2016-10-17

咳やくしゃみから容易に感染し、稀な合併症だが、下肢の麻痺との関係が疑われている「エンテロウイルスD68型」 現在ワクチンも抗ウイルス療法もなし

10/14付のイギリスの大衆紙 Daily Mail
 「ポリオに似たウイルス」に感染した2歳児が自分の足で歩けなくなる
という記事が載っていた。


British children are at risk from an outbreak of a killer polio-type virus that can leave its victims paralysed

・Enterovirus D68 can be spread easily through coughs and sneezes(エンテロウイルスD68型は、咳や鼻水を介して容易に拡散する。)
・Previously rare bug is on the rise but has no anti-viral cure or vaccine(以前は珍しい微生物だったが、最近流行し始めており、抗ウイルス療法もワクチンも存在しない。)
・It's linked to cases of very young children being left unable to walk(エンテロウイルスD68型は、極小さい子ども達が歩けなくなってしまう症例と関係している。)
・Paralysis can strike and leaves the worst affected fighting to breathe(麻痺が襲うと、最悪の場合には、呼吸困難が遺ることがある。)
By VICTORIA ALLEN, SCIENCE CORRESPONDENT FOR THE DAILY MAIL
PUBLISHED: 22:54 GMT, 14 October 2016 | UPDATED: 08:35 GMT, 15 October 2016

Daily Mail
 ゴシップ満載のタブロイド紙
ではあるのだが、
 子どもの病気や事故、犯罪の犠牲となった子ども
に対しては、同情を寄せて、多く取り扱う傾向がある。

この2歳の坊やが歩けなくなっている原因を作ったと疑われている
 エンテロウイルスD68型
だが、日本ではまだあまり広く知られたウイルスではないだろう。特徴は、上記記事のリーダーにあるように
 子どもが感染すると、喘息や呼吸困難を引き起こすことがある
上に、ごく稀な合併症ではあるのだが、
 最近では、弛緩性麻痺(筋肉が力を失うタイプの麻痺)との関係が疑われている
点だ。
これまで感染例が少なかった関係で、現在のところ、「エンテロウイルスD68型」には抗ウイルス療法もワクチンもない。

国立感染症研究所のサイトより。


エンテロウイルスD68(EV-D68)感染症とは
(2015年10月22日掲載)  EV-D68エンテロウイルス属のウイルスの一つである。エンテロウイルス属には、ポリオウイルスや、無菌性髄膜炎の原因となるエコーウイルス手足口病の原因となりうるエンテロウイルス(EV)71型などが含まれる。エンテロウイルス属はさらに分子系統解析によりEnterovirus A~JおよびRhinovirus A〜C (species)に分類され、EV-D68はEnterovirus Dに属する。またEV-D68のウイルス学的性状はエンテロウイルス属に属し、かぜの原因ウイルスとして知られるライノウイルス(Rhinovirus A〜C)に類似している。EV-D68に感染し発症した場合、発熱や鼻汁、咳といった軽度なものから喘息様発作、呼吸困難等の重度の症状を伴う肺炎を含む様々な呼吸器疾患を呈する。なお、弛緩性麻痺を発症した患者の上気道からEV-D68が検出された事例が欧米や日本などから報告されており、弛緩性麻痺患者の一部におけるEV-D68感染との関連が疑われている。 (国立感染症研究所 感染症疫学センター)

昨年も、
 さいたま市と青森県で、下肢の麻痺を伴う感染例
が報告されている。

さいたま市の症例。(IASR Vol. 36 p. 226-227: 2015年11月号)


エンテロウイルスD68型が検出された、急性弛緩性脊髄炎を含む8症例―さいたま市
エンテロウイルスD68型(EV-D68)は、2014年秋に米国で呼吸器疾患1,153例(2014年8月中旬~2015年1月15日)のアウトブレイクへの関与で注目されているウイルスである1)。米国では同時期に急性弛緩性脊髄炎が120例(2014年8月~2015年7月)と多発し、その一部の呼吸器検体からEV-D68が検出され、関連が疑われている2)。2014年秋は欧州でも呼吸器検体からEV-D68を検出した急性弛緩性脊髄炎3例が報告された3)。
日本では2010年に山形で発症した1例(咽頭ぬぐい液検体)4)、2013年に広島で発症した1例(気管内吸引液検体)5)、EV-D68を検出した急性弛緩性脊髄炎の報告があった。急性弛緩性脊髄炎頻度の少ない合併症だが、発症すると麻痺が残存する。(略)
症例1:11か月男児。急性弛緩性脊髄炎で入院
不活化ポリオワクチン1期3回目まで接種済みで、独歩を獲得していた。
9月6日から発熱(39.1℃)、7日からポリオ様の右弛緩性麻痺が出現して同日紹介受診し、原因検索のため入院した。9月9日~10日にかけて左下肢も弛緩性麻痺が進行して対麻痺となった。中枢神経症状・膀胱直腸障害はなかった。(略)9月10日で麻痺の進行が止まったが、改善は緩徐だった。退院時には左下肢の筋力が回復傾向だが、右は完全麻痺が残った。入院時の咽頭ぬぐい液からEV-D68を検出したが、髄液・便からは検出しなかった。随伴症状は下痢(最大1日9回の水様便)のみ。気道症状は皆無。(以下略)

参考文献
1. Enterovirus D68, CDC:
http://www.cdc.gov/non-polio-enterovirus/about/EV-D68.html(参照2015-10-7)
2. Summary of Findings: Investigation of Acute Flaccid Myelitis in U.S. Children, 2014-15 , CDC: http://www.cdc.gov/ncird/investigation/viral/2014-15/investigation.html(参照2015-10-7)
3. Poelman R, et al., European surveillance for enterovirus D68 during the emerging North-American outbreak in 2014, J Clin Virol 71: 1-9, 2015
4. 菊池貴洋ら,エンテロウイルス68感染および末梢神経障害を合併した横断性脊髄炎の1男児例,脳と発達 43:S298,2011
5. 米倉圭二ら,エンテロウイルスD68型が検出された急性呼吸不全と急性弛緩性麻痺を来した1例,日本小児科学会雑誌 119:1380-1385,2015

さいたま市民医療センター小児科
 豊福悦史 益田大幸 谷口留美 小島あきら 越野由紀 野田あんず
 古谷憲孝 西本 創 高見澤 勝


退院時には、左足の麻痺は改善しつつあったが、右足の麻痺が残っている。ポリオワクチンは接種済みで、ポリオによる麻痺でないことは間違いないだろう。

青森県の症例。 (IASR Vol. 37 p. 12-13: 2016年1月号)


