鑑と出版競争』歴史文化ライブラリー257 吉川弘文館 2008 1700円

江戸時代の武鑑といえば、民間の出版ながら、幕府や諸大名・幕臣の動向を知るためには欠かせない史料である。その武鑑をひたすら研究されている藤實久美子氏の武鑑案内というのか、武鑑を巡る出版動向に焦点を当てたのが本書だ。
内容は、深井雅海・藤實久美子『江戸幕府役職武鑑編年集成』(全36卷)に付された解題・解説を更にまとめた、という印象。読みやすさはどちらが上かというと、本書よりは『江戸幕府役職武鑑編年集成』の方が勝る。『江戸幕府役職武鑑編年集成』は共著なので、そのせいかな?
本書の文体は、文体を云云する類ではなく
 百科事典の解説文体
なので、あっという間に読める。ただ
 武鑑って何?
という疑問に端から端まで答えてくれているか、というとやや疑問が残る。藤實氏があまりにも武鑑にのめり込んでいるので、初学者への親切さを欠いているというところがあるのかも。もっと、一般的な平易な解説部分があった方がいい。

『江戸幕府役職武鑑編年集成』の解題・解説部分だけ、出版してもらえないものかなあ。

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