妊娠7か月(25週)、つわりも落ち着く頃だ。カナダに「安定期」という言い回しがあるかどうかは分からないけど、出産前に
「安定期」だからちょっと旅行に
と、ハワイに出かけたカナダ人の夫婦は、
夫婦二人の楽しい思い出を作ろう
と思っていたに違いない。しかし、現実は甘くなかった。
そもそも
安定期
は
母体と赤ちゃんのつながりが「安定する時期」
であるだけで、
流産や早産の危険が少なくなる時期ではない
のである。
このところ、ハワイやカナダのメディアでは
ミリオンダラーベイビー
の話題で持ちきりだ。何の話かと言えば
これまでに100万ドル近い医療費を使った赤ちゃんとお母さん
のことだ。
mo-hawaii.comの「ハワイ・ニュース」より。
11月20日 ミリオンダラーベイビー 保険適用されず
生後11か月のカナダ人の赤ちゃんは、昨年12月ホノルルにある、カピオラニ・メディカル・センターで誕生しましたが、両親の元には保険が適用されない、約95万ドルの請求が届いているということです。
カナダからマウイ島に旅行に来ていた夫妻は、滞在中に破水し、ホノルルにヘリコプターで運ばれた後、カピオラニ・メディカル・センターで6週間にわたる入院を余儀なくされ、結果、帝王切開にて9週早い出産となりました。
夫妻はブルークロスの旅行保険に加入していたものの、加入前に、膀胱感染症による少量の出血があったことを理由に保険金が支払われないことが判明しました。
これに対し夫妻は、カピオラニ・メディカル・センターのドクターからの説明では、膀胱感染症と破水にはっきりとした関連はないと伝えられたと話していますが、ブルークロスでは、今回の救急医療は加入前の既往症により保険適応外と判断され、また新生児への医療も保険適応外の旨が書かれた書類をカピオラニ・メディカル・センターに提出しているということです。
これに関して、ブルークロス・ブルーシールド系列のハワイの最大手保険会社HMSA、カピオラニ・メディカル・センター共にコメントは控える、と述べるにとどまっています。
提供元:ホノルルスターアドバタイザー
この旅行保険だけれども、
告知義務を果たしてなかったので、母親の方の医療保険は払わず
赤ちゃんについては、そもそも保険がカバーしてない
という立場のようだ。
こちらが、Star Advertiser紙の記事。
Canadian mom hit with $1M bill after Hawaii birth
この95万ドルの内訳は、別記事によると、次の通り。
Baby’s hospital stay(赤ちゃんの入院代): $600,000
Mother’s hospital stay(お母さんの入院代): $161,000
Air ambulance flight(ヘリ搬送代): $44,000
Specialist fee(専門の医療従事者にかかった医療費): $57,000
Radiologist fee(放射線科にかかった医療費): $10,000
しめて:$950,000
95万ドルというと、今日のレートで言うと
113,633,775円(1億1363万3775円)
だ。
誰が払える?
って、請求書が、ドンッとカナダ人夫婦のもとにやって来たわけ。
日本の旅行会社も暢気に
マタ旅のススメ
なんてやってんじゃないよ。
早期破水→切迫早産のため入院→諸条件を勘案して早い時期に帝王切開
って、日本でもある症例だし、日本であれば
手厚い健康保険+税金の補助
が、こうした親子をサポートしてくれるが
無保険の外国人に対してアメリカの医療費請求は容赦ない
からな。
旅行保険は妊娠・出産はカバーしてないのが普通
だ。
31週で帝王切開といえば、普通より2か月早い。早産の赤ちゃんは、まだすべての機能が、満期産児と同じように働くわけじゃないから、身体機能が十分に獲得されるまで入院することになり、割合長期入院になる。しかも、呼吸機能から考えて、最初はNICUから始まるだろうし、アメリカは専門分野の職掌にキビシイので、医師も看護師も特別な訓練を受けている人達が赤ちゃんを担当する。日本だと、早産児の医療費は目に見える形では出にくいけど、この赤ちゃんの場合は
入院代だけで60万ドル
で、今日のレートだと
71,715,900円
だ。
赤ちゃん一人見て貰うのに7000万円余り掛かる
ってことだけど、払える人は極々少数だろう。
マタ旅で人生を棒に振る危険性は、こんな具体的な数字で出てくる。
続き。(12/10 8:20)
惨禍医先生から別ルートでご指摘を頂いたので紹介する。
Baby’s hospital stay(赤ちゃんの入院代): $600,000→妥当(日本だと原資は税金)
Mother’s hospital stay(お母さんの入院代): $161,000→高すぎるのでは?
Air ambulance flight(ヘリ搬送代): $44,000→妥当
Specialist fee(専門の医療従事者にかかった医療費): $57,000→意味不明
Radiologist fee(放射線科にかかった医療費): $10,000→妥当
というわけで、
お母さんの入院代と"Specialist fee"以外は妥当な経費
だとのこと。しめて
$654,000(78,170,331円)
は、少なくとも妥当ということだ。
日本だと
専門医や専門の訓練を受けた医療従事者に診断・治療・ケアを受けた費用を割り増しで別途支払う
なんてことはないからなあ。
お母さんの入院代だけど、ホノルルの場合、三井海上保険のサイトによれば(たぶん、情報が幾分古く、円高のころの水準)
個室 約10万〜16万円/日
準個室(2人部屋かな?)約9万〜15万円/日
なので、1日46万円ほど掛かっている入院費の1/4〜1/3は室料じゃないかな。
カピオラニメディカルセンターは、公立病院なので、まだ室料は安い方だ。
カピオラニメディカルセンターでは、無保険の人には、医療費の減額を行っているけど、たぶん、旅行者は適用外だろう。