エンテロウイルスD68型が検出された麻痺症状を呈する小児症例を含む2症例―青森県
(略)
症例1:10歳7か月齢の男児、Guillain-Barré 症候群疑いで入院
2015年9月3日から咳嗽が出現し、4日から咳嗽・喘鳴・発熱(38.2℃)があり、かかりつけ医を受診した。6日左膝の違和感・腰部痛が出現し、7日にかかりつけ医を再受診し、プロカテロール吸入にて帰宅した。8日から左下肢の痺れ、脱力が出現し、かかりつけ医を再々受診後、紹介された病院を受診し、Guillain-Barré症候群疑いのため入院となった。Hopkins症候群疑い・髄膜炎疑いで10日に髄液・血清、13日に咽頭ぬぐい液・直腸ぬぐい液を採取し、当センターに検査依頼があった。それら検体について、エンテロウイルスとライノウイルスに共通する5’ NCRからVP4/2領域を増幅するプライマーセット(OL68-1、EVP2、EVP4)により遺伝子を増幅し、増幅産物のDNAダイレクトシークエンス法、BLASTによる相同性検索を行った。その結果、咽頭ぬぐい液からEV-D68が検出・同定された。髄液、血清、直腸ぬぐい液はいずれも陰性であった。また、エンテロウイルスのVP1領域を増幅するCODEHOP PCR法6)による遺伝子増幅を行ったが、咽頭ぬぐい液、髄液、血清、直腸ぬぐい液はいずれも陰性であった。4種類の臨床検体について、培養細胞(RD-A、HEp-2、Vero)を用いたウイルス分離を実施したが、いずれも陰性であった。(略)
今回、我々が示した症例1については気管支喘息の既往があり、弛緩性麻痺症状を示した症例であった。日本ではEV-D68の流行像については多くの点が不明であるが、全国から報告されていることや米国国内の流行状況をみると、今後の動向には注意が必要である。
参考文献
6. 国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル 無菌性髄膜炎

青森県環境保健センター 筒井理華 武差愛美 坂 恭平  
八戸市立市民病院 藤田真司 鈴木 豊  
国立感染症研究所ウイルス第二部 吉田 弘

青森県の場合は、10歳男児、小学5年生である。風邪だと思っていたら、急に足の具合がおかしくなり、とうとう左足が麻痺してしまったというのは、ご家族にも、患者さんであるこの男の子にも大きなショックだったろう。身体のリハビリと同時に心のリハビリも必要なケースだ。

エンテロウイルスD68型の流行は、これからも続くと思われる。昨年報告されたような、大変気の毒な症例がこれからも出てくるだろう。
まだ、わたしたちには、このウイルスを防ぐワクチンも、やっつける術もない。咳やくしゃみで容易に感染するこのウイルスを防ぐことは出来ず、もし、不幸にして、感染した結果、麻痺が起こってしまっても
 治してあげられない
のである。

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2016-09-23

赤ちゃんと妊婦を守れ 空気感染(飛沫核感染)等で感染する麻疹(はしか)に治療法はない(その15)奈良県でも麻疹の集団感染か 9/2に奈良ロイヤルホテルの会合に出席した3人が感染 県外から麻疹感染者が同席 関空の集団感染とは異なったウイルス型@9/22

9/21、奈良県は
 麻疹の集団感染
を発表した。
NHKより。


会合出席の3人 はしか発症
今月2日、奈良市内のホテルを利用した男女3人が、相次いで、はしかを発症したことがわかりました。
3人以外に、はしかのような症状などは今のところ無いということですが、県は、同じ日にこのホテルを利用した人たちに対し、念のため、注意を呼びかけています。
奈良県などによりますと、はしかと診断されたのは、▼桜井市に住む40代の男性と▼大和高田市の30代の男性、▼それに奈良市の30代の女性の3人です。
3人は、今月11日から18日にかけて、相次いで発熱や発疹などの症状を訴え、医療機関での検査の結果、はしかであることが確認されました。
3人はいずれも、今月2日、奈良市にある「奈良ロイヤルホテル」で開かれた会合に出席していて、奈良県などが調べたところ、この会合の県外からの出席者の中に、はしかに感染していた人がいたことが確認されたということです。
県は、この県外からの出席者から、はしかの感染が広がったと見ています。
県によりますと、今のところ、このほかに、はしかのような症状を訴える人などはいないということですが、念のため、今月2日にこのホテルを利用し、発熱などの症状が現れた場合は、保健所か医療機関に電話で相談するよう、注意を呼びかけています。
はしかは、関西空港で集団感染が起き、問題となっていますが、今回の奈良県でのはしかとは、ウイルスの遺伝子の型が異なるため、県は、別の感染ルートによるはしかの可能性が高いとしています。
09月22日 00時41分

今回は
 9/2に奈良ロイヤルホテルで開かれた会合
に出席した
 県外の麻疹患者から3人に感染
というわけで、感染経路がわかりやすい。また
 関空の集団感染とはウイルスの遺伝子型が異なる
のも分かっており、県の見立通り
 別ルートでの感染
だろう。
奈良県の発表。


平成28年9月21日発表 報道資料(PDF)

麻しん(はしか)の注意喚起〜麻しん患者の発生について〜

報道資料 発表年月日平成28年9月21日
奈良県担当部署名 奈良県医療政策部保健予防諜感染症係
(略)
奈良市担当部署名 奈良市保健所保健予防課感染症係
(略)

麻しん(はしか)の注意喚起~麻しん患者の発生について~
奈良県内で、複数の麻しん(はしか)患者の発生がありましたので、今後の感染拡大を防止し、注意喚起のため報道発表します。
報道に際しては、患者のプライバシー保護及び施設の風評被害にならないよう、十分配慮していただきますようお願いします。

1 発症者
・発症者数(9月21日 15時現在) 3名
・発症者内訳
患者/年代/性別/居住地/発症日/症状/PCR検査陽性判明日/予防接種歴/備考
① 40歳代/男/桜井市/9/11/発熱・発疹・咳/9/16/なし
② 30歳代男/大和高田市/9/15/発熱・発疹・咳/9/16/あり/県外で発症し現在も県外滞在中
③ 30歳代女/奈良市/9/18/発疹・鼻汁/9/20/あり

2 経過
9月16目(金)
・県外の麻しん患者の接触者(健康観察則について発生、届を医療機関から保健所が受理(患者①及び②)
・保健所が、疫学調査及び検査実施
9月18日(日)
・奈良市保健所が、同県外患者の接触者(健康観察中)について医療機関から発生届を受理(患者③)
・保健所が、疫学調査及び検査実施
3 現在の状況
全員自宅療養中であり、入院者はいない。
4 注意喚起の内容
① 麻しん患者と接触した場合は、潜伏期間を考慮し、接触後21日間の健康観察が必要です。
② 上記発症者は、いずれも9月2日に奈良ロイヤルホテルを利用していることから、同日に同ホテルを利用した方で9月23日(金)までに発熱・風邪症状・発疹の症状が出現した場合は、医療機関の受診が必要です。受診する前に最寄りの保健所に連絡するか、必ず事前に医療機関に連絡し、「麻しんかもしれない」ことを伝えたうえで指示に従ってください。連絡なく医療機関を受診することは絶対にやめてください。
③なお、麻しん患者がホテルを利用した9月2日から3週間が経過する9月23日までホテル従業員の健康観察を実施しており、現時点での発病者はいません。
④麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる病気で、典型的な症状としては、感染の約10日後に発熱や風邪症状が始まり、2~3日発熱が続いた後、39℃以上の高熱とともに発疹が出現します。全身の免疫力が低下するため、肺炎・111耳炎・脳炎などを合併することもあります。予防接種を1回も受けていない乳児や妊婦が発症すると重症化や流産する危険もあります。定期の予防接種は、1歳児と就学前の幼児(年長児)です。対象者はできるだけ早めに受けるようにしましよう。

今年は、このような
 散発的な麻疹の感染例
が、いくつか報告されることになるだろう。問題は
 10月の次の出荷まで、麻疹ワクチンが「足りてない」状況
である点だ。

海外から、あるいは海外へ、人の出入りが盛んになれば
 日本国内には土着の病原体がなくても、海外では流行を続けている感染症
は、いくらでも入ってくる。ともかくも
 ワクチン供給が安定した時点
で、抗体がない、あるいは不十分な人には
 重要な感染症(命に関わる、あるいは後遺症がその後の人生を大きく変える恐れのある感染症)の予防接種
を勧めたい。また
 麻疹に関しては、国内での発生が激減して、麻疹ウイルスに曝露する機会がほぼなくなっている
ことから
 ブースター効果も望めない
状況だ。今回の奈良県の例でも
 感染者の内、2人はこれまでに予防接種を受けている
わけで、
 20歳で麻疹ワクチンの追加接種
を行って、抗体価を上げるようにする方が、
 成人麻疹を今後抑制できる
のではないか。

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2016-09-19

赤ちゃんと妊婦を守れ 空気感染(飛沫核感染)等で感染する麻疹(はしか)に治療法はない(その14)すべての教職員に麻疹・風疹等の抗体を 横浜国立大学 教員1名が麻疹に感染と発表@9/18

首都圏の大学生の間で
 麻疹が流行
したのは、
 2007年
のことだった。その時の話は以下に。
2007-05-12 大人の麻疹で創価・上智が大学休講 明星大でも4人感染で75人出席停止
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/05/475_e272.html
ほぼ同時に大阪でも、専門学校で
 麻疹の集団発生
が確認された。
2007-05-13 成人の麻疹、大阪でも30人の集団発生 大阪狭山市の専門学校休校
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/05/30_0eed.html
この年の麻疹流行の概報、麻疹 2006~2007年(IASR Vol.28 p 239-240:2007年9月号)では、
平成19年7月27日 厚生労働省健康局結核感染症課 麻しん及び成人麻しん施設別発生状況(最終報 全施設合計)に基づいて


2007年には全国各地の学校で、麻疹による休校、学年閉鎖、学級閉鎖が相次いだ。2007年4月1日~7月21日までに厚生労働省に報告された麻疹による休校数は全国で263あり、特に、高校、大学がそれぞれ73、83と多かった。

と述べている。この他に、
 短大8、高等専門学校4
が、麻疹による休校に追い込まれた。この流行の中心となったのは、2006年度麻疹血清疫学調査ならびにワクチン接種率調査-2006年度感染症流行予測調査より(IASR Vol.28 p 241-244:2007年9月号)によれば、

2006年度調査結果の特徴は、2001年の全国流行以降実施された「麻疹ワクチンを1歳のお誕生日プレゼントにしましょう」キャンペーンにより、1歳以上就学前世代の麻疹を含むワクチンの接種率が上昇し、この世代の抗体保有率が2001年度と比較して飛躍的に上昇したことである。
しかし、既に定期予防接種対象年齢を過ぎていた世代では、約10%のワクチン未接種者が存在するとともに、ワクチン1回接種後のprimary vaccine failureが2.3%存在し、ワクチン1回接種者の9.2%は発症予防に十分な抗体を保有していなかったと考えられる。特に、1歳児と10~19歳群ではその割合が高かった。2006年春の茨城県南部、千葉県での地域流行、2007年の全国流行では、これらの世代が流行の中心になったと考えられた。

とある、2007年当時の
 10〜19歳群
である。現在は、
 19〜28歳
になっている世代だ。上記論文では

今回の流行の中心であった2008年度小学校3年生から高校3年生の世代への2回目のワクチン接種の実施

とあるのだが、相変わらず
 2回接種から漏れている年代から、感染者が出る状況
に変わりはない。この年代は
 免疫が不十分
であるため、
 もう1回麻疹(風疹の抗体がなければ、麻疹・風疹混合のMRワクチン)の予防接種が必要
である。

さて、2007年の成人麻疹大流行から9年を経ているところへ
 今回の成人麻疹の流行
である。9/15には
 横浜国立大学で教員の感染が確認
された。幸い、夏休み中なので、学内で感染を広げる事態に至っていない。横浜国立大学の9/18付発表より。


麻しん(はしか)感染者の発生について(PDF)
平成28年9月18日 横浜国立大学

国内で麻しん(はしか)の患者や集団感染が発生し、感染の拡大が危惧されています。
本学においても、今月15日になって教員1名が麻しん(はしか)を発症したことが わかりました。すでに当該教員と接触した可能性のある教職員に連絡を取り、健康状態 などを確認しましたが、これまでのところ感染は確認されておりません。なお、学生は 夏期休業中のため当該教員とは接触しておりません。
本学としては、今月16日付けで保健管理センター所長より教職員及び学生に対して、 麻しん(はしか)の病態、初発症状の対応、予防接種について周知し、麻しん(はしか) 対策を図っております。

感染した教員の年齢と感染経路が不明だが、
 抗体価が低かった
のは間違いない。

2007年の成人麻疹大流行時には
 60歳男性の「麻疹再罹患」とみられる症例
が報告されている。


麻疹の再罹患と考えられた1例(IASR Vol.28 p 258-258:2007年9月号)
麻疹ワクチン接種後の麻疹の罹患は修飾麻疹として知られているが、一般に、麻疹に罹患した後の再罹患はないと考えられている。しかし、麻疹の罹患後にも麻疹ウイルスの感染が起こり、発症しなくても抗体価の上昇を来すことは知られている。今回、我々は麻疹の再罹患と考えられる1例を経験したので報告する。
症例は60歳男性で職業は医師、母親の弁では3カ月の時に麻疹に罹患している。麻疹ワクチンの接種歴はなし。(略)
本症例では典型的な麻疹と異なり、発熱、発疹が軽度であったが、IgM抗体価およびその変動からみて麻疹と考えられた。生後3カ月における麻疹の既往歴は間違いである可能性もあるが、本症例では既に発病6日後のIgG抗体価が高値であり、発病前に麻疹に対する不十分な抗体を有していて再罹患した可能性が高い。(略)
麻疹に自然罹患することで生ずる免疫は強固なものであり、一生涯続くと考えられている。しかし、罹患後に麻疹ウイルスに曝露されないと、防御免疫は消退していくことも考えられる。また、本症例のように生後間もなく麻疹に罹患した場合には、母親からの移行抗体の影響で不完全な感染となり、通常のように強固な免疫を生じない可能性がある。本症例では臨床像が非典型的であり、通常では麻疹の診断がなされなかった可能性があるが、このように非流行期でも麻疹と認識されずに、麻疹ウイルスが人から人へと感染循環していることも考えられる。今後、今回のような症例を集積・解析することで、麻疹ウイルスの伝播様式の詳細が解明されることが期待される。

(財)結核予防会新山手病院内科 木村幹男
    同 麻酔科/東洋医学科 千坂正毅

こうした症例をも鑑みると、やはり
 20歳で麻疹ワクチンの追加接種
は、成人麻疹の流行を防ぐ上でも有効ではないだろうか。
また、
 2回接種から漏れている世代がすでに教員になっている
わけだが、
 1人でも感染者がいれば、感染が拡大する麻疹の特性
を考えると、
 高等教育機関を含むすべての教職員
では
 麻疹・風疹等重要な感染症に対し十分な抗体価がある
ことを
 就職・転職時の条件
にする必要があるだろう。抗体価が低ければ
 追加接種
を行う。

「麻疹排除」の状況では
 自然に麻疹に曝露する
ことはほとんどなくなる。すると、当然ながら
 麻疹に曝露することで得られていた、ブースター(追加免疫)効果
は望めなくなる。

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2016-09-15

赤ちゃんと妊婦を守れ 空気感染(飛沫核感染)等で感染する麻疹(はしか)に治療法はない(その13)関空の麻疹感染者を診察した大阪市立大学医学部附属病院で院内感染 医師・事務職員3名が感染 看護師1名も感染疑い→いずれも20代女性 医師は麻疹患者を診察した部屋の隣で診察していて感染

集団感染が発生した関空の麻疹患者を診察した大阪市立大学医学部附属病院で
 院内感染が発生
した。
大阪市立大学医学部附属病院のサイトより。


大阪市立大学医学部附属病院における麻しん(はしか)の院内感染について
平成28年9月14日 公立大学法人大阪市立大学 医学部・附属病院運営本部庶務課
 大阪市立大学医学部附属病院において、平成 28 年 8 月下旬に関西国際空港で集団感染した患者さまが受診され、その後 9 月 9 日(金)から当院の医師 1 名が麻しん(はしか)を発症していたことが検査の結果、9 月 12 日(月)に判明いたしました。この発症の判明を受けて、ただち に当院内での調査を実施したところ、9 月 13 日(火)時点で、診療に従事していた医師 1 名(9 月 9 日(金)発症者)9 月 12 日(月)に発症した事務職員 1 名計 2 名の感染看護師 1 名 の感染疑いを確認しました。感染者(疑いを含む)はただちに勤務を自粛し、自宅待機をしてお り、いずれも経過良好で重大な健康被害は生じておりません。なお、8 月下旬に来院された患者さまは受診後すぐに当院へ入院され、軽快退院されております。
発症が判明した医師と接触をした可能性がある患者さまについては個別に連絡をさせていた だいており、9 月 14 日(水)15 時現在、患者さまへの感染はございません
また、発症が判明した事務職員と 9 月 12 日(月)に接触をした可能性がある患者さまについても個別に連絡を続けておりますが、以下に該当する患者さまは感染拡大防止のためにお電話にてご相談いただきますようお願い致します。

【対象者】 平成28年9月12日(月)午前8時30分から午前11時30分の時間内に 当院 3 階の中央臨床検査部で採血検査を受けられた方で、
9 月 17 日(土)から 10 月 2 日(日)(麻しんの潜伏期間を考慮)までに、 37.5 度以上の発熱があり、麻しん(はしか)にかかったことがない方
(以下略)

あらららら。
 医療従事者が麻疹に感染、もしくは感染疑い
ということなんだが、
 今回の院内感染者の麻疹の抗体価はどうなっていたのだろう
という点が謎。普通は、年度初め等に抗体価を見て、
 低ければ追加接種
だと思っていたのだが。途中入職等で、把握できてなかった?

続き。時事より。


市大病院ではしか院内感染=医師と事務員―大阪
時事通信 9月15日(木)0時38分配信

 大阪市立大学付属病院は14日、医師と病院事務員の2人がはしかを発症する院内感染があったと発表した。
 同病院は医師らと接触した患者と連絡を取っているが、同日時点で他に感染者は確認されていないという。
 同病院によると、関西空港(大阪府)ではしかに感染したとみられる患者が8月26日に診察を受けた際、隣の部屋で診察に当たっていた20代の女性医師が、今月9日に発熱。検査の結果、はしかへの感染が確認された。さらに、女性医師が診察した患者や病院関係者らの調査で、20代の女性事務員の感染が確認され、20代の女性看護師も感染の疑いがあることがわかった。全員症状は軽く、回復に向かっているという。
 国立感染症研究所によると、1月から9月4日までのはしかの報告数は全国で82人で、前週までの41人から倍増している。関西空港で職員の集団感染が発生しており、感染拡大の恐れがあるとして、厚生労働省の専門家会議がワクチンの接種や早期の医療機関の受診を呼び掛けている。 

う〜ん
 感染したのは全員20代の女性
ということなのだが、
 医療従事者
だから
 普通に考えて、2回の麻疹ワクチン接種は済んでいるはず
だ。やはり、抗体価の問題だろうか。
それにしても
 隣の部屋で診察
していても、
 麻疹に感染する
わけなので、
 いかに麻疹の感染力が強いか
ってことだな。

まかり間違って
 同じ待合室に、麻疹患者と未罹患者が混在
したら、
 ほぼアウト
というのは、今回の感染の事実を以て、頷けることだと思う。

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2016-09-14

赤ちゃんと妊婦を守れ 空気感染(飛沫核感染)等で感染する麻疹(はしか)に治療法はない(その12)2回目の麻疹ワクチン接種の時期はいつが適当か@twitter

関空の
 麻疹集団感染
だが、今回感染した中に
 2回の麻疹の予防接種を終えている人達
が含まれている。
9/11に大阪府が発表した
麻しん(はしか)の発生についてより。
麻疹に直撃されたのは
 2回接種ではなかった世代が中心
20160914_174639_2
だが、
 感染した33人の内、12人は2回接種を済ませていた
20160914_174652
という事実がある。これは
 2回目接種で、獲得したはずの「麻疹に罹らないだけ高い筈の抗体価」が、感染するレベルにまで下がっていた
ことを意味する。

このことについて、io302先生のtweetより。



やはりio302先生の仰るように、
 抗体価が下がっていると考えられる20歳前後でもう一度追加接種
というのが、妥当ではないだろうか。

成人の麻疹は
 重くなりがちである
 妊婦の場合は、流早産を引き起こしやすくなる
 行動範囲が広いので、感染力が最も強く、麻疹と診断される前のカタル期に、他に感染を広げやすい
という問題がある。赤ちゃんや妊婦、免疫の低い人々を守るためにも
 20歳でもう一度追加接種
というのが、現実的な解決策ではないだろうか。

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ワクチンで防げる病気(VPD)が免疫が低下している癌治療中の人などに感染すると

ワクチンで防げる病気を
 VPD(Vaccine Preventable Diseases)
と総称する。日本で接種できるワクチンは、子どもが学齢前に定期接種(無料)できるワクチンとして(生ワクチンは赤、不活化ワクチン・トキソイドは青で)
BCG
麻疹・風疹混合(MR)
麻 疹(はしか)
風 疹
水 痘
百日咳・ジフテリア・破傷風混合(DPT)
ジフテリア・破傷風混合トキソイド(DT)
ポリオ(IPV)
百日咳・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ混合(DPT-IPV)
日本脳炎
インフルエンザ
肺炎球菌(13価結合型)
インフルエンザ菌b型(Hib)
があり、任意接種(有料)では、
ポリオ
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
黄 熱
ロタウイルス:1価,5価
B型肝炎
破傷風トキソイド
A型肝炎
狂犬病
髄膜炎菌:4価
がある。Hibや肺炎球菌は最近定期接種に組み入れられたが、このことで
 赤ちゃんの将来に大きな影を落とす、髄膜炎が減る
ので、それだけでも喜ばしいことだ。
任意接種に
 「冬の下痢」の別称で知られる「お腹にくる風邪」の1つロタのワクチン
が入っているが、
 初回接種は生後14週(生後104日)まで
という縛りがある。母親から受け継いだ免疫がなくなるのが、この時期だからで、
 ほとんど誰でも罹るが、初めて感染した時が最も症状が重くなりがち
という特徴と
 合併症に脳炎・脳症がある
ことを考えると、是非、お勧めしたい。重症の場合は、入院することもある。赤ちゃんのウイルス性胃腸炎の酷さを1度経験したことがあれば、
 このワクチンが、子どもが生まれた時にあったら、どんなに親子共々楽だったことか
と思う、年長の子どもを持つお父さんお母さんは多いだろう。赤ちゃんの嘔吐下痢は本当に辛い。
2回もしくは3回の接種で、総額24000円前後の出費になるのだが
 共働きの場合、親が休んで看病する
ことになるのを考えれば、
 共働きの両親にこそ、必要な出費
だろう。もちろん、共働きでなくても、
 子どもも大人も辛く、看病する大人にも感染するロタが防げる
のであれば、親子どちらにもメリットのある予防接種である。(ロタを貰って、大人が寝込んでしまえば、もっと大変になってしまう。)

ところで
 VPDのワクチンが接種できない人
が存在する。
 癌治療などで免疫が低下していたり、免疫不全の患者さん達
だ。そして、こうした人達がVPDに感染すると、命に関わる。
ばりさんと敬愛する看護師のえぼりさんのtweetより。





ALLとは
 Acute Lymphocytic Leukemia 急性リンパ性白血病
である。
最近は
 VPDに関しては、医療系や教育系の学生が実習に入る前、いくつかの重要な感染症については、免疫がない場合、実習できないし、医療従事者は職場で免疫のチェックを受けて、抗体価が低下していれば、追加接種する
ようになっているので、上記のようなことはなくなっていると思うが、この時は
 医療従事者が、免疫が低下している患者さんにVPDを感染させる
という
 あってはならない事態が起きた
のだった。大人の水痘は重くなるので、えぼりさんの上司の方は、辛い最期を迎えられたのではないかと思うと、胸が痛む。

反ワクチン派の親たちは
 こうした免疫が低下していたり、免疫不全の患者さんの脅威
でもあるのだ。
癌患者の毎日は病との闘いだ。医療費も苦痛もかなりのものだ。そうした人達が
 反ワクチン派の親の子どもからVPDに感染
すること自体、
 患者さん本人にも、家族や知人にも耐えられない
ことではないだろうか。

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ジカ熱はお腹の赤ちゃんを害する性感染症だ(その2)サルの胎児の脳にジカウイルスで病変 霊長類で初めて確認@米→ブラジルでは、人間の胎児の脳だけでなく、目を損なうという研究結果@JAMA

ジカ熱を引き起こすジカウイルス(ZIKV)が、
 妊娠中のサルの胎児の脳の病変を起こした
ことが確認された。9/13付natureasia.comより。


妊娠中の非ヒト霊長類のジカウイルス感染
Nature Medicine
2016年9月13日

Zika virus infection in a pregnant nonhuman primate

Nature Medicine
ジカウイルス(ZIKV)が感染した妊娠中のブタオザル1頭の胎児に、脳の病変が生じているのが見つかった。これは、ZIKVが感染した非ヒト霊長類における胎児の脳損傷の初めての例である。
これまでの研究で、ZIKV感染の非ヒト霊長類モデルはすでに作成されているが、感染した妊娠女性の胎児に見られる小頭症のような脳の異常は、これまでZIKV感染の動物モデルでは報告がなかった
ZIKV感染をより忠実に再現できる動物モデルの開発を目指して、Kristina Adams Waldorf、Michael Gale Jr.、Lakshmi Rajagopalたちは、妊娠第三期にあるブタオザルにZIKVを感染させた。するとこの妊娠ブタオザルには発疹や発熱といった病気の兆候は見られないのに、感染10日後までには、胎児に脳の異常が生じ(対照の胎児には異常は見られなかった)、脳の発達遅延の証拠が認められた。この結果は1頭の動物だけの限定的なものだが、著者たちは、ブタオザルがヒトのZIKV感染経過の研究や、治療法、ワクチン候補の検証に役立つ動物モデルになるかもしれないと述べている。

DOI:10.1038/nm.4193 | 英語の原文

上記記事にあるように
 まだ1例のみ
だが、この例では
 不顕性感染の母親の胎内にいるブタオザルの胎児の脳がジカウイルスで発達異常となり、発達が遅延した
のである。

WHOが
 ジカ熱の流行地域から帰国した男女は、半年間の「性行為要注意期間」を設ける
よう推奨しているのは、
 不顕性感染の多さ
故である。
 自分はジカ熱に罹っていない
と思っていても
 不顕性感染で、体内にウイルスが残っている可能性がある
ためだ。

続き。(16:20)
なお、
 ジカウイルスは、胎児の脳だけでなく、目も損なう
という研究結果が、小頭症患者が多く出たブラジルから6月に出ている。
40人の小頭症患者の目を調べたところ、22人の赤ちゃんの37眼に異常が見られた。内15人は両眼に異常があった。
Risk Factors Associated With the Ophthalmoscopic Findings Identified in Infants With Presumed Zika Virus Congenital Infection
Camila V. Ventura, MD1,2,3; Mauricio Maia, MD, PhD3; Simone B. Travassos, MD1,2; Thayze T. Martins, MD1,2; Felipe Patriota, MD1,2; Marcos Eugênio Nunes, MD1,2; Cristiana Agra, MD2; Virginia L. Torres, MD, PhD1,2; Vanessa van der Linden, MD4; Regina C. Ramos, MD5; Maria Ângela W. Rocha, MD5; Paula S. Silva, MD5; Liana O. Ventura, MD, PhD1,2; Rubens Belfort Jr, MD, PhD3
1Altino Ventura Foundation, Recife, Brazil
2Pernambuco’s Eye Hospital (HOPE), Recife, Brazil
3Department of Ophthalmology and Visual Sciences, Paulista School of Medicine, Federal University of São Paulo and Vision Institute, São Paulo, Brazil
4Barão de Lucena Hospital, Recife, Brazil
5Oswaldo Cruz University Hospital, Recife, Brazil

JAMA Ophthalmol. 2016;134(8):912-918. doi:10.1001/jamaophthalmol.2016.1784.

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2016-09-13

ジカ熱はお腹の赤ちゃんを害する性感染症だ WHO ジカ熱流行地域から帰国した男女の性行為要注意期間を8週間から6ヶ月に延長@9/6

ジカ熱は、まだ分からないことが多い病気だが、
 不顕性感染が多く、自分が感染したことがわからないまま
の状態で、
 感染後、ウイルスが精液や子宮頸管に残り、その後、妊娠した赤ちゃんの神経の発達を疎外する恐れがある病気
である。
 リオ五輪ではジカ熱は発生しなかった
とブラジル当局が早々に発表しているのだが
 不顕性感染の多さ
を考えると、まだ手放しでは喜べない。

ジカ熱の感染は
 蚊による
だけでなく、
 ウイルス保因者とのあらゆる性交渉(オーラル・アナルセックスを含む)で感染
する可能性があることが知られている。ジカ熱が胎児に及ぼす影響の大きさを鑑み、改定された
 WHOの性行為によるジカ熱予防ガイダンス
について、Medical Tribune(要登録)より。


性行為によるジカ感染の予防ガイダンス改訂 症状なくても対策必要な期間を6カ月に延長―WHO
| 2016.09.09 07:20
 世界保健機関(WHO)は9月6日、性行為を介したジカウイルス感染の予防に関する暫定ガイダンスを改訂したと発表した。これまで、症状のない男女に対しては流行地域から帰国後の「安全な性行動(正しいコンドーム使用を含む)を心がけるか、性行為を控えるべき期間」を8週間以上とする推奨が示されていたが、新たなエビデンスを踏まえ同期間が6カ月以上に延長された。

アナルセックスやオーラルセックス介した感染の疑い例も
 同ガイダンスによると、ジカウイルス感染症は主に蚊を介して感染するが、性行為を介した感染例も、従来考えられていた以上に多いことが明らかになりつつある。今年(2016年)8月26日時点で性行為を介したジカウイルス感染に関する報告は17件あり、発症した男性から女性への感染に関するものが7件と最も多いが、男性から男性への感染例や無症候の男性から女性への感染例、女性から男性への感染例についても報告がある。また、精液中にジカウイルスが確認されたとする報告も相次いでいるとしている。
 こうした性行為のほとんどは腟性交だが、今年2月米国でアナルセックスによる感染例が、4月にはオーラルセックスを介した感染が疑われる例が報告されているという。

精液中のウイルス残存、最長の報告は発症後188日
 さらに、2016年だけで精液中にジカウイルスが確認されたとする報告が7件あり、このうち1件ではジカウイルス感染症の診断から14日後の精液中のウイルス量は血液中のウイルス量の10万倍だったとされている。さらに、精液中のウイルスRNA陽性となる期間についても、英国やオランダ、ニュージーランド、フランスなどから検査の結果が報告されているが、最長で発症後188日間、同ウイルスが残存することが分かっているとしている。
 なお、RNA検査によって女性の腟液中にウイルスを確認した例も報告されている他、唾液や尿にもウイルスが最長で発症後91日間残存する可能性が示唆されているという。
 これらを踏まえ、同ガイダンスでは流行地域外の男女に対して以下を推奨している。
流行地域から帰国した男女は、性行為を介した感染を予防するために、6カ月間以上は安全な性行動を心がけるか、性行為を控える
妊娠を計画しているカップルで、流行地域からの帰国者は、感染の可能性を排除するために帰国から6カ月以上たってから妊娠を試みる
パートナーが妊娠中の場合、ジカウイルス流行地域から戻った後は、妊娠期間にわたって安全な性行動を心がけるか、性行為を控える
(以下略)

厚労省によると、9/6現在で、ジカ熱が流行している地域は以下の通り。


ジカウイルス感染症の流行地域※1(2016年9月6日更新)

アフリカ、中央・南アメリカ、アジア太平洋地域で発生があります。特に、近年は中南米等で流行しています。

○中南米・カリブ海地域
アンギラ、アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、アルバ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ボリビア、ボネール、ブラジル、英領バージン諸島、ケイマン諸島、コロンビア、プエルトリコ、コスタリカ、キューバ、キュラソー島、ドミニカ国、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、仏領ギアナ、グレナダ、グアドループ、グアテマラ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、ジャマイカ、マルティニーク、メキシコ、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、 サバ島、サン・バルテルミー島、セントルシア、セント・マーティン島(仏領サン・マルタン及び蘭領シント・マールテン)、セントビンセント及びグレナディーン諸島、シント・ユースタティウス島、 スリナム、トリニダード・トバゴ、タークス・カイコス諸島、米領バージン諸島、ベネズエラ

○オセアニア太平洋諸島
米領サモア、フィジー、ミクロネシア連邦コスラエ州、マーシャル諸島、ニューカレドニア、パプアニューギニア、サモア、トンガ

○アフリカ
カーボベルデ

○アジア地域
インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム

○北米地域
米国フロリダ州の一部(※2)

※1 米国 CDC 報告の発生地域( 2016 年8月31 日現在)及びECDC報告の発生地域の一部
ただし、標高2000m以上の地域はリスクが低いとされています。
※2 米国におけるジカウイルス感染症の発生状況

最新の情報は以下のHPを確認してください。
米国CDC
ECDC

現在、日本人もよく行く東南アジアの
 シンガポールやタイ
では
 ジカ熱が流行
している。
12日付のNHKニュースより。


ジカ熱 バンコクでも27人感染 警戒強化
9月12日 20時17分

東南アジア各地でジカ熱が流行するなか、日本人が多く暮らすタイの首都バンコクでも今月に入って27人の感染が確認され、地元は感染の拡大に警戒を強めています。
タイの首都バンコクの保健当局によりますと、中心部のサトーン地区などで、今月に入って12日までに27人がジカ熱に感染していることが確認されました。
バンコクでジカ熱の感染がこれだけまとまった人数で確認されるのは初めてだということで、シンガポールで感染し、先月下旬に帰国した男性から蚊を媒介して広がったと見られています。
サトーン地区には日本企業も多く入居するオフィス街がありますが、バンコクにある日本大使館によりますと、日本人が感染したという情報はこれまでのところ入っていないということです。
ジカ熱は、大人が感染した場合は比較的症状が軽いとされていますが、妊娠中の女性が感染すると、頭部が先天的に小さい小頭症の赤ちゃんが生まれる可能性が指摘されていて、バンコクの保健当局は住民に対し蚊に刺されないよう注意を呼びかけています。
東南アジアではシンガポールで先月末からの感染者が300人以上に上るなどジカ熱が流行していて、各国が警戒を強めています。

ジカ熱は不顕性感染が多い。
 蚊からだけでなく、性行為でも、ジカウイルスに感染する
ことを、是非知って、これから赤ちゃんを望む人は
 お腹の赤ちゃんを守れるよう
心がけて欲しい。

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2016-09-12

赤ちゃんと妊婦を守れ 空気感染(飛沫核感染)等で感染する麻疹(はしか)に治療法はない(その11)尼崎の麻疹集団感染 更に7人が感染@9/12

尼崎の保育所で始まった
 麻疹の集団感染
だが、市内の感染者は7人増えた。
9/12付神戸新聞より。


はしか新たに7人 尼崎、患者計17人に
 兵庫県の尼崎市保健所は12日、新たに7人がはしかに感染したと発表した。いずれも軽症で快方に向かっている。同市内の感染者は計17人となり、国立感染症研究所感染症疫学センター(東京都)に専門職員の派遣を依頼した。

 集団感染が疑われる保育所で、新たに3歳男児2人と1歳女児の感染が発覚。この保育所での感染は計10人になった。

 このほか、それぞれ別の保育園に通う2歳男児と7カ月の女児幼稚園に通う3歳男児22歳の男子大学生の感染が判明した。男子大学生は8月23、26日関西空港を利用したという。
 いずれも感染の経路は分かっていない。13日に同センターから派遣された職員から指導や助言を受け、対応に役立てるという。(吹田 仲)

新たな感染者7人とも、軽く済みそうで何よりだ。
ただ、この中に
 7ヶ月の女児
がいるのが気がかりだ。
 ゼロ歳児は、定期予防接種の対象年齢未満
のため、1回も予防接種を受けてないだろうからだ。心配のしすぎは良くないが、今後も無事に麻疹をやり過ごして欲しい。

9/12付朝日の記事も合わせて勘案すると、これまでのところ、
市立保育所A 8/22 5歳男児発症→9/2に麻疹と診断
  10人  9/2〜9/4 1,2,3歳の男女児童、30代の母親、30代の女性臨時職員
       9/9 4歳女児(8/23帰国時に関空利用)
       9/12 3歳男児2人 1歳女児

私立保育園B 9/12 2歳男児
   1人

私立保育園C 9/12 7ヶ月女児(定期予防接種の対象年齢未満)
   1人

幼稚園D 9/9 4歳女児
   2人  9/12 3歳男児

個発例 9/8まで 中3女子(14)
      9/9 65歳女性
      9/12 男子大学生(22)(8/23-8/26 関空を利用し海外旅行)
という17人に感染が見られる。記事から分かっているタイムラインは次の通り。
 8/22 市立保育所Aの5歳男児発症
 8/23 市立保育所Aの4歳女児海外から帰国して関空利用
     個発例の22歳男子大学生海外へ出国 関空利用
 8/26 個発例の22歳男子大学生海外から帰国 関空利用
 9/2  市立保育所Aの5歳男児、麻疹と診断
 9/2-4 市立保育所Aの1,2,3歳の男女児童、30代の母親、30代の女性臨時職員、麻疹と診断
〜9/8  個発例の14歳中3女子、麻疹と診断
 9/8  尼崎市、麻疹の集団感染を発表
 9/9 市立保育所Aの4歳女児、幼稚園Dの4歳女児、市内65歳女性、麻疹と診断
 9/12 市立保育所Aの3歳男児2人・1歳女児、私立保育園Bの2歳男児、私立保育園Cの7ヶ月女児、幼稚園Dの3歳男児、男子大学生(22)、麻疹と診断
集団感染が起きた市立保育所Aで最初に麻疹と診断された5歳男児は、同じ保育所の4歳女児が海外からの関空を経由して帰国する1日前に発症しているので、関空での集団感染とは直接関係していない。
市立保育所Aの集団感染は
1. 5歳男児が起因
2. 5歳男児と海外から帰国した4歳女児がそれぞれ起因
という可能性が考えられるだろう。ウイルス型の判定が待たれる。
保育園Aの4歳女児と22歳男子大学生は、関空で感染した可能性もあるが、海外で麻疹に感染したとも考えられる。
それ以外の麻疹患者は、行動範囲のいずれかで感染したのだろうが、特定は難しいと思われる。65歳女性が感染した契機が分かればいいのだが。       

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2016-09-10

赤ちゃんと妊婦を守れ 空気感染(飛沫核感染)等で感染する麻疹(はしか)に治療法はない(その10)関空利用者の麻疹ウイルスは集団発生している従業員のウイルスとは別タイプ

関空の麻疹集団発生で、9/7に大阪府は、
 空港利用者1名の感染
を発表していた。


関西空港内の事業所における麻しん(はしか)の集団感染について(第6報)
提供日 2016年9月7日
提供時間 14時0分
内容
関西空港内にある事業所における勤務者の麻しん(はしか)の集団感染について、 本日の状況をお知らせします。(第6報)

9月7日現在大阪府が把握している関西空港内の事業所における陽性者数(人)
9月6日10時までの累計
9月7日10時までの判明分 合計 回復した方(※)
32 1 33 29
※関西エアポート株式会社9月7日調べ

なお、新たに関西空港利用者1名の陽性者が判明しました。ただし、今回の集団感染との関連は、現在のところ不明です。
(以下略)

この男性の感染者について
 これまで関空の麻疹集団発生で同定されているウイルスとは別な型のウイルスが検出されたという。
大阪府より。


関西空港内の事業所における麻しん(はしか)の集団感染について(第8報)
代表連絡先 健康医療部  保健医療室医療対策課  感染症グループ
ダイヤルイン番号:06-6944-9157
メールアドレス:iryotaisaku-g03@gbox.pref.osaka.lg.jp

提供日 2016年9月9日
提供時間 14時0分
内容
関西空港内にある事業所における勤務者の麻しん(はしか)の集団感染について、 本日の状況をお知らせします。(第8報)

9月9日現在大阪府が把握している関西空港内の事業所における陽性者数(人)
9月8日10時までの累計
9月9日10時までの判明分 合計 うち、回復した方(※)
33 0 33 32
※関西エアポート株式会社9月9日調べ

なお、9月7日(第6報)でお知らせしました関西空港利用者の陽性者1名については、今回の集団感染の陽性者のうち確認できている4名(関西空港事業所の勤務者)のウイルスの遺伝子型(H1)とは異なる遺伝子型(D8)であることが判明しました。

泉佐野保健所では、引き続き患者の発生状況について把握に努めるとともに、関西エアポート株式会社等と協力して、感染拡大防止に向けた取組をしています。

府民のみなさまには、麻しんの疑いがある場合は、早めに医療機関を受診してください。その際には、事前に医療機関に電話し、麻しんの疑いがあることを伝え、指示に従ってください。また、相談は最寄の保健所にご連絡ください。

「麻しんの疑い」があるのは次の場合です。
症状(発熱、せき、鼻水、眼球結膜の充血、発しん等)があり、
 1 麻しん患者と接触していた場合。
 2 麻しん流行国(特にアジアの国々)への最近の渡航歴がある場合。
 3 8月19日以降、関西空港を利用した場合。
 4 8月28日にりんくうプレミアム・アウトレット及び周辺施設を利用した場合。

■関西空港内事業所の勤務者向けの対策について
関西空港事業所の勤務者のうち、麻しん患者との接触を否定できない方には、健康観察を実施するとともに、有症状時の休業や早期の医療機関受診、受診の際の医療機関への事前連絡等の対策を引き続き行っています。また、昨日より、同事業所内の勤務者のうち、ワクチン未接種かつ過去に麻しんにかかったことのない方に対して、ワクチンの接種を開始しました。本日も実施しています。
関連ホームページ
大阪府ホームページ 麻しん(はしか)について
大阪府感染症情報センターホームページ 麻しん情報
厚生労働省ホームページ 麻しん・風しん
資料提供ID 25189

この件については9/9付産経より。


男性利用客は従業員と異なるウイルス型 関空問題で大阪府、関係の有無を調査
 関西国際空港の従業員を中心に、はしか(麻疹)の感染が広がっている問題で、大阪府は9日、関空を利用後にはしかを発症した府内在住の20代の男性について、関空従業員らとは異なるウイルスの遺伝子型だったと発表した。
 府は「集団感染者のすべての遺伝子型を調べ終わっておらず、現時点でまったく無関係とはいえない」としている。男性は8月19日と26日に海外旅行のために関空を利用し、9月6日にはしかと診断された。

日本土着のウイルスが排除されている現状から考えて、
 8/19-26の海外旅行中に麻疹に感染した可能性がある
わけだ。
D8型ウイルスは、日本における麻疹ウイルス流行株の変遷 2009〜2012(IASR Vol. 34 p. 36-37: 2013年2月号)によれば


D8型ウイルスはオーストラリア、タイ、バングラデシュおよびベトナムへの渡航歴を持つ患者から検出されている。

タイプである。これまで検出されていたH1型は、麻疹ウイルス遺伝子型情報(渡航先と年齢について)(IASR Vol. 36 p. 57-58: 2015年4月号)によれば、

国外の感染推定地域は中国10例、ベトナム4例、台湾1例であった。(略)感染推定地域は(略)H1が中国中心

となっており、
 流行地域が異なった2つのタイプの麻疹ウイルスが検出された
ことになる。

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